高額介護サービス費とは?手続きの流れに沿って必要書類も解説
介護費用が想定よりも高くなってしまった」というような場合に、負担を軽減してくれるのが「高額介護サービス費支給制度」です。
高額介護サービス費支給制度は、高くなった介護費の一部が、後日払い戻される制度です
ただし高額介護サービス費支給制度を活用する際に注意が必要なのが、申請しなければ適用されない点。つまり、返ってくる可能性があるにも関わらず、知らずにお金を受け取れていない場合もあるということです。
この記事ではそのような事態に陥らないよう、高額介護サービス費支給制度の内容や手続きの流れ、必要書類などについてわかりやすく解説していきます。この記事に沿って手続きをすれば、不安なく手続きすることができますよ。
高額介護サービス費支給制度について情報収集されている方は、ぜひ参考になさってください。
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この記事の目次
高額介護サービス費支給制度とは
高額介護サービス費支給制度とは、高額な介護費を支払った際、あらかじめ定められた上限額を超えた分の金額が払い戻される制度のことです。
上限額は利用者の所得によって異なり、所得が少ないほど払い戻される金額の割合が大きくなります。逆に現役並み所得者(※課税所得145万円以上の人)がいる世帯は上限額が高くなっているため、返ってくる金額は少なくなります。
給付の対象になる金額は、介護保険における1~3割の自己負担部分となります。
払い戻しは、指定した口座に手続きから約2か月後に振込まれます。
ただし、全ての介護費用が給付対象になるわけではありません。介護サービスに該当していたとしても、中には支給対象外となる費用があります。
利用の前に注意!支給対象外となる介護サービス費用
高額介護サービス費には、支給対象外となる介護費用が存在しており、利用前には注意しておく必要があります。高額介護サービス費の支給対象外になる介護費用の具体例は、下記のようなものです。
高額介護サービス費の支給対象外となる主な費用
- 介護施設サービスの居住費、食費、部屋代などの生活費
- 介護用の住宅改修費
- 特定福祉用具購入費
上記のうち特に勘違いしやすいのが、介護施設サービスの居住費や食費、部屋代などの生活費です。これらの費用は原則介護保険の対象外なので、高額介護サービス費も支給対象外となります。注意してくださいね。
特定福祉用具購入費に関しても対象外になります。特定福祉用具の具体例は、介護用のポータブルトイレや入浴補助用具などです。指定事業者から購入した特定福祉用具は介護保険の対象ですが、高額介護サービス費は支給対象外になります。こちらも間違いやすい費用なので、注意が必要です。
このように、介護に関する支出が全て高額介護サービス費の対象になるわけではありません。利用する場合はご自身の希望するサービスが対象になるか、事前に確認しておきましょう。
サービス費用の自己負担上限額は所得区分で異なる
高額介護サービス費の自己負担上限額は、所得区分によって取り扱いが異なります。詳細は下記のとおりです。
分類 | 対象者 | 負担上限月額 |
---|---|---|
1 | 現役並み所得者(※1)に相当する方がいる世帯 | 44,400円 |
2 | 世帯のどなたかが市区町村民税を課税されている人 | 44,400円 |
3 | 世帯の全員が市区町村民税を課税されていない人 | 24,600円 |
4 | 前年の合計所得金額と公的年金収入額の合計が年間80万円以下の方等 | 24,600円(世帯合計)(※2) |
5 | 生活保護を受給している方等 | 15,000円(個人合計)(※2) |
高額介護サービス費の負担上限額は、上記表のような区分になっています。1ヶ月あたりの介護サービス費の合計が上限額を超えた場合に、超えた分の金額が払い戻されます。
例えば、分類1の上限額44,400円のAさんが、月に60万円の高額な介護サービスを受けたとします。介護保険の自己負担割合が1割だった場合、自己負担額は60,000円です。
ただ、上記の表だけではご自身がどの所得区分になるのかがわかりにくいので、それぞれの所得区分について少し細かくご説明していきます。
現役並みの所得を得る個人がいる世帯
現役並みの所得を得る個人がいる世帯とは、以下2点に該当する世帯です。
- 65歳以上でかつ課税所得145万円以上の人がいる
