湯灌って何のこと?だれがやってくれる?湯灌に関するQ&A

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葬儀を行うときに使われる言葉は、葬儀に慣れていない人にとっては聞き覚えのないものが多いのが実情です。
しかし、葬儀を行うときというのは非常に動揺している状態ですし、また葬儀を行うまでに確保できる時間も決して長くはありません。
そのため、事前にしっかりとした知識を身に着けておくことが求められます。

今回はそのような言葉のなかから、「湯灌」を取り上げます。

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この記事の目次

  1. 湯灌とは故人を入浴させ身支度をすること
  2. 湯灌を行う意味や目的
  3. 湯灌と清拭の違い
  4. 湯灌とエンバーミングの違い
  5. 湯灌~納棺までの流れ
  6. 湯灌で使用する逆さ水について
  7. 湯灌はだれがする?親族は参加する?
  8. この記事のまとめ
  9. 監修者コメント

湯灌とは故人を入浴させ身支度をすること

湯灌(ゆかん)とは、亡くなった方をお風呂に入れて身を清める儀式のことをいいます。
彼岸への旅立ちを前にして体を美しくして身支度をさせる、という意味を持っています。

湯灌の原点は、今から1300年ほども前、720年に完成した日本書紀に見られるといわれています。
“天皇 乃沐浴斎戒して(日本書紀)”「天皇は水を浴びて心身を清らかにして」という表記があるのです。

現在では「沐浴」は「もくよく」と読みますが、この当時は「ゆかはあみ」と呼ばれていたようで、これが「湯灌・ゆかん」の語源になったのではないかと考えられています。

このような「水を使って心身をきれいにする」という習慣は、日本だけでなくインドなどでも見られていました。
インドなどでは頭から水をそそぐという「灌頂(かんじょう)」という儀式が行われていましたが、これはやがて日本にも伝わります。

キリスト教でもっとも有名な儀式のうちの一つである「洗礼」でも灌頂が行われることがあります。
また、灌頂ではなくても、体を水につける儀式などがありますから、「水によって、体だけでなく心も清めて、信じる対象(神様や仏様)の元へ旅立つ・近づく」というのは、世界各国、さまざまな宗教で見られる考え方だといえるでしょう。

ここまでは、単純に「生きている人が身を清めるための儀式である」とされていた湯灌でしたが、真言宗では、棺に入るときにも灌頂を行います。「体を物理的に清める」「宗教的儀式の一つとして、水を注ぐ」という考えが一致し、現在のような湯灌のかたちができたと考えてよいでしょう。

「しきたりやマナーが細かく決められている」と思われる葬儀ですが、実は地方差も非常に大きいものです。
湯灌もまた、例外ではありませんでした。太平の世として知られた江戸時代においては、地方ごとにまったく異なった湯灌の儀式がありました。

あえて左手でお湯を注ぐ「左びしゃく」などのやり方をとるところもありました。
なお、このときに誕生したと思われる「逆さ水(さかさみず)」は、平成の世にも一部受け継がれており、「湯灌を行う際は逆さ水で行う」としている専門サイトなども見られます。

また、江戸の昔は、お風呂を自宅に持っている人はほとんどいませんでした。
そのため、当時はお寺で湯灌を行っていたとされています。

現在は、「自宅でもできないわけではないが、基本的には専門の業者に頼んで行うもの」というかたちに変化していっています。

ちなみに、湯灌とその後のお着替えはセットで行われることが多いものです。今でも時折みられる経かたびらを着せて、六文銭などを持たせることで旅支度を整えていました。

なお、しばしば「体を拭くこと」もまた「(古式)湯灌」と表現されることもありますが、ここでは「湯灌=浴槽などを使い、体に水をかけて送りだすこと」という意味で使っていきます。

湯灌を行う意味や目的

湯灌を行うことには、主に2つの理由があります。それを見ていきましょう。

体を保護する観点から

まず1つめに挙げたいのが、「体を保護する目的」というものです。
人間に限った話ではありませんが、動物の体は、命を失うと徐々に変質していきます。

腐敗していきますし、体の中にあった水分がさまざまな穴から流れ出てきます。また、皮ふもみずみずしさを失い、色が変わってきます。

それでは故人もつらいでしょうし、何よりもご遺族の気持ちもいたたまれないでしょう。
そのため、体をきれいにして、これらの変化に対応していこうという考え方から行われることもあります。

