教会で行う葬儀、その特徴やルール、注意点とは?

白い教会の外観

葬儀のかたちが多様化していくなかで、「葬儀を行うことのできる葬祭場」もまた多様化しています。
現在では万事に便利な葬儀式場(葬儀会社などが持っており、宿泊施設が併設されていることもある)がよく利用されるようになりましたが、お寺や教会で行われる葬儀もあります。
今回はそのなかから、「教会」について取り上げていきましょう。

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  • お墓選びで複雑な手順を簡単に詳しく理解したい
  • お墓選びで注意するべきポイントを詳しく知りたい

など、数々の不安を抱えている方が多いのではないでしょうか。
お墓の購入に関しては、初めての方が多いため、不安や疑問を持つことは仕方のないことでしょう。
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この記事の目次

  1. 教会で行う葬儀とは
  2. 教会でのお葬式に参列するときに知っておくと便利なこと
  3. 教会で行う葬儀の流れ
  4. 教会での葬儀に参列するときのマナー
  5. 教会での葬儀に参列した後に気をつけること
  6. まとめ
  7. 監修者コメント

教会で行う葬儀とは

キリスト教に入信している人の場合、教会で行う葬儀も選択肢のうちの一つに挙がってきます。
「キリスト教の洗礼は受けていないが、葬儀はキリスト教で行いたい」という場合は、プロテスタントのやり方で、葬儀会場などを使って行うかたちが多いと思われます。

通っていた教会で葬儀を行うことができる場合も多く、故人や遺族にとって神の存在をより身近に感じられながら見送ることができるのが教会式の特徴です。
また、非常に荘厳な葬儀になるため、心に深く残る葬儀となるでしょう。

教会で行う葬儀、特にカトリックの葬儀を希望する場合、打ち合わせの段階から教会の関係者が臨席するかたちもよくとられます。
また、ケースによっては、葬儀会社を介さずに教会と話しあって決めていくかたちをとる場合もあります。

日本では、海外ほどは教会の数が多くありません。
しかし宗教の自由のある日本において、「教会での葬儀を希望している」という旨を表明しておけば、それに添った葬儀を行うことはそれほど難しいことではありません。

ただ、「故人は教会での葬儀を希望しているが、喪主となるであろう遺族は仏教徒(ただしそれほど熱心なものではない)」などのようなケースの場合は、遺された喪主や遺族がとまどってしまうこともあるので、終活の段階で自分の意向を伝えておくことが望ましいでしょう。

教会でのお葬式に参列するときに知っておくと便利なこと

教会で葬儀を行う前、あるいは参列する前に、知っておくべきことを解説していきます。

カトリックかプロテスタントかの違いを知っておく

カトリックとプロテスタントは、同じ「キリスト教」でありながら、非常に異なった考え方を持っています。
今回は主に「葬儀」に関わる観点から、これを紹介していきます。

神の教えについて

まずカトリックでは、神の教えは聖書や伝承などを元に説いていきます。
また、法王の考えを神の言葉に等しいものと考えます。
対してプロテスタントの方では、聖書のみを正しいものとしています。
聖書主義ともいえるものであり、カトリックとはまったく異なります。

教会について

また、今回取り上げる「教会」についても、カトリックとプロテスタントでは大きく違います。
カトリックの教会は荘厳で豪奢で、見るものを圧倒する美しさを持つものです。
対してプロテスタントの教会はシンプルで、十字架やオルガンのみで構成されることの多い暖かみのあるデザインになっています。

司祭の呼び方について

もっとも大きな違いは、司祭の呼び方でしょう。
カトリックの場合は司祭を「神父」と呼びますが、プロテスタントの場合は「牧師」と呼びます。
この違いはかなり厳格なものであり、キリスト教の葬儀を行う際にもよく取り上げられます。

儀式について

儀式においても違いがみられます。
カトリックでは「ミサ」という表現をよく使いますが、プロテスタントの場合はこの言葉は使いません。
プロテスタントにおいては、「礼拝」という言い回しが使われます。
プロテスタントの場合はこの書き方はしません。このようなところにも、カトリックとプロテスタントの違いが見て取れます。

また、なんとなく「キリスト教の歌=讃美歌」と思っている人も多いかと思われますが、「讃美歌」という表現はプロテスタントのものです。カトリックでは「聖歌」といい、区別されています。

