五輪塔に込められた5つの意味!伝統的な日本のお墓

五輪塔が並ぶ墓地

五輪塔とは?徹底解説

  • 平安時代に生まれた和型墓石「五輪塔」。
  • 五輪塔は宇宙の五要素を表すパーツで構成。
  • 五輪塔の建立費用は20万~150万円で、文字は宗派により異なる。
  • 五輪塔は故人を極楽へ導くが、宗派によって建てないことも。

日本の伝統的なお墓といえば、縦長の直方体の墓石をイメージする人が多いかもしれません。
しかし、このタイプの墓石が世間に浸透してきたのは江戸時代からといわれています。

それ以前からあるお墓で、五輪塔(ごりんとう)というタイプの墓石はご存じでしょうか?
五輪塔という言葉を聞いてもあまりピンと来ない人も多いかもしれませんね。

今回は、和型墓石の一つである五輪塔の意味や歴史について掘り下げて解説いたします。

お墓の種類の違いがしっかり理解できると、より一層想いを込めてお墓を建てることができるでしょう。
お墓を選ぶ際の参考にしてみてください。

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この記事の目次

  1. 五輪塔とは和型墓石の一つ
  2. 五輪塔の意味や石材パーツを徹底解明
  3. 五輪塔の歴史を知ろう
  4. 宗派ごとの五輪塔に対する考えは異なる
  5. 五輪塔を建てるための基本情報
  6. 五輪塔と一般的な和型墓石の比較
  7. まとめ
  8. 監修者コメント

五輪塔とは和型墓石の一つ

五輪塔は和型墓石のうちの一つです。
和型墓石とは主に私たちがなじみのある「石塔タイプ」や「宝篋印塔(ほうきょういんとう)」、そして「五輪塔」があります。簡単に3つのお墓の特徴について見ていきましょう。

石塔タイプ

石塔タイプとなる墓石は、メインとなる縦長の直方体の石材に「先祖代々之墓」「○○家之墓」などと文字が彫刻されていることが多い傾向です。
日本人にとってなじみがあるもののため、「お墓」をイメージするとこのタイプを思い浮かべる人が多いでしょう。

宝篋印塔(ほうきょういんとう)タイプ

中国の呉越王が仏教の呪文を収めたことが由来といわれている宝篋印塔タイプ。
100年以上前の先祖を供養するためのお墓で、長い歴史があるものです。
縦長の塔のような形で真ん中の部分がくびれた方形になっている形です。

一番上に宝珠を乗せた細長い棒状の「相輪(そうりん)」と、傘のような「隅飾(すみかざり)」、くびれの部分の「塔身(とうしん)」、「基礎」から構成されています。

五輪塔タイプ

五輪塔は、5つの石材パーツから構成されています。
四角形の石材に、ボール、屋根が乗っているような塔形で、日本独自で考えられたというのが特徴のお墓です。

五輪塔の意味や石材パーツを徹底解明

五輪塔には、古くから言い伝えられている意味や各石材のパーツにも一つずつ意味が込められています。
ここでは、五輪塔に込められている意味や、各石材パーツの名称について解説いたします。

五輪塔の石材パーツには5つの形の特徴がある

五輪塔は5つの石材パーツから構成されている和型墓石です。
その石材の形は特徴的ですので、一度覚えておけば墓地に行っても「これが五輪塔だな」と認識することができるでしょう。
墓石の一番上から宝珠形、半月形、三角形、円形、方形という形が特徴です。

押さえよう!五輪塔の5つの名称

五輪塔の5つの石材パーツには、それぞれ名称が付いています。
仏教における自然界の5大要素といわれる「空・風・火・水・土」という意味合いと名称が五輪塔には付けられているのです。

各石材には仏教のサンスクリット語(梵字)が彫刻されているのが特徴といえます。
仏教における読み方は上から「キャ・カ・ラ・ヴァ・ア」です。

空輪とは

五輪塔の一番上にある宝珠形の石材が空輪です。
空は空間を表しており、災難を取り除いて、水を浄めるという意味合いが込められています。

風輪とは

五輪塔の上から2番目にある半月形の石材が風輪です。風は呼吸を表しています。

火輪とは

五輪塔の上から3番目にあるのが三角形の石材である火輪です。
傘のような形が特徴で、火は体温を表しています。

水輪とは

五輪塔の上から4番目にあたるのが円形の水輪です。水は、血液や水など流れるものを表しています。

土輪とは

五輪塔の上から5番目が方形の土輪です。土は、大地を表しています。

五輪塔の石材には、仏教における大切な意味が込められているのですね。
五輪塔には死者を成仏させて、極楽浄土へいざなう役目もあります。

より一層お墓の意味にこだわって建てたい人にとっては、五輪塔を選ぶことによって故人を手厚く供養することができるかもしれません。

五輪塔の歴史を知ろう

五輪塔の歴史の知識を深めることで、一般的なお墓との違いがわかるだけでなく、より一層お墓の意味を深めることができるでしょう。

五輪塔が誕生の経緯

五輪塔の誕生は平安時代後期といわれています。
仏教が日本に伝来されるまでには、中国や朝鮮半島を経由してくるわけですが、その過程で五輪塔タイプのお墓は見つかっていません。
そのため、五輪塔は日本独自に誕生したお墓ではないかといわれているのです。