また、これはご遺族のお気持ちに寄り添うことでもあります。
日本に住む人たちの多くは入浴を愛していますし(海外などでは、バスタブは「シャワーを使うためだけのもの」と考える人も多いのです)、「最後に気持ちよいお湯につからせてリラックスさせて、旅立ってほしい」というご遺族の気持ちに寄り添うために湯灌の儀が行われる場合もあります。

宗教上の観点から

湯灌は、もともと「宗教の一儀式」としてその歴史が始まっているものです。
現在もこの「宗教上の理由」というのが、湯灌を行う意味の一つとなっています。

湯灌を行うことによって体を清めて、あの世への旅立ちを気持ちよく行うことができると考える人もいます。

また、水を使って、この世での罪や悲しみや煩悩を洗い流すと考えることもできます。
輪廻転生を信じる宗教の場合は、「来世の幸福を祈る」という意味が込められることもあります。
これは、生まれたばかりの赤ん坊が産湯を使うことをイメージしているとも言われています。

体を清め、この世での苦しみを流し、生まれたときに産湯を使ったように無垢な気持ちで旅立てるように、という願いが湯灌には込められているのです。

湯灌と清拭の違い

湯灌は長い歴史があるものです。しかし考え方も変わりつつあること、また湯灌に代わるご遺体の清め方が出てきたこと、さらにその「湯灌に代わるご遺体の清め方」の技術も進歩したことから、現在では湯灌を行わないというケースも増えています。

その「湯灌に代わるご遺体の清め方」の筆頭に来るのが、「清拭」です。

清拭は「せいしき」と呼びます。「エンゼルケア」という呼び方でも呼ばれることがあります。
これは、アルコールを使ってご遺体を清めていく方法をいいます。

アルコールを浸した脱脂綿を使うやり方がもっともよく知られています。これで体を拭っていき、体の表面についた汚れを除去していくのです。ご遺体と対面したときによく目にすることになるお顔や、洋服や着物から出ることになる手や足を中心にして拭き清めていくものです。

拭き清めるだけでは体液の問題はクリアすることができませんから、このときに、脱脂綿などを体の穴に入れることになります。口や鼻、肛門、耳などを中心に脱脂綿を詰めていき、体液の遺漏を防ぎます。おむつをつけることもありますし、傷口があればそれの処理も行います。

「清拭」という言葉にはある種の不安定さもあり、「どこまでを清拭というのか」は判断が分かれるところです。看護師などによって病院で行われるのが通常ですが、ケースによってやり方は異なってきます。

  1. 医療器具をつけていたのであれば、それを外して処置をする
  2. 治療中に傷ができたのであれば、それの手当てをする
  3. 体をアルコール綿で拭き清める
  4. 体の穴に脱脂綿を入れる

などまでは行ってもらえるのが基本です。
この後に、着替えや死に化粧までを行ってくれる病院もありますが、あくまで「身体の処理」にとどめ、死に化粧などは行わない病院もあります。その場合は、葬儀会社(や葬儀会社が手配する納棺師)やご遺族が担当することになります。

湯灌とエンバーミングの違い

「湯灌」」と「エンバーミング」も、しばしば混同されて語られることが多いものです。この2つの違いについて見ていきましょう。

湯灌は、「故人にお湯や水につかっていただき、体を清潔にするための方法」をいいます。対してエンバーミングの場合は、「ご遺体を長く保管すること」を目的として行われるものです。

人間の体は、時間経過とともに腐敗していきます。季節やご遺体の状態にもよりますが、2~3に津程度で死臭が出てきたり、お顔の状態が変化したりすることもあります。

しかしエンバーミングを施したご遺体の場合、2週間程度はこの「腐敗」から守られた状態で過ごすことができます。生前の姿を長くとどめておけるため、ご遺族の精神的負担も軽い状態でお見送りをすることができます。

エンバーミングの場合、湯灌とは異なり、専門の防腐処置などが施されます。また、殺菌処理も施されます。

日本の場合は、一部の特例を除き、火葬後お骨を納めるというかたちでお見送りをします。
そのため、日本においては、エンバーミングはそれほど重要視されてはきませんでした。