厳格さについて

「カトリックとプロテスタントでは、カトリックの方が厳格だ」とはよく言われます。
これに関してはさまざまな意見があり、「カトリック(プロテスタント)のなかでも、それぞれ考え方に違いがあるから、どちらが厳しいとは一概にはいえない」とする説もあります。
これももちろん正しい意見なのですが、日本では、「プロテスタントの方が、規律が厳しくない」というように解釈されることが多いといえます。

これにはきちんとした理由があります。
カトリックの場合、結婚式をするときも、新郎新婦のいずれかもしくは両方がカトリックで、かつ初婚もしくは死別の場合しか教会で式を挙げることはできません。プロテスタントの場合はその限りではありません。

また、葬儀においても、「生前に洗礼を受けていない」という人がキリスト教の葬儀を挙げたいと考えた場合は、プロテスタントでの式を挙げることになるのが基本です。

加えて、カトリックの場合司祭(神父)は独身でなければならず、プロテスタントの場合は妻帯が許可されているなどの違いも、「カトリックの方が厳格である」というイメージに一役買っているといえるでしょう。

日本人は、宗教に対して悪く言えば無関心、良く言えば寛容だとよく言われます。
「自分はなんとなく仏教徒だと思っている」という人でも、自身の家の宗派までは知らないこともよくあるでしょう。

ただ、キリスト教の場合はかなり厳格な違いがありますし、表書きなどにも違いがみられます。
このあたりはある程度覚えておきたいものです。

キリスト教の死のとらえ方を知っておく

キリスト教の死生観についても見ていきましょう。

カトリックの場合は、「人は罪の刑罰として死を受ける。
そして、死んだ人間は5つの場所のいずれかに行くことになる。
キリストを信じて、かつ徳が高かかった人間は天国に行き、復活を待つ」とします。
追善のためのミサを行うのも、カトリックの特徴です。

対してプロテスタントの場合は、「生前にキリストを敬った人間は神の御許に行く。
その死後の安寧は神の手に委ねられる」とされています。
つまり、プロテスタントの場合は、カトリックに見られる「5つの場所」はありません。
また、追善のための儀式もありません。

いずれにせよ、キリスト教では、単純な「死=悲しみ」という構図や死生観は持ちません。
また、「冥府」という考えも持ちません。
「ご冥福をお祈りします」という言い方が、キリスト教においてはタブーとされるのはこのためです。

移り変わるキリスト教の葬儀

キリスト教では、仏教における「通夜」は基本的には行いません。これが原則です。

しかしながら、キリスト教が日本に入ってきて、なじんでいく過程のなかで、日本のやり方に合わせて通夜を行う葬儀も見られるようになりました。
これは日本のキリスト教だけのものだともいわれていますが、現在はカトリックでもプロテスタントでも見られるようになりました。

カトリックでは特に「通夜の祈り」あるいは「通夜祭」、「通夜の儀」「通夜の集い」と呼ばれます。
ちなみにこの「通夜祭」という言い方は、神道の葬儀のときでも見られる呼び方です。

プロテスタントの場合は「前夜式」「前夜祭」と呼ばれます。
ただ、まれに、カトリックの場合でも「前夜祭」という言い回しが使われる場合もありますが、やはり「通夜祭(カトリック)」と「前夜祭(プロテスタント)」で分けて語られることが多いようです。

夜に行われるので、「昼間の葬儀の方には、仕事でどうしても参列することが難しい」という人にも参列しやすいのが特徴です。

キリスト教は世界的な宗教であり、そしてとても長い歴史を持つ宗教でもありますが、このように日本の文化と融合して、日本になじみ深いかたちに変化していったいうのは、なかなか興味深い話ではあります。

聖歌・讃美歌の斉唱は参加する方が良い

プロテスタントの葬儀でもカトリックの葬儀でも、キリスト教の場合は葬儀のときに「歌」を儀式のなかに取り入れます。
仏教や神道では歌は取り入れられませんから、これはキリスト教ならではの特徴だといえるでしょう。

このときには、ぜひ聖歌・讃美歌に参加してください。
聖歌・讃美歌はそれほど難しいものではなく、また受付で歌詞カードが配られることが基本となるため、だれでも歌えるようになっています。
もちろん参加は強制ではありませんが、故人を送る最後の儀式ですから、可能な限り聖歌・讃美歌に参加してください。

