花の葬儀の特徴は?花で故人を見送る葬儀のスタイルを解説
昨今では、葬儀の形式も多様化しています。少人数で行う「家族葬」や、1日で通夜・葬式(告別式)を行う「1日葬」など。
また、葬儀の流れや参列者の人数とは関係なく、葬儀場内の雰囲気もそれぞれの家族のニーズに合わせてさまざまな種類があります。
たくさんの美しい花で祭壇を飾った「花の葬儀」も葬儀の種類の1つです。宗教色が強くないため、広く受け入れられています。
この記事では花で見送る葬儀に関するこのような疑問を解消!
- 花の葬儀をしたいけれど、花の種類はどれがふさわしい?
- 花の葬儀は通常の葬儀よりも費用が高いって本当?
この記事では、花で見送る葬儀に関しての基本情報や、費用についてを紹介しています。最後まで読むと、素敵な雰囲気で包まれる花で見送る葬儀の魅力がわかりますよ。
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この記事の目次
花で見送る葬儀とは
「花で見送る葬儀」は「花祭壇(はなさいだん)」「生花祭壇(せいかさいだん)」とも言われます。従来の白木で作る仏壇とは異なり、お花で祭壇を作って故人を送る方法です。
この方法は15~20年ほど前から徐々に広がっていったもので、視覚的な美しさもあり、多くの人に受け入れられていきました。
花で故人を送る意味
花で見送る葬儀のもっとも大きな特徴は、非常に美しい祭壇をつくることができるという点でしょう。色とりどりの花を配して送るこの方法は、キリスト教や仏教のみならず、無宗教での式とも相性がよいものといえます。
棺の中にもお花を入れて送るように、「花」は「亡くなった大切な人を見送る」という過程において非常に重要な役目を果たします。柔らかい雰囲気を出すこともできるため、穏やかな心持ちで故人を送りたいと考える人にもおすすめです。
なお、特に記載がない限りは、下記の「花の葬儀」はすべて生花を使ったものだと考えてください。
花で見送る葬儀と一般的な葬儀との違い
花で見送る葬儀と一般的な葬儀のもっとも大きな特徴は、「メインとなるものが白檀の木を使った祭壇ではない」ということです。
少し内側の話になりますが、実は葬儀会社で使われている白檀の木の祭壇というのはレンタル品です。使いまわしがきくもので作られており、1つの葬儀が終われば次の葬儀に回されます。
これは祭壇自体の値段が高いということももちろんありますが、やや複雑な気持ちを抱く人がいるのも事実です。対して、花で見送る葬儀の場合は少し様子が異なります。
かつては花で見送る葬儀で使った花を使いまわす業者が存在したとも言われていますが、多くの葬儀会社ではこれを否定しています。実際、花で見送る葬儀で使われる花はすべて生花ですから、それを使いまわすことは花の鮮度上極めて難しいといえるでしょう。
花で見送る葬儀をつくる場合、通夜~葬式まではこれをそのまま(つまり1つの葬儀が終わるまで)はそのかたちが維持されますが、この花を使ってほかの家庭の祭壇をつくるといったことは原則としてはない、と考えるべきです。
また、花で見送る葬儀で使われた花はかなりの数が引き抜かれ、棺にいれられたり、弔問客にお持ち帰りいただいたり、初七日法要(現在では葬儀の後の火葬を経て、その日のうちにやってしまうのが一般的です)の際の引き出物として持たせたり、家に持ち帰って仏壇に供えたりするのが普通です。
「そのとき限りの美しさ」「その人のためだけの祭壇」ということもあり、花で見送る葬儀は多くの人に受け入れられてきました。
もちろん白檀の祭壇がつくりだす重厚さや、伝統に裏打ちされた確かさは魅力的なものです。
しかしより柔らかく、よりその人らしい見送り方を模索する人にとって、花で見送る葬儀は第一の選択肢となりうるものでしょう。
花で見送る葬儀の費用相場とお金がかかる項目
「花で見送る葬儀を行いたいけれど、やはり金銭面が気になる」と悩む人もいるでしょう。ここでは花で見送る葬儀の金額の実際についてお教えします。
花で見送る葬儀を開いた人の金額相場
しばしば「花で見送る葬儀は高くつく。使いまわしができないからだ」といわれます。しかしこれは誤った認識です。
そもそも、白木の祭壇と花祭壇は単純比較できるものではありません。
現在は「弔問客の数を予想して、それに相応しい祭壇や会場の大きさを確保する。もちろん、遺族側の予算も聞いてつくる」というかたちをとっている葬儀会社がほとんどです。加えて、白木祭壇でも花は使われています。
実際に行われた葬儀でも、「花で見送る葬儀と白木の祭壇では、ほとんど値段が変わらない。また、予算に応じて花を選ぶこともできる」といったケースが多いため、「花で見送る葬儀の方が高くつく」は誤った認識です。
もちろん葬儀会社ごとによって違いはありますので、「絶対に花で見送る葬儀の方が安く上がる」とはいえません。ただ、「花で見送る葬儀の方が安くできる」としている業者もある以上、「花で見送る葬儀の費用は高くなる」と言い切ることはできません。