外国のように土葬が基本の文化圏とは相性がよく、このような地域では比較的メジャーなものでもあります。

ただ現在は、「よりその人らしいお姿で」「より生前の状態に近いかたちで」お見送りをしたいと考える人も出てきたため、エンバーミングについても一定の需要があります。
現在は、エンバーミングを専門に学ぶ学校・学科などを取り扱っているところもあります。

ドライアイスなどを必要としないで送ることができるのも、一つのメリットだといえるでしょう。

「エンバーミング」という言葉がどこまでの範囲を含むかは、解釈によって異なります。ただ、一般的には、単純に「防腐措置」だけを言うのではなく、「ご遺体の修復」までをも含むと考えられています。

日本におけるエンバーミングにおいて求められる要素としては、むしろこちらの方が大きいかもしれません。すでに述べた通り、日本においては1~3日中にご遺体を火葬にすることの方が圧倒的に多いからです。

人の亡くなり方はさまざまです。いわゆる老衰などで亡くなられることもありますが、凄惨な事故などで命を落とされることもあります。
老衰でお亡くなりになった場合でも、「頬をふっくらさせてほしい」「病気になってからは食も細くなってしまったが、在りし日の姿のようにしてほしい」という希望はあるでしょう。

ただ、事故などで亡くなられた場合の方が、この願いはより切実だと思われます。
損傷したご遺体、失われた体の一部などを復元し、お顔を整え……というような作業を、エンバーミングを行う人間が担当します。

特にお子さんがつらい事故などでお亡くなりになった場合などは、「母親には対面させられない。母親が顔を見るまでに、彼女がショックを受けないような処理をしてほしい」と希望を寄せられることもあります。

このような「ご遺体の修復」は、特に「遺体修復」と呼ばれることもあります。

「お湯で体を清めて、旅立ちのための準備をする」というのは湯灌が担う役割ですが、エンバーミングは宗教的な意味というよりは「ご遺体の物理的な保存」「ご遺体の損傷をリカバリーしてご遺族の気持ちに寄り添うために行うもの」といった意味合いが強いといえるでしょう。

湯灌~納棺までの流れ

湯灌から納棺までの流れについて解説していきます。
なお、葬儀会社や湯灌業者などによって、流れはある程度異なります。

また、かつては自宅で湯灌を行うことが多かったのですが、現在では専門施設などを利用して行われることも多くなっています。また、湯灌用の浴槽をご家庭に運び込み、それを使って行われることもあります。

なお、湯灌が行われるのは、ご逝去後~納棺までの間です。
また、ここで取り上げる「湯灌」は、ご遺体に大きな損傷などがない場合を想定しています。

  1. 浴槽の準備
  2. 末期の水の儀式などが行われる
  3. ご遺体の硬直をほぐすためのもみほぐしを行う
  4. ご遺体を浴槽までお運びする
  5. ご遺体を洗っていく
  6. 髭剃りなどを行う
  7. 再度体を洗い流す
  8. 化粧などを行う
  9. 着替えを行う

1.浴槽の準備をする

浴槽の準備を行っていきます。
このときに湯灌についての説明を行いますが、説明は3~4のところで行われることもあります。

2.末期の水の儀式などが行われる

故人やご遺族が信仰する宗教に準じたお別れの儀式が行われます。
また、逆さ水をご遺族が用意することもあります。

3.ご遺体の硬直をほぐすためのもみほぐしを行う

人間の体は、命を失うと徐々に硬くなっていきます。
「死後硬直」と呼ばれる現象なのですが、これをもみほぐしていきます。
場合によってはこの工程は省略されることもあります。

4.ご遺体を浴槽までお運びする

ご遺体を浴槽までお運びします。このときは、肌には着物もしくはタオルがかけられています。
現在の湯灌においては、故人の肌をむやみに人目にさらすことはありません。
故人とご遺族のお気持ちに配慮してお運びします。

5.ご遺体を洗っていく

ご遺体を洗っていきます。業者だけで行うこともありますが、ご遺族が参加する場合もあります。
また、「通常は業者だけで行っているが、ご遺族が参加を希望する場合はお手伝いしてもらう」というように柔軟に対応する業者も多いと思われますので、参加を希望する場合は事前に希望を出しておきましょう。