なお、キリスト教以外の人が聖歌・讃美歌を歌ったとしても、好意的に迎え入れられ、批判的に見られることはありません。

教会で行う葬儀の流れ

教会で行う葬儀の流れは、「プロテスタントかカトリックか」で変わってきます。

カトリック

  1. 聖歌の流れるなかで、神父入場
  2. 棺と遺族が入場してくる
  3. 神父が聖水と香を捧げる
  4. 開式
  5. ミサ、言葉の典礼と感謝の典礼。
    このときに、聖体拝領の儀式が行われる。聖体拝領とは、パンをキリストの肉に、ワインをキリストの血に見立てて行うものであり、復活を祈る儀式を言う。
  6. 告別式
    ミサまでは教会が主催するが、告別式以降は遺族が主催となる。
    そのため、この2つは明確に区別される。聖歌が流れて入堂がある
  7. 聖歌を全員で歌う
  8. 弔電や弔辞が披露される
    このとき、故人のエピソードなどが取り上げられることになる
  9. 献花
    キリスト教の葬儀のなかでももっとも特徴的な儀式であり、祭壇に花をささげていく儀式。
    喪主→遺族→親族→一般参列者の順番で行われるもので、仏教における「焼香」、神式における「玉串奉奠(たまぐしほうてん)」にあたる儀式である
  10. 遺族からあいさつが行われる(ケースによっては9と前後する)

プロテスタント

プロテスタントの葬儀の場合、カトリックとは異なり、祭礼儀式と告別式を区別しません。
また、プロテスタントはあくまで神に対しての祈りを重要視するのが特徴で、葬儀も簡素に行われることが多いのが特徴です。

  1. 入堂
    プロテスタントの場合は、オルガンの流れるなか、司祭(牧師)が入場してくる
  2. 聖書の朗読とお祈り
  3. 讃美歌斉唱
  4. 故人についての紹介
    これは牧師が行うものであり、この後に牧師から説教が行われる
  5. 弔電や弔辞が披露される
    死を悼む内容よりも、故人との交流などについて取り上げられることが多いのが、プロテスタント式の葬儀の特徴
  6. お祈りと黙祷
    このときもオルガンが演奏される
  7. 牧師によるお祈りと讃美歌斉唱
  8. 献花
    献花自体はプロテスタントの葬儀のときにも見られるものであり、その作法もカトリックと区別されることはない
  9. 遺族からあいさつが行われる
    これもカトリック同様、9と前後することがある

これはキリスト教の葬儀の流れの一つです。
多少順番などが前後することがありますが、基本的にはこのような流れをとります。

また、仏教式の葬儀などでは、遺族は一般参列者に先だって着席するのが基本ですが、キリスト教の葬儀の場合は司祭に続いて入場してくるかたち(一般参列者はすでに着席済み)をとるケースが多く見られます。

献花について

キリスト教の葬儀において、絶対に欠かすことのできない儀式が「献花」です。

1.献花の意味

献花は、大きく分けて2つあります。
一つ目は、祭壇にお花を一本ずつ捧げていくこと。
もう一つは、棺の中をお花で満たすことです。

後者の「棺の中をお花で満たす献花」は、キリスト教以外の葬儀でも非常によく見られます。
同じように「花」を使う仏式の場合や、現在非常にはやっている「花祭壇(花で祭壇を作るやり方)」の場合だけでなく、基本的には榊を使って作られる・行われる神式の葬儀であっても、最後は棺の中に花を入れて送り出すというかたちをとるケースがとても多いのです。

ちなみにこの献花は、一般の参列者が参加できる場合も多く、一緒に写真などを入れることもあります。

ただ、前者の「祭壇にお花を一本ずつ捧げていく献花」は、キリスト教もしくは無宗教、あるいは故人や遺族が特別に希望したなどのケースでしか見られないものです。

なぜなら、キリスト教における「献花」は、仏教の「焼香」や神式の「玉串奉奠」と似た意味を持つものだからです。
故人に花(お香・玉串)を手向けるものであると解釈しておきましょう。

2.献花によく使われる花の種類

このときに使われる花は、原則として、以下のような特徴を持っています。

  • 両手で受け取ることになるので、ある程度茎が長く、持っていても大丈夫な程度の強度があるもの
  • 特に希望しない限りは、白い花が選ばれやすい
  • トゲがないものが選ばれやすい
  • 故人の愛した花などが選ばれることもある