「花祭壇と白木の祭壇でもほとんど値段が変わらない」ということからも分かるように、花で見送る葬儀の金額の相場も200万円程度でしょう。また、家族葬の場合は50万円程度と考えることができます。
内訳は、祭壇費用が120万円程度、飲食費が30万円程度、宗教者への費用が50万円程度でしょう。
ただ、この「祭壇費用」というのは、「花祭壇をつくるときにかかる生花の値段」だけではありません。「祭壇費用」のなかには人件費やご遺体をお連れするときの費用、それから枕飾りの費用なども含まれています。
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花で見送る葬儀のメリット・デメリット
花で見送る葬儀のメリットとデメリットについてもとりあげていきましょう。
メリット
もっとも大きなメリットは、「オリジナル色あふれる葬儀ができる」ということです。故人の好きだった花(予算によっては制限が入ることもありますが)を選び、その人が好きだったデザインで祭壇を作ってもらうことが可能です。
「使いまわしが原則として行われないこと」も合わせて、「その人らしい送り方」「遺族の気持ちを汲んだ葬儀のかたち」をつくりだすことができるのです。
また花で見送る葬儀の場合、「宗教色をまったく入れたくない」という人でも使いやすいものです。
無宗教の式を希望する、しかし寂しい式にはしたくないと考える人にとっては、華やかな色とりどりの花で見送ってもらえる花で見送る葬儀は非常に利用価値の高いものだといえるでしょう。
通常の式では忌避されがちな色・種類の花(赤色やバラなど)も、故人や遺族の強い要望があれば、使うことももちろん可能です。
なお、これは葬儀会社によって多少考えも異なるかもしれませんが、遺族が希望した場合、「故人が庭で育てていた花」などを取り入れてくれることもあります。
デメリット
花で見送る葬儀のデメリットとして挙げられるのは、「打ち合わせにかかる時間が長くなる」ということしょう。
もちろん、葬儀会社(とそこが提携している花屋)にデザインのすべてを任せることもできます。この場合は、せいぜい好きな花の種類や色を聞かれる程度で、それほど時間はかからないでしょう。
しかし花で見送る葬儀のメリットである「オリジナリティ」を出そうとすれば、かなり時間がかかります。
- どのような花を用いたいのか
- デザインはどんなものがよいのか
- 故人が好きだったものは何なのか
- 故人の趣味や意向はどのようなものであったのか
- 大きさはどれくらいにしたいのか
などなど、さまざまなことを聞かれます。
場合によっては、花で見送る葬儀の祭壇をつくるための打ち合わせだけで半日がつぶれてしまうこともあります。
また、「花で見送る葬儀だから高くつく」ということはありませんが、「故人が好んでいた花が非常に高額なもの(たとえばバラなど)だった」「今が旬ではない花で送り出してほしいと言っていた」というような場合は、総額が高くつく可能性もあります。
自由な形式が増えている!個性的な葬儀の種類
さてここまでは「花で見送る葬儀」のことを触れてきましたが、これは(15年ほど前からあるものの)比較的現代的な葬儀のかたちです。個性的で、オリジナリティに富み、唯一無二の葬儀をつくりだしていくことができる花で見送る葬儀のこの理念は、ほかの「新しい葬儀」とも大きく関係しています。
様変わりする、個性的で新しい葬儀のかたちをいくつか紹介しましょう。
家族葬について
「葬儀」といえば、「親族全員が集まる機会」という印象を持つ人もいるかもしれません。しかし現在では「家族葬」というかたちも非常によくとられるようになっています。
家族葬とは、その名前の通り、遺族だけでお見送りするかたちをいいます。義理(特に遺族の会社の人など)で来てくれる弔問客を断り、静かにお見送りします。
故人が極めて親しく付き合っていた人や、故人が「私の葬儀のときにはこの人を呼んでほしい」と希望していた人、あるいは近しい親族だけで行う式をいい、非常に小規模な葬儀となります。
弔問客の対応に追われることなく、ゆっくりと家族を見送ることができるのも大きなメリットです。
また、高齢化社会になった今、「故人自身には知り合いがほとんどいない」ということも珍しくありません。このため、喪主もすでに会社を引退している場合などは、そもそも一般葬をしたとしても弔問客はほとんど来ないことが予想されます。
祭壇も会場も大きければ大きいほどお金がかかります。よって小さい規模で行われる家族葬の場合、費用が安く抑えられるというメリットも出てきます。なお、家族葬の費用は約50万円~100万円程度です。(どこまで人を呼ぶかによって大きく異なります)
この方法は、花で見送る葬儀と相反するものではありません。「家族葬で、祭壇を花祭壇にする」といったこともできます。もちろん白木の祭壇でお見送りをすることもできます。