6.髭剃りなどを行う

男性の場合は髭剃りを行います。また、洗顔や洗髪もこのときに行われます。
洗い上がった後は、タオルドライやドライヤーで水分を取っていきます。

7.再度体を洗い流す

再度体を洗い流して、体をお拭きします。
この後に、良い香りのするアロマなどを炊き込めることもあります。

8.化粧などを行う

女性の場合はこの後に化粧を行います。
男性の場合は髭を剃ります。また、このときには爪切りなどを行うこともあります。

9.着替えを行う

8と同じときに行われます。湯灌後は、好きな服を着せることもできます。
白装束などを着せるのが一般的ですが、「故人が気に入っていた洋服を着せて見送りたい」ということであれば、その洋服を着せてもよいでしょう。

ただし、メガネなど一部の服飾品については火葬にするときに支障が出る可能性があるため、NGとされるケースもあります。また、素材によっても「望ましくい」とされる場合もあります。
このため、事前に「着せたい服」を提示して、それで問題がないかを確認しておくと安心です。

10.納棺

納棺を行います。「納棺は家族が行うべき」とする説もありますが、現在は専門スタッフが担当するやり方の方が主流だと思われます。
特に湯灌をお願いするようなお見送り方の場合は、そのスタッフもしくは葬儀会社のスタッフ(兼任の場合もあります)が担当するのが一般的です。

葬儀会社やご遺族の考え方によっても違いはありますが、「納棺はお任せしたい・納棺は遺族の手で行いたい」という希望があれば、どちらの希望にしろ、依頼段階で伝えてください。

男性の場合は髭を剃る・女性の場合は死に化粧を施す

男性の場合は、髭を剃ってきれいにします。女性の場合は死に化粧を施します。
ただし、男性の場合であっても、お顔の色が悪いと思われる場合はファンデーションやリップカラーを塗って調整することもあります。

なお、このときに使われる化粧品は、油分が多く、乾燥しにくいものがよく使われます。「故人が特に愛していた化粧品があった」という場合は、それをお渡しして使ってもらってもよいでしょう。
湯灌を行う人向けの化粧資料などもあり、自然な状態に仕上げてくれます。

湯灌業者のなかには、特にこの過程を大事にしている業者もあります。
「このようなメイクにしてほしい」「(故人が気に入っていた写真などを出して)このようなお顔にしてほしい」などの希望を伝えるのもよいでしょう。

現在のメイク技術はすばらしく、施してもらう前と施してもらった後ではまったく印象が異なるというご遺族もたくさんいます。

湯灌で使用する逆さ水について

「逆さ水(さかさみず)」もまた、葬儀用語の一つです。これは、水の中にお湯を注いでぬるま湯を作る方法をいいます。

通常、ぬるま湯を作る際には、お湯の中に水を入れて作っていきます。しかし逆さ水は、これの逆の手順でぬるま湯を作っていくわけです。

葬儀の場合、「非日常的なものであること(また、非日常であることを願うこと)」から、「通常とは違う手順」で物事を進めようという考え方があります。

たとえば、通常はしない「北枕(きたまくら。北側に頭を向けて寝る方法。お釈迦さまの涅槃入りのときの姿勢に倣うといわれている)」や「逆さ屏風(さかさびょうぶ。屏風を逆さまに置くこと)」や「死装束の着せ方(しにしょうぞく。
左前にして、縦結びで帯をとめる)」をするのも、この逆さ水と同じ考え方からです。

また、逆さ水での湯灌の場合は、足元からお湯をかけていきます。
そしてこのときには、右手でなく左手でひしゃくを持ちます。通常、私たちが体を洗うときは、頭からお湯をかぶり、右手で体を洗っていきます。
このように、お湯を作るときの手順も逆なら、体を洗う手順も反対にして行っていくのです。

逆さ水の歴史がいつから始まったかという正確な年月日は、はっきりとは記されていないようです。ただ、葬儀のさまざまな文化が淘汰や統合、あるいは変わっていくなかで、この言葉は今でも残っています。実際に、このような手順を使って湯灌をしていく業者もあります。

ただ、あまり効率が良い方法とはいえないため、現在では初めから温水を使って湯灌をしていく業者もあります。
「逆さ水をするのが正式なやり方であり、それ以外は邪道だ」ということはありませんが、逆さ水による湯灌をお願いしたいのであれば、実施している業者を選ぶようにするとよいでしょう。

湯灌はだれがする?親族は参加する?