このようなことから、カーネーションや百合などがよく選ばれます。
カーネーションが母の日にも使われる花であることはよく知られていますが、花言葉や意味として「亡き母を思う」という意味があるため、葬儀の場に最適です。また百合はキリスト教と深い関わりのある花であり、不祝儀袋でも百合の花をあしらったものがあるほどです。

また、仏教のイメージが強い「菊」も、扱いやすい花であるためよく選ばれるものです。
ちなみにバラなどは棘があることから避けられやすい傾向にはありますが、故人が愛したということであれば採用されることもあります。特に白いバラは、バラのなかでは比較的選ばれやすいものです。

基本的には季節に合わせた花が用意されますが、「このような花で送ってほしい」などの希望があれば、事前に伝えておくとよいでしょう。

3.献花の手順

献花の手順は、以下の通りです。

  1. スタッフから花を渡される
  2. 右手で花の下あたりを持ち、左手で茎を持つ。必ず両手で持つことが重要。
  3. 祭壇(献花台)の前に歩み出る
  4. 花が参列者側、茎が祭壇側になるように花を回す
  5. 祭壇(献花台)に花を置く
  6. 手を合わせるなどして、一歩下がり、ご遺族に一礼する
  7. 自分の席に戻る

仏教における焼香のときとは異なり、「何回香をいだかなければならない」などの決まりはありません。
また、献花に使われる花は、ご遺族(葬儀会社を介する場合は、ご遺族から依頼を受けた葬儀会社)が用意するものです。

「故人があなたの家の花をとても愛していたから、ぜひお願いします。葬儀会社や会場にはすでに連絡済みです」などのような特別な依頼を受けない限りは、自分で花を持ち込むことは厳禁です。

教会での葬儀に参列するときのマナー

教会に参列する場合のマナーについて解説していきます。

服装は一般的な喪服でよい

教会で行われる葬儀であっても、着ていく服は一般的な服装で構いません。
男性ならばブラックスーツ、女性ならば黒のワンピースやアンサンブルを選ぶとよいでしょう。

男性の場合は白いワイシャツに黒いネクタイ、黒い靴下を合わせます。
女性は黒いワンピース(アンサンブル)に黒いストッキングを合わせるようにしてください。現在では肌色のストッキングでも許容される、とする説もありますが、基本的には黒のストッキングを選ぶ方が安心です。

鞄や靴は、金具の付いていない黒一色のものを選ぶようにします。
素材も、ツヤのないものが望ましいでしょう。
女性の靴はヒールがあるものを選ぶのが基本ですが、ピンヒールや高すぎるヒールのものは避けます。

また、社会人の場合、葬儀の式でローファーを履くのはバッドマナーとされています。
ローファーが許されるのは、学齢期の学生までだと考えておきましょう。

小物を使う場合は、真珠を選びます。真珠は黒真珠でも白真珠でも構いません。
黒真珠ならば喪の場所に相応しい落ち着いた色合いになりますし、白真珠ならば涙を表すとして受け入れられます。

なお、ネックレスを使う場合は、必ず一連のものにしてください。二連のものは「悲しみが重なる」「不幸事がまた起きる」として忌避されます。
これは仏教や神式の葬儀でも同じです。

真珠を使った小物と結婚指輪はつけていっても構いませんが、これは「つけていかなかったらバッドマナー」というものではありません。つけていかなくても一向にかまわないものです。

キリスト教の葬儀が取り上げられた作品を見ていると、よく帽子やベールをかぶっている光景が映し出されます。
キリスト教の葬儀において被られる帽子は「トーク帽」と言われるものであり、基本的にはご遺族・ご親族のための装いです。

もしくは、皇族の方々など、特別な方が身に着けるものです。
なお、ベールは黒もしくは白を選ぶとされていますが、色に関しては専門家の間でも見解が分かれています。

また、カトリックにおいてはベールをかぶりますが、これは「故人と近しい関係」の人であればあるほど、大きいものをかぶるとされています。ちなみに帽子やベールを利用する場合は、手袋も一緒に身に着けることになります。

いずれの場合にせよ、「参列者」という立場で、かつキリスト教の信者でもなく、葬儀の場所も日本の教会であるという場合は、帽子やベールは用いないのが基本です。

手袋に関しては、「落とすことのできない(たとえば前日に施したなど)ネイルアート」などがある場合はそれを隠す手段として用いられる場合もありますが、葬儀に参加するのであれば、できるかぎりネイルアートはオフにしておきたいものです。