- 介護保険の第1号被保険者の収入合計が520万円以上、単身の場合は383万円以上
どちらか片方のみの条件に該当している場合、現役並みの所得を得る個人がいる世帯ではなく、次章で触れる「1人以上が市区町村民税を課税されている世帯」に分類されます。もしチェックの結果判断できないようであれば、管轄の市区町村に問い合わせてみましょう。
1人以上が市区町村民税を課税されている世帯
1人以上が市区町村民税を課税されている世帯は、前年所得35万円超の方が世帯にいるかどうかで判断することになります。
市区町村民税の課税者は、以下4点のいずれかに該当している人です。
- 実際に市区町村民税を支払っている
- 前年所得が給与収入の場合、年間の収入が100万円超の方
- 65歳以上かつ年金収入のみで配偶者がいる場合は前年収入203万円超、配偶者がいない場合は152万円超
- 65歳未満かつ年金収入のみで配偶者がいる場合は前年収入160.6万円超、配偶者がいない場合は102万円超
ただしこれらはあくまで目安額で、実際には適用される控除や配偶者収入の有無等で判断が変わってきます。
実際に市区町村民税を支払っているのであればわかりやすく判断可能ですが、もし不明な場合は最寄りの市役所等に問い合わせを入れて確認なさってください。
全員が市区町村税を課税されていない世帯
全員が市区町村民税を課税されていない世帯とは、全ての方の所得が35万円以下に収まっている世帯のことです。
例えば、以下2点などの条件に該当するのであれば、住民税は非課税になります。
- 前年の合計所得額と公的年金収入の合計が年間80万円以下
- 給与収入のみで年収100万円以下
具体的には、下記の計算式で市区町村民税が課税されるかどうかを算出することができます。東京23区の例でいえば下記で算出した所得よりも全ての世帯員の所得が低ければ、 住民税非課税世帯になります。
東京23区の例
35万円×(本人+扶養親族等の数)+21万円(※)
(※)扶養親族等がいる場合のみ加算
ただし上記の計算は地域によって異なり、生活保護制度の級地区分によって計算が少し変わってきます。地方と都市部では所得水準や生活費に大きな差があるので、それぞれ異なる基準が設けられているからです。
したがってもしご自身が住民税非課税世帯に該当するかわからない場合は、管轄の市役所等に問い合わせするのが最も正確でしょう。市役所等であれば、昨年の所得データをもとに正式な回答を得ることができます。
また①の「前年の合計所得額と公的年金収入の合計が年間80万円以下」に該当する場合に関しては、世帯と個人で別々の上限月額が設定されています。世帯の場合は24,600円、個人の場合は15,000円が上限月額になりますので、計算する際は注意してください。
生活保護を受給している世帯
日本は、経済的に困窮している状態でも、健康的で文化的な最低限度の生活を保障しています。この保障がいわゆる「生活保護」というものです。
生活保護を受けている世帯に関しては、個人単位で15,000円の高額介護サービス費上限額が設けられています。ひと月あたりの介護費がこの金額を超えた場合、超えた分のお金が払い戻されることになります。
生活保護を受けている世帯であれば定期的に生活扶助費が振込されているかと思いますので、確認は比較的容易です。もし不明点などがあれば、管轄の市役所等に問い合わせしてみましょう。
ここまで高額介護サービス費の上限月額について触れてきました。次の章からは受給までの手続きと必要な持ち物についてご説明していきます。
スムーズに手続きをするために!受給までの流れと必要な持ち物
高額介護サービス費の受給要件を満たしていても、そのまま勝手に払い戻されるわけではありません。受給のためには申請手続きが必要になります。
ここでは高額介護サービス費制度で受給するための手続きと、必要な持ち物についてご説明します。
手続きの流れ
- 市区町村から送られた支給申請書を提出
- 申請受理後に指定の口座へ振り込みが行われる
高額介護サービス費支給制度は厚生労働省が制度を作り、各市区町村が実施しています。
市区町村によって、細かい手続きが異なることがあるので、利用する場合は管轄の市区町村に確認してみてください。
手続きで必要となる持ち物
手続きで必要になる持ち物は、下記のとおりです。
高額介護サービス費支給制度の対象者には、市区町村から申請書が送付されます。
手続きで必要になる持ち物
- 記載済みの申請書
- 介護保険被保険者証
- 本人名義の通帳またはその写し