「湯灌をお願いしたいのだが、だれにお願いをすればよいのかわからない」という人もいるのではないでしょうか。
これについて詳しく解説していきましょう。

なお、下記ではさまざまな業者を紹介していますが、実際には、「エンバーミングを行っている業者が、葬儀業をやっている」「葬儀会社だが、エンバーミング業者と提携している」などのような場合もあります。

これらは密接に絡み合っているうえ、「うちの葬儀会社ではここまでできる」「うちではできないが、ほかの業者を紹介することはできる」などのように、同じカテゴリーにある業者であっても、「できること・できないこと」が変わってきます。

このため、一つの参考として見ていってください。

専門の湯灌師や納棺師、あるいはそのような業者に頼む

湯灌と納棺を行う専門の業者にお願いするのが、まず一つ目の方法です。
このような専門的な技術を持った人を「湯灌師」「納棺師」と呼びますが、この2つはなかなか分かちがたいものであるため、一緒に論じられることが多いものです。

なお、納棺師の場合は「納棺士」と表記されることもありますが、ここでは「納棺師」という表記で統一しています。

かつて湯灌は自宅のお風呂を使って行われるのが一般的でしたが、現在は自宅の浴槽ではなく、専用の道具を使って行われるのが一般的です。

そのため、このような設備を持っている業者を使うことが基本です。現在では移動式の湯船を用意している業者も多く、ご遺体をお連れする手間などがかからないようにしているところもあります。

彼らのほとんどは、ラストメイク(死に化粧)の技術も持っています。「湯灌はいらないが、ラストメイクだけ施してほしい」などの要望にも応えることができる業者がほとんどですから、このようなことを希望する場合も問い合わせをしてみるとよいでしょう。

ただ、「ご遺体の復元」までは受け持っていないところもあるので、そのような処置を希望する場合は、エンバーミング業者の利用を検討した方がよいでしょう。

エンバーミング業者を利用する

「事故で体の一部が失われている」
「極めて近い家族が現在海外にいて、戻ってくるまでに時間がかかる」

などのようなケースで、エンバーミングを希望する人もいるでしょう。
エンバーミングには、基本的に湯灌の措置も含まれます。

エンバーミングの場合は「遺体の復元」も前提としています。そのため、単純に湯灌だけを希望するご家庭ではなく、「ご遺体の損傷を復元し、できるだけ生前の姿に近づけた状態で送りたい」と考えるご家庭に向いています。

エンバーミング業者の場合、湯灌だけあるいは清拭だけをプランとして打ち出しているところもあります。

葬儀会社を利用する

葬儀会社を利用するのも、1つの手です。

まず大前提として知っておいてほしいことがあります。
ドラマなどで「納棺師」という言葉がよく取り上げられるようになりましたが、これは「納棺師という資格を持っていなければできない」というものではありません。

葬儀会社のスタッフで、きちんと研修を受けた人ならば、だれでも納棺自体は行うことができます。
また、葬儀会社によって異なりますが、特に「ラストメイクを提供している」と大々的に打ち出していないところであっても、簡単なメイクまではプランに含まれているという業者もあります。

ただ、「湯灌」となると話は別です。湯灌を行う場合は、専門の設備が必要になることが多いため、これを持たない葬儀会社は、湯灌を行うことができません。

もっとも現在の葬儀会社は、ご遺族からの要望をまったく聞き入れないということは少なく、さまざまな方法でご遺族の要望を叶えようとしてくれます。

そのため、葬儀会社と湯灌の関係については、以下のような形態に分けられるでしょう。

1.エンバーミングを含めて、葬儀会社に所属するスタッフが行う

数は決して多くはありませんが、葬儀会社自身が、エンバーミングや湯灌ができるスタッフや設備を持っているところもあります。

このようなところでお願いした場合、その葬儀会社との打ち合わせだけで済みますし、要望も伝えやすくなるでしょう。ただ、このような葬儀会社は多くはありませんので、対応していない地域などもあります。

2.エンバーミングは行えないが、湯灌までは行える

「エンバーミングの技術や設備はないが、湯灌までは提供できる」という葬儀会社もあります。
ご遺体の復元を必要とせず、湯灌まででOKという場合は、このような業者を利用するのも一つの手です。「ラストメイクだけをお願いしたい」などの要望にも対応してもらえるケースも多いといえます。