十字架は家の宗派が仏教であれば必要ない

仏式の葬儀のときに使うものとして「数珠」があります。
この数珠は仏式のときだけに使うものですから、神式の葬儀でもキリスト教の葬儀でも使いません。
教会で行う葬儀に数珠を持っていくことは避けるべきです。

キリスト教において、数珠の代わりとなるものといえば「ロザリオ」を思い浮かべる人もいるかもしれません。
しかし仏教徒がキリスト教の葬儀に参列する場合、ロザリオを持参する必要はないとされています。

そもそもロザリオを使うのはカトリックの葬儀のときだけです。
また、専門家のなかには、「ロザリオはあくまで神にささげる祈りのときに使うものであり、キリスト教の葬儀のときには持って行かない」とする説を唱える人もいます。

いずれの説をとるにせよ、「自分の家の宗教は仏教である」という場合は、ロザリオを持っていく必要はありません。
また、新たに買う必要もありません。何も身に着けないで出るとよいでしょう。

不祝儀袋は何と書く?

キリスト教の葬儀のときに持っていく不祝儀袋は、仏教のときとはまったく異なります。

不祝儀袋は、黒白もしくは双銀の水引がかけられたものか、水引がまったくかけられていないものを選びます。
キリスト教の葬儀に持っていくときのみ百合や十字架が印刷されたものも選べますが、これらは非常に取り扱いが少なく、なかなか見つからない場合も多いと思われます。

このような場合は、「ハスの花の入っていない、黒白(双銀)の不祝儀袋」を選べば問題ありません。
キリスト教の不祝儀袋の表書きとして使えるのは、「御花料」「忌慰料(きいりょう)」「御霊前」「献花料」などです。

ちなみに、このなかで「忌慰料」はプロテスタントのときに使う表書きです。
「御霊前」はもっともはん用性の高い表書きであり、仏式でも神式でもキリスト教でも使えますが、厳密にいえば、キリスト教のプロテスタントや仏教の浄土真宗では使えない言葉です。

もっとも、葬儀会場で行われる葬儀の場合、宗派まで問われることはほとんどありませんから、迷ったのならば「御霊前」にしておくとよいでしょう。
ただ、教会で行うという案内があるのであれば、少なくともキリスト教の葬儀であることはわかります。

このため、相手の宗派がわからない場合は、プロテスタントかカトリックかどちらかしか使えない言い回しである表書きは避け、「御花料」とするのが望ましいといえます。

供花の考え方

キリスト教の葬儀でも、「供花」が出されることがあります。
この供花は、遺族・親族が手配することもあれば、知人や友人、会社関係の人が手配することもあります。

葬儀会社の持っている葬儀会場で葬儀を行う場合にも、事前に「送ってもよいか」「供花辞退の意向は示されていないか」を確認する必要がありますが、教会の場合はもっと注意したいものです。

こぢんまりした教会などでは飾るスペースを確保することが難しかったり、教会と付き合いのある花屋を利用することが前提となったりしていることも多く、葬儀会社の持つ葬儀会場で行うときとはまた違った注意点が出てくるからです。

ちなみに、キリスト教での供花は、「名札」はつけないのが一般的です。
仏式の場合は、出した供花には「親族一同」などのような名札がつけられますから、この点もキリスト教の葬儀と仏式葬儀の違いといえるでしょう。

使える!お悔やみの言葉

キリスト教の葬儀の場合、仏教の葬儀とは「死」に対する受け止め方がまったく異なります。
このため、お悔みの言葉も、仏教の場合とはまったく異なります。
そもそも、「お悔みの言葉」自体が不適当と考える向きもあります。

キリスト教では、「死とは悲しみだけに彩られたものである」とは考えないのです。
神の御許で安息を得ることにもつながるため、それを踏まえたお悔みの言葉を述べることが必要になります。

たとえば、以下のようなものです。
「○○様が、神の御許で永遠の安息を得られますように」
「○○様の魂が、安らかでありますように」
「○○様の眠りが、穏やかで平らかなものであるようにお祈りしております」などです。

