火葬だけではない!日本でも行われている土葬の実態

【土葬】アイキャッチ画像

土葬とは?徹底解説

  • 日本では主に火葬が行われ、土葬は法的に可能だが許可が必要。
  • 土葬は限られた場所でのみ実施可能で、特殊なケースで選ばれることがある。
  • 火葬はほぼ全体を占め、土葬は自然に還る利点があるが、土地使用や衛生面で課題も。

大切な人が亡くなり、葬儀が終わったあとに行われるのが火葬です。
火葬をすることが当たり前に感じている人も多いでしょうが、はたして日本で土に埋葬する「土葬」という選択を行うことはできるのでしょうか。

「土葬をしたら、死体遺棄になり犯罪になってしまう」と感じている人も少なくありません。
そこで、今回は日本の土葬事情について徹底的に解説していきます。

火葬が浸透している日本で、土葬を行うにはどんなメリットやデメリットがあるのでしょうか。
また、土葬を選択している人たちはどんな人が多いのかについても確認していきましょう。

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この記事の目次

  1. 土葬と火葬の違い
  2. 日本でも土葬ができるが、行える墓地はほとんどない
  3. 土葬をするときは火葬同様の許可が必要
  4. 日本は世界で一番火葬が多い国
  5. 世界では土葬と火葬の割合は約半分
  6. 土葬とエンバーミングの密接な関係
  7. 土葬のメリット・デメリット
  8. 土葬をするときに押さえておきたい2つのポイント
  9. まとめ
  10. 監修者コメント

土葬と火葬の違い

土葬と火葬の違いは、埋葬方法にあります。文字通り何を用いて遺体を葬るのかが大きな違いです。

土葬の特徴

土葬は、遺体を棺桶に入れたまま土の中に埋葬する方法です。棺桶を入れられるだけの広さの墓地が必要で、かつ2メートル以上の深さも必要になります。  

火葬の特徴

火葬は、火葬場で遺体を棺桶ごと焼き、焼骨を骨壺に入れて埋葬する方法です。
一般的になじみがある方法ですので現代の日本人の場合は土葬よりも火葬のほうがしっくりくるでしょう。

火葬と土葬のどちらも日本では古くから行われている埋葬方法になります。
どちらがよいというわけではありませんが、時代によって衛生管理上や宗教上の問題で火葬が尊重されたり、土葬が尊重されたりするなどさまざまな経緯がありました。

そんな埋葬方法事情ですが、日本での土葬事情はどのようになっているのでしょうか。

日本でも土葬ができるが、行える墓地はほとんどない

日本で土葬を選択することは可能ですが、行える墓地がほとんどないのが実情です。

墓地埋葬法第2条で、法律上の「埋葬」とは死体を土中に葬ることとうたっています。そのため、法律上認められた墓地であれば、土中に死体を埋葬することは問題ありません。

しかし、現実的には自治体や寺院・霊園で土葬を禁止している場合があるのです。   

自治体の条例によっては土葬禁止地域がある

自治体の条例によっては、土葬禁止地域を定めているところもあります。

例えば、東京都の場合は、墓地等の構造設備及び管理の基準等に関する条例の第14条で「知事は土葬禁止地域を定めることができる」とうたっているのです。

同条2項では、「墓地の経営者は土葬禁止地域で焼骨以外は埋葬してはいけない」と記載があります。そのため、土葬禁止地域以外で、かつ寺院や霊園の管理者が土葬を認めてくれるような墓地でないと土葬は難しいということです。   

日本で土葬が可能な場所

日本で土葬が可能な場所もなかにはあります。ここでは、3つの霊園についてご紹介いたします。

  • 山梨県の風の丘霊園
  • 茨城県の朱雀(すじゃく)の郷
  • 北海道のよいち霊園

山梨県の風の丘霊園

山梨県北杜市明野町の風の丘霊園は、自由区画の中に土葬区画が設けられています。

風の丘霊園
所在地
山梨県北杜市明野町小笠原1238
霊園種別
民営霊園
/
宗旨宗派
宗教不問
区画種別
一般墓
参考価格
7万円~+墓石代
風の丘霊園
 

茨城県の朱雀(すじゃく)の郷

茨城県常総市にある朱雀の郷は土葬が可能です。

北海道のよいち霊園

北海道余市郡にあるよいち霊園は、キリスト教やイスラム教の墓地区画のほかに、土葬区画があります。

2.2
1
所在地
北海道余市郡余市町梅川町563
霊園種別
民営霊園
/
宗旨宗派
宗教不問
区画種別
一般墓
参考価格
12万円~
よいち霊園
 

土葬をするときは火葬同様の許可が必要

土葬を行う際は、火葬時と同様に自治体の許可が必要です。

亡くなったあとに自治体へ死亡届を提出すると、「火葬・埋葬許可証」という公的書類が交付されます。一般的には、火葬時に火葬場へ提出して火葬を行うのですが、土葬を行う場合は埋葬可能な墓地の管理者へ書類を提出するのです。