3.葬儀会社では行っていない(あるいは死に化粧まで)が、該当業者と連携している

「エンバーミングも湯灌も自社では行っていないが、それをできる業者と提携はしている」という葬儀会社もあります。このような葬儀会社にお願いした場合は、葬儀会社が間に立ち、専門業者に連絡―依頼をしてくれることになるでしょう。

なお、湯灌やエンバーミングについて特段取り上げていない葬儀会社に依頼する場合は、依頼の段階で、「湯灌(やエンバーミング)を希望しているが、対応してもらえるか」と聞いてください。

湯灌やエンバーミングを提供している葬儀会社でも事前に伝えておくと安心ですが、「自社ではそのようなサービスは提供していない」という葬儀会社の場合は事前の相談は必須だと考えてください。場合によっては、ほかの葬儀会社を使うことを検討する必要も出てきます。

親族は関わるか?

「湯灌を行うときに、親族は関わるかどうか」についても解説していきましょう。

これは業者ごとによって考え方に違いがあります。もともと湯灌というのは、遺族が中心となって行うものでした。しかし葬儀会社を利用して行う葬儀が一般化した今、葬儀も湯灌もまた、専門業者に頼むことが多くなっています。
たとえば「納棺」にしても、現在は葬儀会社のスタッフが担当することが多いでしょう。

湯灌の場合も同じで、「基本的にはスタッフだけで完結する」としている業者もあります。ただ、「ご遺族にも参加してもらう」という業者もあります。
参加希望・不参加希望に関わらず、一度業者に意向を伝えるとよいでしょう。

この記事のまとめ

湯灌というのは、故人の体を清め、彼岸に旅立つ用意をすることをいいます。
宗教的な意味や衛生的な意味、ご遺族の心を満たす意味などがあります。

体をアルコール綿で拭う「清拭」というやり方があります。これをすることで体をある程度清潔に保てるため、現在は湯灌を行わないケースもあります。

また、しばしば混同される単語として「エンバーミング」がありますが、エンバーミングの方はご遺体の復元や防腐措置を含むため、湯灌とは区別されます(ただし、エンバーミングの過程で湯灌は必要になります)。

湯灌は納棺を行う前に行われます。

末期の水を含ませた後、ご遺体を洗っていきます。なおこのときには、「逆さ水(水の中にお湯を入れてぬるま湯を作る方法)」で温水を作ることもありますが、シャワーで洗う場合もあります。

湯灌が終わった後は髪の毛などを乾かし、髭を剃ったり化粧をしたりしてお顔の状態を整えます。

湯灌をお願いしたい場合は、以下のやり方があります。

  1. 湯灌師や納棺師を抱える業者に頼む
  2. エンバーミングも可能な業者に頼む
  3. 葬儀会社に頼む

葬儀会社の場合は、さらに、

  1. エンバーミングも可能なスタッフや設備を自社で抱えている
  2. エンバーミングはできないが、湯灌はできるスタッフや設備を自社で抱えている
  3. 自社では設備を持っていないが、提携している業者がある

いずれの場合でも、契約前の段階(できれば最初に電話をかけた段階)で、「湯灌(やエンバーミング)を希望している」と告げるとよいでしょう。


監修者コメント

監修者
終活・葬送ソーシャルワーカー
吉川美津子

湯灌やエンバーミングは通常の葬儀プランには含まれていないオプションとして、葬儀社から提案されるサービスのひとつです。

湯灌は8万円~15万円、エンバーミングは20万円~30万円くらいになります。
湯灌が必要であるかどうかは、それぞれの考え方によって異なります。

ある故人は、インフルエンザから肺炎になり、3週間ほど入浴できずに亡くなりました。
亡くなる日の午前中「今日はお風呂に入りたい」と言い、その日の午後に亡くなりましたので、「最後はゆっくりと湯船に浸からせてあげたい」と遺族は湯灌を希望されました。

一方で、別のケースでは「お母さんが湯灌されている姿を、親戚中にジロジロみられて本当に嫌だった。
いくら身体はタオルで覆われているとはいっても、入浴中の姿は誰にも見られたくないに違いない。申し訳ないことをした。」と後悔した方も少なからずいらっしゃいます。

湯灌にしてもエンバーミングにしても、必要であるかどうかを見極めたいものです。


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  • 自分のライフスタイルに合ったベストなお墓はどういうものなのか知りたい
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