教会での葬儀に参列した後に気をつけること

キリスト教の信者が教会で行われる葬儀に参加する場合はあまり問題にならないのですが、仏教徒が参加する場合はいろいろ気を付けなければならないことがあります。

なお、葬儀に参加する際は、「自分が信じる宗教」ではなく、「故人(ご遺族)の宗教」に相応しい立ち居振る舞いをすることが求められます。

言葉遣い

「ご愁傷さまです」「ご冥福をお祈りします」といった言い回しは、キリスト教の葬儀には相応しくありません。
使わないように注意したいものです。
また、「成仏」という概念も、キリスト教にはありません。
ちなみに、重ね言葉(「またまた」「重ね重ね」など)は、キリスト教でも仏教でも神式でも避けるべき言葉です。

数珠の取り扱い

キリスト教の葬儀では、数珠は使いません。また、焼香も原則として行いません。
教会で行われる葬儀の場合、一般的な葬儀会場で行われるものとは違い、「キリスト教の葬儀であること」に疑う余地がありませんので、数珠は持って行かないようにしてください。

「葬儀用の鞄の中に入っていて、そのまま持ってきてしまった」という場合は、そのまま鞄の中に忍ばせたままにしてください。

お酒は出ません

キリスト教は、原則として「通夜」は行っていません。そのため、通夜振る舞いがないのも基本でした。
ただ、日本ではキリスト教でも、通夜祭や前夜祭をひらくことも多くなっています。

このため、この後に「通夜振る舞い」にあたる会が開かれることもあります(もっとも、積極的に「通夜振る舞い」という言い方をするかというと、そうでもありません)。
ただしこれは、あくまでお茶やお菓子、軽食を振る舞うものであり、仏式における「通夜振る舞い」とはまったく異なります。

最大の違いは「アルコール」です。仏式・神式においてお酒は冠婚葬祭の場によく用いられるものですが、キリスト教の場合は葬儀の席ではこれは用いません。

まとめ

教会で行われるキリスト教の葬儀は、大きく「プロテスタント」と「カトリック」に分けられ、それぞれで死生観や式の進行にも違いがみられます。

参列者として参加する場合に気を付けたいのは、「言葉遣い」「格好」「不祝儀袋」「供花」「献花」の4点です。

キリスト教の場合は、「ご愁傷さまです」「ご冥福をお祈りします」といった言い回しはしません。
故人が神様の御許で安息を得られるように、という意味の言葉を掛けるようにしてください。

格好は、一般的な葬儀に参加する格好で構いません。
ただ、数珠は持参しません。
また、帽子やベールは、キリスト教の信者やご遺族・ご親族がまとうものであり、一般の参列者がまとうものではありませんから注意が必要です。

不祝儀袋は、キリスト教のものを用意します。十字架や百合の花がついている白い封筒はキリスト教の不祝儀袋ですが、ハスの花が入っていないもので、黒白もしくは双銀の水引がついているものならばキリスト教の葬儀でも使えます。
カトリックかプロテスタントかによって表書きを変えることもできますが、わからなければ「御花料」としましょう。

教会での葬儀の場合、一般的な葬儀会場で行う葬儀よりも「供花」の取り扱いに注意が必要となります。
スペースの問題や、どの花屋を選ぶかなどの問題も出てくるので、慎重に進めたいものです。

キリスト教の葬儀のなかでは、「献花」という工程が挟まれます。
献花台(祭壇)に花を供えるものです。両手で花を受け取り、祭壇側に茎を参列者側に花を向けて供えるものであり、仏教の焼香や神式の玉串奉奠にあたるものです。

慣れない人はとまどうかもしれませんが、参列者が献花を行うのは一番後ですから、ご遺族やご親族のやり方を真似すれば問題はありません。


監修者コメント

監修者
終活・葬送ソーシャルワーカー
吉川美津子

キリスト教やイスラム教での死後の世界は、そのもととなったユダヤ教の考え方に端を発します。
ユダヤ教に天国や地獄の概念が生まれたのは、紀元前六世紀ごろ、バビロニアによってユダ王国が滅ぼされてから。
自国を失うとともに、この世界はやがて終焉を迎え、ユダヤ人のための新しい神の国、つまり天国が完成するという思想がうまれました。

そのときに、死者はいったん復活して神の審判を受け、選ばれたものだけが天国に、罪人等は地獄に落ちるという考えがうまれ、この思想がキリスト教やイスラム教に受け継がれたわけです。
天国の具体的イメージについては、キリスト教ではあまり語られていません。
しかし絵画やステンドグラスにイメージが描かれることはあり、これらは広く布教の一環として使われています。


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  • 自分のライフスタイルに合ったベストなお墓はどういうものなのか知りたい
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