家族葬の場合、会場もこぢんまりとしたサイズが用意されるのが一般的です。そのため、「がらんどうの広い会場のなかに、小さい祭壇がぽつねんと置かれている」といった状況になる可能性はほとんどありません。
現在はほとんどの葬儀会社でこの「家族葬」を取り扱っています。
オーダーメイドの自宅葬について
自宅葬は、文字通り「自宅で営まれる葬儀」をいいます。故人が愛してやまなかった家で、最後のときをすごしてもらえるというメリットは、ほかの葬儀にはないものです。遺族も、故人の在りし日の姿を思い出しやすく、暖かみのある式にすることができます。
現在は家族葬でも、食事をオプションでつけることができるようになっている葬儀会社も多く見られます。また、自宅葬専門の業者もあります。特に自宅葬専門の業者は、自宅葬に慣れており頼りになるでしょう。
和やかな雰囲気のなかで故人偲ぶことができるのは、自宅葬の持つもっとも大きなメリットだといえるでしょう。ただ、非常に多くの弔問客が来ると見込まれる場合は、実現は難しいといわざるを得ません。自宅の限られたスペースで行うわけですから、会場ほどの収容力が見込めないのです。
こちらの費用は、規模によって異なります。比較的こぢんまりした葬儀が多いため、葬儀会場を使うよりは安くなる傾向にあります。25万円~100万円程度でしょう。
音楽葬
「故人が愛した音楽で送りたい」という希望がある場合は、音楽葬でお送りすることもできます。
音楽葬とは、一般的に無宗教の式のときに使われる方法で、読経などを伴わず、音楽だけでお送りします。よく使われるのはピアノや弦楽器での演奏ですが、亡くなった方がロックバンドなどをお好きであった場合はそれを採用することもできます。
なお、「故人が(趣味でも仕事でも)楽団に所属していた」「コーラスをやっていた」というような場合は、そのメンバーの楽器や音楽でお見送りをしてもらうこともできます。
新しいかたちの葬儀を選ぶ際の注意点
このような「新しいかたちの葬儀」は、故人や遺族の気持ちを尊重できるものです。ただ同時に、新しいかたちであるがゆえに、注意点が存在するのもたしかです。
まず、家族葬の場合は「どこまで呼ぶか」ということが挙げられます。「あの人は呼ばれたのに、私は呼ばれなかった」と不満に思う人も実際に存在します。「最後くらい盛大に送ってやるのが親孝行というものだ」と考える人もいるため、小規模な葬儀に対して不満を抱く人もいます。
音楽葬に代表される無宗教の葬儀の場合は、さまざまなことを決めるのに時間がかかるというデメリットもあります。だれも慣れていないかたちであるからです。また、弔問客のとまどいも大きいものです。
現在では花で見送る葬儀こそメジャーになりましたが、「家族葬に代表される小規模な葬儀」「音楽葬に代表される無宗教の葬儀」の場合は、周りの人としっかりと話し合うことが求められます。
全員が納得できる葬儀のかたちを選ぶのは非常に難しいといえますが、葬儀の場で起こった人間関係のトラブルや考え方の齟齬は、後々まで尾を引くことになります。
故人の遺志と遺族の気持ちを丁寧に伝え、不満を持つ人と折り合いをつけていきたいものです。
この記事のまとめ
花で見送る葬儀は、花で祭壇をつくって故人を送り出すものです。
ここがポイント
- オリジナリティにあふれる祭壇をつくることもできる
- 優しい雰囲気の葬儀になる
- どんな宗教の人でも使いやすい
といった魅力を持つ花で見送る葬儀ですが、同時に、オリジナリティを出そうとすれば打ち合わせに時間がかかるといったデメリットも持ち合わせています。
また、花祭壇と関連した新しい葬儀のかたちとして、
- 家族葬
- 自宅葬
- 音楽葬
などが挙げられます。最後まで故人らしい送り方、そして故人との思い出をしのびやすい環境下での送り方ができるのがメリットです。
しかし同時にこれらの式は、「どうして私を呼んでくれなかったのか」「無宗教の式には慣れていない」といった戸惑いを招くことがあります。
良い葬儀のためにも今後の人間関係のためにも、親族と丁寧に話し合って納得のいく葬儀のかたちを模索していくことが求められます。
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監修者コメント
監修者
終活・葬送ソーシャルワーカー
吉川美津子
葬儀にはたくさんの花が使われます。戦後、葬儀の祭壇は菊が主流でした。高貴な花であるうえ、一年中安定して手に入りやすく、長持ちすることから、菊が好まれていたのだと思います。一方、近年はユリの祭壇も多いですが、ユリと言えばキリスト教をイメージする人も多いでしょう。しかし実は、自生するユリの種類は日本は欧米よりも圧倒的に多く、万葉集にもユリの歌が数種あります(ちなみに菊はありません)。ただし、ユリを使用する際には花粉は採ったほうが無難。仏壇やお墓の場合も同様、花粉による汚れが一度ついたら落とせなくなってしまうことがあります。