五輪塔の広まった理由は覚鑁(かくばん)上人

五輪塔を広めたといわれているのは真言宗の中興の祖「覚鑁上人」といわれています。
高野山を拠点として全国活動をした高野聖でしたが、当時は木製で建てた五輪塔が全国普及のきっかけになりました。

「五輪塔を建立し供養を行うと故人が成仏し、往生できる。」という教えを説いたと言われます。
現代のメジャーな和型墓石である石塔タイプが普及する江戸時代まで、身分の上下関係なく建てられたことも特徴です。

宗派ごとの五輪塔に対する考えは異なる

五輪塔は日本において古くから普及しているお墓ですが、仏教の宗派ごとに考え方は若干異なります。
ここでは、代表的な宗派による五輪塔の考え方について解説します。

浄土真宗

浄土真宗では五輪塔は建立しません。
なぜなら、浄土真宗には「追善供養不要」という考えが一般的だからです。

追善供養とは、故人の善い行いを供養することで、善行となり、自分にも善行が帰ってくるという考えになります。
あくまで追善供養不要とは浄土真宗の一般的という話ですので、地域によっては浄土真宗でも五輪塔を建てるというケースもゼロではありません。

浄土宗

浄土宗では、供養のために五輪塔を建てるケースがあります。
その場合は、サンスクリット語を5つの石材パーツへ彫刻せず、「南・無・阿弥・陀・仏」と彫刻するのが一般的です。

真言宗

真言宗では五輪塔を建てることは一般的です。
先述したように五輪塔を広めたといわれているのは真言宗の覚鑁上人(かくばんしょうにん)になります。

そのため、真言宗にとって五輪塔は供養するためのお墓としてはなじみがあるタイプのお墓といえるでしょう。
彫刻される文字はサンスクリット語が一般的です。

曹洞宗

曹洞宗でも五輪塔を建てることがあります。刻む文字は「空・風・火・水・土」というのが一般的です。

日蓮宗

日蓮宗も同様に五輪塔を建てることがありますが、彫刻文字は「妙・法・蓮・華・経」です。

宗派によって五輪塔への考え方はさまざまですね。
この宗派による違いは、江戸時代の檀家制度の影響が強いとされています。

なぜなら、檀家制度により当時は、他宗との横並びを禁止したといわれているからです。
そのため、宗派によって異なる文字を彫刻するようになったといわれています。

五輪塔を建てるための基本情報

五輪塔を建てるためにはさまざまな基本情報を収集しておくことが大切です。
故人が供養され極楽浄土へいざなわれるという、ありがたいお墓ですから、しっかり内容を押さえておきましょう。

ここでは、五輪塔を建てるための費用や文字について解説します。

五輪塔を建てるための費用は20万~150万円

五輪塔を建てるためには20万~150万円の費用がかかります。
かなり金額には幅がありますね。
なぜなら、一般的なお墓と同様、石材の量やお墓の大きさなどによって費用が異なるからです。

もともと五輪塔は身分の上下関係なく建てられたお墓といわれています。
コンパクトなサイズの五輪塔であれば十分リーズナブルな費用で建てることができるでしょう。

五輪塔に彫刻する文字

五輪塔に彫刻する文字は宗派によって異なるのが一般的です。
特に宗派がない人は、基本となるサンスクリット語を彫刻することが多いのではないでしょうか。

ただし、現代では絶対に決まった文字で彫刻しなければならないという縛りは昔に比べると薄まってきているようです。

真言宗

真言宗は、サンスクリット語で上から「空(キャ ख )、風(カ ह)、火(ラर)、水(バ व )、地(ア अ)」を刻むことが一般的です。

天台宗・日蓮宗

天台宗や日蓮宗が刻む文字は、上から「妙・法・蓮・華・経」です。

浄土宗

浄土宗は、上から「南・無・阿弥・陀・仏」です。

臨済宗・曹洞宗

臨済宗や曹洞宗は、「空・風・火・水・土」が一般的となっています。

五輪塔と一般的な和型墓石の比較

五輪塔と一般的な和型墓石を比較することで建てる際の目安となるでしょう。
ここでは、費用や石材の種類、建立期間について解説していきます。

五輪塔と一般的な和型墓石の費用

先述したように五輪塔の費用の目安は約20万~150万円です。
一方、一般的な和型墓石の全国平均相場は約196万円です。
どちらかというと一般的な和型墓石の方が金額としては高くなる感じですね。