- マイナンバーがわかる書類(個人番号カード、通知カードなど)
- 介護サービス利用時の領収証
- 本人確認書類
- 印鑑
※市区町村によって多少の違いがあります。
郵送で申請書を提出する場合、申請書と併せて必要書類の写しを全て添付しなければならない市区町村もあれば、申請書と簡易的な書類のみで手続きできる市区町村もあります。
高額介護サービス費支給手続きには「サービスを利用した月の翌月初日から2年以内」という期限があります。この期限を超えると時効になり、払い戻しを受けられなくなります。
詳細は申請書の送付時に記載されているケースがほとんどかと思いますので、よく確認したうえで手続きを行いましょう。
ここまで、高額介護サービス費制度の手続きの流れをご説明してきました。次章では実際に受給が始まった後の流れについてご説明していきますね。
受給後に必要となる手続きは「ない」
結論からいうと、高額介護サービス費支給制度を受給した後に必要な手続きはありません。1度申請すれば、次から市区町村によって計算された金額が自動的に振り込まれることになります。
ただし、振込口座が変わった場合は、別途連絡のうえ手続きが必要になりますので、注意してください。その他に介護費を補助するサービスや制度の紹介
その他、介護費を補助するサービスや制度をご紹介します。介護費を手助けしてくれるサービスや制度は下記のとおりです。
介護費を手助けしてくれるサービスや制度
- 介護保険
- 高額医療・高額介護合算療養費制度
- 専門家に相談する
介護費を手助けしてくれる制度の代表は、やはり介護保険でしょう。介護保険を活用した場合の自己負担は多くの場合1割しか請求されません。
また高額医療・高額介護合算療養費制度も有効です。この制度は年間の医療費と介護費が著しく高くなってしまった場合に対して、年間上限額を超えた分の金額を払い戻す仕組みになっています。実は医療費にも「高額療養費」という制度があり、月間の自己負担上限額を超えた分のお金が払い戻されます。
高額医療・高額介護合算療養費制度は高額療養費や高額介護サービス費と違って1年単位の計算なので、年間の合計で高くなってしまった医療費と介護費の自己負担を大きく軽減することができます。
もし介護保険等の制度で不明点があれば、介護福祉士などの専門家に相談するのも良いでしょう。専門家以外にも市区町村の窓口で相談する方法もありますので、ご自身に合った方法で負担を軽減してください。
まとめ
高額介護サービス費支給制度は、介護保険で自己負担となる1-3割の部分が対象になります。ただ介護に関わる全ての費用が対象になるわけではなく、中には対象外の費用もあります。利用の際は必ず費用が対象になるのかどうかを確認しておきましょう。
その他、当記事で重要なポイントは下記の7つです。
- 高額介護サービス費支給制度は介護保険の自己負担部分に対して負担を軽減するもの
- 所得に応じて月間上限額が決められており、それを超えた部分の金額が払い戻される
- 払い戻されるお金の振込は手続きから約2ヶ月後
- 高額介護サービス費支給制度の対象者には市区町村から申請書が送付される
- 手続きは窓口もしくは郵送だが、市区町村によって異なるので要確認
- 受給後の手続きはなく、次回からは自動的に計算されて振り込まれる
- 高額介護サービス費支給制度の他にも高額医療・高額介護合算療養費制度など、介護費用の負担を軽減してくれる制度があるので、同時に検討するのがおすすめ
重要ポイントを抑えつつ、高額介護サービス費支給制度を有効に活用なさってくださいね。
監修者コメント
監修者
終活・葬送ソーシャルワーカー
吉川美津子
介護保険では、所得に応じて利用者負担の上限額が決められおり、上限額を超えた場合、超えた分が高額介護サービス費として市区町村から払い戻されます。しかし、自己負担分は支給対象とならないため、介護施設の中では比較的リーズナブルといわれている特別養護老人ホームであっても高額になってしまうケースは珍しくありません。新設される特養はプライバシーが確保される「ユニット型個室」が多く、個別ケアをしやすいハードを整えているところが増えているのですが、その分、居住費等は高めに設定されています。年金だけが頼りとなると、「従来型なら払えるけれど、ユニット型は無理」と悲鳴を上げる人も少なくありません。また介護保険制度は3年に1度改正があるのですが、2021年4月の改正で、高額介護サービス費の上限は最大14万100円(年収1160万円以上の利用者の場合)となります。