しかし、上述したように土葬をするにはさまざまな障壁があります。

日本は世界で一番火葬が多い国

日本は、世界の国々の中で最も火葬する割合が多い国といわれています。ここでは、どのぐらい火葬率が高いのか、土葬はどのようなときに行われているのかについて解説します。

2017年度の日本の火葬率は99.97%

厚生労働省が発表している「衛生行政報告例」によると、2017年の全国の火葬率は約99.97%です。約140万人が亡くなり、ほぼ同数が火葬をしています。ほぼ100%の人が火葬を行っていることになりますね。

しかし、興味深いのは0.03%(389人)が土葬を行っているということです。これだけ火葬が普及している中で土葬を行っているのはなぜなのでしょうか。   

土葬が多いのは神奈川県

土葬の割合が多い都道府県は、神奈川県です。2017年度については389人土葬しているうちの215人(約55%)を占めています。さらに、内容を掘り下げていくと215人中209人(約97%)が死胎です。

死胎とは、母親の胎内で4カ月以上経過したのちに胎内で亡くなってしまった子どものこと。つまり、4カ月以上の死産を土葬している割合が高いということになります。

胎児を焼骨した場合の遺骨はほんの少しになってしまうため、土葬で行って水子供養をしているという悲しい事情もあるようです。   

東日本大震災の際は、火葬できない遺体を一時的に土葬したケースもあり

2011年3月11日に起こった東日本大震災の際は、一時的に土葬したケースもあります。
火葬場が使えないなど、さまざまな要因がありますが一時的な埋葬のため、この土葬を「仮埋葬」と呼びました。

宮城県では、約2,000体近くの遺体が土葬を余儀なくされたといわれています。
緊急事態としての対応措置のため、土葬用の棺桶ではなく火葬用の棺桶で仮埋葬を行ったため、掘り起こして改葬する際は遺体の損傷が激しく壮絶な状況だったという話です。

世界では土葬と火葬の割合は約半分

他国では、土葬および火葬の割合は各々約半分以下という国々が多い傾向です。
日本のほぼ100%に近い火葬率を知ったあとでは諸外国の土葬の多さに驚いてしまうかもしれません。

しかし、日本も明治時代まで火葬は10%程度しか普及していなかったという説もあります。諸外国が土葬を行うのにはどんな理由があるのでしょうか。

キリスト教カトリック宗派では土葬のほうが多い

土葬が多いのは、キリスト教カトリック宗派などです。なぜなら、キリスト教では死後復活することが宗教上信じられており、火葬してしまうと身体を失ってしまうので復活できないイメージがあるからです。それを考えれば、埋葬慣習の違いが理解できるかもしれません。

しかし現在は、カトリック圏でも火葬率は上がっています。  

韓国や中国のアジア圏は欧州諸国より火葬割合が高い

韓国や中国などのアジア圏の火葬割合は約50~70%です。日本よりは火葬率が低いものの、欧州諸国に比べると圧倒的に火葬が多くなります。

儒教が多い韓国では、土葬と火葬の割合が半々程度です。なぜなら、儒教において火葬は遺体を毀損される悪い行いと考えられているからです。

また、中国は仏教などの影響や国が土葬を禁止している条例を出している関係で火葬の割合が約70%と高めになります。

土葬とエンバーミングの密接な関係

土葬とエンバーミングには非常に密接な関係があります。エンバーミングとは、遺体から血液を抜き防腐剤を入れて長期保存できるようにする処置のことです。

土葬する際に遺体をそのまま埋葬した場合は、腐敗にともない感染症リスクなどが高まってしまいます。そのため、海外で土葬する際にエンバーミングは欠かせないものとなっているのです。  

日本におけるエンバーミングの意味

近年では、日本においてもエンバーミングが普及しつつあります。
本来エンバーミングは、土葬後の衛生上の問題や、死体の損傷が激しい場合の修復という意味合いで利用されることが多い傾向でした。

しかし、土葬をほとんど行わない日本においても遺体の見栄えをよくするため、エンバーミングが浸透してきています。少しでも生前の姿に近づけたまま、最後のお別れができるようにという思いが込められて利用されている傾向です。

費用は業者によっても異なりますが、15万~20万円程度で行えます。

土葬のメリット・デメリット

日本で行うことは難しい土葬ですが、行う際のメリットやデメリットにはどんなものがあるのでしょうか。

土葬をする2つのメリット

土葬をする2つのメリット

  • 土に還ることができる
  • 環境にやさしい

土葬をするメリットの1つ目は、「土に還ることができる」ことです。
神仏習合という変わった信仰が根差した日本も仏教が伝わってくる前は、神道が主流でした。

神道においては、土葬するという考えがあったため、日本においても信仰上土葬にするということもあったのでしょう。大地から生まれ、大地に還っていくという考え方のもとでは土葬は最高の埋葬方法になります。