使用できる石材の種類は盛りだくさん

五輪塔でも一般的な和型墓石でもさまざまな種類の石材を使用することができます。
石材の色合いや石の目の粗さ、産地など細かくいえば数百種類から選ぶことが可能です。
希少価値が高い石材などは金額が高くなります。

お墓ができるまでの期間は発注から2~3ヶ月

五輪塔、一般的な和型墓石のどちらでも2~3ヶ月程度でお墓が建立できます。
発注されたお墓の多くは中国など人件費の安い海外で加工されることが一般的です。

これは、海外産の石材を選んだから海外で加工というわけではなく、日本国産の石材を選んでも海外で加工することは珍しくありません。

中国の春節時期の発注は時間がかかる可能性がある

納骨式の日取りが決まっているようであれば、逆算して早めの発注を心がけることが賢明です。
なお、加工が中国の場合は1~2月にかけては注意が必要になります。
理由としては、中国のお正月である春節と被ってしまうからです。

日本と異なり、中国の人は数週間から1ヶ月休みを取る人も珍しくありません。
発注したけれど加工する人がいなければ当然完成するまでの期間に響くというわけです。

項目

五輪塔

一般的な和型墓石

費用の目安

20万~150万円

約196万円

石材の種類

どちらも数百種類から選ぶことができる

完成までの期間

どちらも発注から2~3ヶ月程度

まとめ

五輪塔の意味や歴史、費用などについて詳しく解説いたしました。
五輪塔の意味を理解すると、故人のために極楽浄土へいざなえるお墓を建ててあげたいと感じた人も多いのではないでしょうか。

現代は、和型墓石だけでなく洋型墓石やデザイン墓石などさまざまな選択肢があります。
また、費用負担を軽減するためにお墓を建てないという人も増えてきているでしょう。

しかし、単にお墓を建てるだけでなく、日本の伝統的な五輪塔の意味合いを共感できた人は、お墓を建てる際に選択肢としてもっておくとよいかもしれません。
この記事での内容を一緒におさらいしていきましょう。

  • 五輪塔は和型墓石の一つ
  • 五輪塔は平安時代後期に真言宗の覚鑁(かくばん)上人が木製で作ったといわれている
  • 五輪塔は日本オリジナルのお墓といわれている
  • 五輪塔は当時から身分の上下に関係なく建てられた
  • 五輪塔を建てると故人は極楽浄土へいけるといわれている
  • 五輪塔には「空・風・火・水・土」という意味がある
  • 浄土真宗は追善供養という考えがないので基本的に五輪塔を建てない

宗派

彫刻する一般的な文字

真言宗

サンスクリット語で上から「空(キャ ख )、風(カ ह)、火(ラर)、水(バ व )、地(ア अ)」

天台宗・日蓮宗

上から「妙・法・蓮・華・経」

浄土宗

上から「南・無・阿弥・陀・仏」

臨済宗・曹洞宗

上から「空・風・火・水・土」

項目

五輪塔

一般的な和型墓石

費用の目安

20万~150万円

約196万円

石材の種類

どちらも数百種類から選ぶことができる

完成までの期間

どちらも発注から2~3ヶ月程度

どうしてもお墓を建てる際には、全体でかかってくる費用にばかり目が行きがちです。
当然、予算というものは人によって異なりますので費用を考えることは悪いことではありません。

しかし、お墓を建てる本来の意味はなんなのだろう……
ということに着目してみると五輪塔はすばらしいお墓といえるのではないでしょうか。
ぜひ和型墓石を検討している人は、五輪塔も選択肢の一つに入れてみてください。

五輪塔に限らず墓石全般の基礎知識について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

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監修者コメント

監修者
終活・葬送ソーシャルワーカー
吉川美津子

近年建てられるお墓には、洋型が増えていますが、縦長の和型のほか、五輪塔を建てる家もあります(ずいぶんと減ってきました)。
ひとつひとつのパーツの形に決まりはありますが、大きさはさまざまで、例えば一番下の方型をしている「土輪」が縦長に細長くなっているタイプはよく見かけます。

五輪塔の形のもともとの考え方は中国にあったといわれていますが、実際に造られたのは日本がはじめてで、平安時代の後期から死者の供養塔や墓塔、舎利容器(遺骨を入れる場所)として石や金属、泥や水晶などで造られたといわれています。

現在知られている最古の五輪塔は、岩手県平泉の中尊寺釈尊院にある石造五輪塔(1169年)と言われています。
古いものでは、鎌倉時代後期に造られた箱根町にある伝曽我兄弟の塔が有名です。