2つ目は、「環境にやさしい」ことです。火葬の場合は、燃やすための燃料などが必要になりますが、土葬の場合は必要ありません。そのため、地球環境にもやさしいということもメリットになります。

土葬をする2つのデメリット

土葬をする2つのデメリット

  • 土地を広く使用する
  • 衛生上の問題

土葬を行うデメリットの1つ目は、「土地を広く使用する」ことです。土葬する際は、棺桶ごと埋葬するため、棺桶が丸々入るほどの穴が必要になります。

また、日本において土葬する際、多くの自治体の条例で「墓穴の深さは2メートル以上にすること」が条件です。国土が狭い日本においては大きなデメリットになりますね。

2つ目のデメリットは、「衛生上の問題」です。埋葬した遺体が感染症の原因になったり、その土地の地下水に影響を与えたりすることもあります。
衛生管理が厳格な日本にとってはデメリットとなってしまうのでしょう。

土葬をするときに押さえておきたい2つのポイント

「墓地及び埋葬に関する法律」では、禁止されていない土葬ですが、実際は2つのポイントを押さえておかないと埋葬することは難しくなります。  

1.土葬したい自治体の条例で土葬が禁止されていないか

まず、土葬したい自治体の条例で土葬が禁止されていないかをチェックしましょう。
自治体の条例では、土葬を禁止する地域が指定されていたり、土葬そのものを禁止していたりすることがあります。

そのため、必ず事前に土葬ができるかの確認をしておくことが必須です。  

2.寺院や霊園が土葬を許可しているか

寺院や霊園が土葬を許可しているかどうかも重要です。
火葬・土葬のどちらにおいても「墓地」でないと埋葬することができません。

寺院や霊園にあらかじめ確認したり、墓所使用契約書を見せてもらったりして、土葬が可能かを確認しておきましょう。

まとめ

日本でも土葬が行えるなんて驚きでしたね。
墓地埋葬法上は、問題ない土葬ですが実際に行う際にはさまざまな障害を乗り越えなければなりません。

最低限押さえておきたいのは、自治体と寺院や霊園の許可が下りるのかということです。この2つのどちらかが欠けていても土葬は行えないため、しっかり確認しておきましょう。

土葬が多い神奈川県では、大半がお腹の中で亡くなった子どもを埋葬するためという内容にも驚かされました。「胎児は焼骨すると骨がほとんど残らないため土葬する」という理由を聞くと、なんとも悲しい気持ちになってしまいますね。

それでは、簡単にこれまでのまとめをおさらいしておきましょう。

  • 土葬は棺桶のまま土に埋める埋葬方法
  • 火葬は焼骨して骨壺に入れた遺骨を埋葬する方法
  • 法律上問題ない土葬ですが、実際行える場所が少ない
  • 自治体の条例によっては土葬禁止地域がある
  • 土葬する際は、火葬同様に「火葬・埋葬許可証」が必要
  • 日本は世界でも火葬が進んでいる火葬先進国
  • 日本の火葬率は99.97%
  • 2017年度の統計では土葬が多いのは神奈川県
  • 土葬の中でも特に多いのは死胎(水子供養)
  • 東日本大震災のあとは、仮埋葬(土葬)を行ったケースもあり
  • 世界では火葬と土葬の割合は半々程度
  • キリスト教圏の欧米諸国は土葬の割合が約70%と高い
  • 儒教圏の韓国では、半々の割合
  • 中国など仏教色が強い国では火葬のほうが割合としては高い
  • 土葬の際は、衛生上の問題を解決すべくエンバーミングを施すことが多い
  • 土葬の主なメリットは「土に還れる」「環境にやさしい」という2つ
  • 土葬の主なデメリットは「土地を広く使用する」「衛生上よくない」という2つ

土葬の条件が厳しいからといって、勝手に土葬してしまうと刑法190条により死体遺棄罪になってしまいますので注意が必要です。

土葬のポイントを押さえて可能な自治体および墓地を選定していきましょう。


監修者コメント

監修者
終活・葬送ソーシャルワーカー
吉川美津子

現在、100%近い火葬率の日本では、土葬に対してのイメージはあまり良いとはいえません。
東日本大震災で土葬が一時的に行われた際、「これでは浮かばれない」という遺族の声が多数ありました。
現代の日本において、土葬が葬送方法のひとつとして市民権を得ていない様子が感じとることができます。

ペットの弔い方も同様で、ペットも土葬をする割合が減り、火葬を希望する人が多くなりました。
ペットの肉体が朽ちていくという感覚に抵抗を感じている人が多いのだと思います。

そうはいっても、超高齢社会の担い手として、外国人労働者が増え、日本も多国籍国家としての歩みを進めています。
さまざまな宗教観、死生観の中で、土葬を含めて葬送儀礼はさらに多様化していくことが予想されます。