ライフエンディング ジャーナル vol.001-吉川美津子(きっかわ みつこ)氏―
吉川 美津子氏 プロフィール
葬儀・お墓・終活ビジネスコンサルタントとして、ライフエンディング業界の第一線で活躍されている吉川美津子さん。
大手葬祭業者、墓石・仏壇販売業者での勤務を経て独立されました。現在は、コンサルティング業務のほか、葬送・終活関連の人材育成を行っています。また、社会福祉士として、また介護職として、現場で介護・福祉と葬送・供養を繋ぐ活動もされています。ライフドット(当サイト)の監修者として、読者の皆様に役に立つ情報を届けるために携わってくださっています。
- (一社)供養コンシェルジュ協会 理事
- (一社)葬送儀礼マナー普及協会 理事
- (一社)全国環境マネジメント協会 顧問
- 駿台トラベル&ホテル専門学校、上智社会福祉専門学校 非常勤講師
取材・文/Life.編集部
この記事の目次
初めての葬儀の現場が、この業界を続けるきっかけとなった
吉川さんが、この業界でお仕事を続けるきっかけとなった出来事は何ですか?
吉川さん: 私のエンディング業界のスタートは、葬儀専門の人材派遣のセレモニースタッフでした。
二十年以上前になりますが、私はさまざまな葬儀会社の葬儀現場を手伝う派遣のセレモニースタッフとして働いていました。初めて派遣された日のことは、今でも鮮明に覚えています。
きっかけとなった初日は、派遣会社のチーフと、派遣先の葬儀会社の担当者の指示に従うことで必死でした。業務としては、会場のセッティング、遺族・親戚へのお茶出しがメインです。
右も左もわからない状態での現場でしたが、通夜と翌日の葬儀・告別式は無事に終了。初七日法要が終わった後、片付けをしていたら、ご主人を亡くした遺族の方から「今日はありがとう」と涙とともに心のこもった感謝の言葉をいただいたのです。しかし私は、そのまま素直に受け取ることができませんでした。
葬儀の現場にいたということだけで、何もできなかっただけではなく、遺族の心情に配慮できなかった自分が情けなかったのです。葬儀の現場にいるということが「故人・家族にとって人生の重大な節目に立ち会っている」ということだと痛感しました。
葬儀会社の人たちに対して一般の方は、どこか怖いイメージを持たれる方もいるかもしれません。しかし基本的には「自分たちの手で故人を見送るぞ」と愛とプライドを持って故人と接している人ばかりです。自分も同じように愛を持ち、故人と遺族の大切な時間をサポートしていきたいという気持ちが湧いてきました。
この業界に携わる人たちについて
ライフエンディングの業界に携わる人に対して思っていることはありますか?
吉川さん: 「ライフエンディング」というからには、「生」と「死」を切り離して考えることはできません。現在、生と死は医学的には死の三徴候を持って点で分断され、法的にも死者として扱われます。
しかし、それはあくまで生と死のどちらも、1人の人生におけるプロセスです。例えば昔は葬儀を終えるまでは生者として扱うようなところがあったように、死は点ではなく、生から死へ向かう一連の流れとして考えるほうが自然だと思います。
この業界に携わる人も、死は生からの繋がりということを意識して向き合うことが大切だなと思います。
重視することがモノからコトへと変わり、業界もその流れに
今後、このライフエンディング業界はどのように変わっていくのでしょうか?
吉川さん: インターネットを通じて発信するメディアが増え、「縁起でもない」と敬遠されがちだった「死」に関する情報が簡単に得られる時代になりました。業界の流れの速さが加速しています。
高度成長期時代に経験してきた葬儀の形に疑問を持った人たちが、今、自分の葬儀やお墓はどうしたいのか、自ら主張するようになりました。さらに消費者が重視する価値観が「モノからコトへ」と移り変わってきています。
たくさんの花を飾った大きな祭壇、立派な石を使ったお墓、といったモノにお金をかけることに価値を感じなくなったのでしょう。その代わりに、故人とどのように向き合うかというコトを重視する人が増えてきています。
気軽にお墓参りに行ける都心型の納骨堂や、形式にとらわれないお別れの会が注目されているのがその例かもしれません。
一緒に過ごした思い出や、その空間を大事にするといったことも同じでしょうか?
吉川さん: はい、そうです。終活という言葉が市民権を得て、さらに昨年話題になった「人生会議」のように、自らの最期は自分で考えたいという意識を持つ人が増えてきました。例えば、充実した老後生活や思い出作りをしたいといった希望に沿うように、旅行会社からも、終活講座やツアーが開催されています。
昨今、「直葬」「一日葬」等、時短葬儀が増えていると言われていますが、簡素でもゆっくりとお別れをしたい、空間を大切にしたいとスローな葬儀が求められていると感じています。
ライフドットのコンセプトに共感し、情報の発信を一緒したい
コンサルティングや人材育成などでご多忙のなか、ライフドットの監修を引き受けてくださった理由を教えていただけますか?
吉川さん: 「ライフエンディング業界の情報を、正しくわかりやすく伝える」というメディアコンセプトに、共感したからです。
最近では、インターネット上に葬儀やお墓に関する記事が充実しています。誰もが調べたらたどり着くことができる、便利な世の中になってきました。
ただ一方で、不確かな情報があったり、情報が多すぎてどれが正しいのかがわからなかったり、といったことが起きやすくなっています。標準化できる情報でないのに、あたかも正解を押し付けるような表現を多用するサイトも多いですし。だからこそ、誰かがこの流れを地道に修正しなければと強く感じています。
よって、「ライフエンディング業界の不透明な情報を、わかりやすく人々に伝えたい」というライフドットのコンセプトを聞き、一緒に進められたらと監修を引き受けることにしました。
監修を引き受けてくださってありがとうございます。では、記事の確認やコメント掲載で気を付けられていることはありますでしょうか?
吉川さん: 難しくて意味が浸透していない言葉が多いため、業界用語や専門用語はなるべく使用しないようにはしています。しかし、法律で使用されている言葉は、できるだけ沿って使用するようにしています。
専門用語を使わないと不自然な箇所では、必ずわかりやすく解説文を添えます。漢字ばかりで読み方も難しい言葉が多いため、なるべく読みやすくなるようにしています。
ライフドットの記事を読まれている方へ
ライフドットを読んでくださっている読者の方へメッセージをお願いします。
吉川さん: 最近は、ネット上にたくさんの情報があふれています。SNSの普及によって、より多くの人々が情報を発信し、内容や信ぴょう性もさまざまです。
そして、「葬送」や「供養」に関しては、ネットだけで完結するものではありません。地域や向き合う故人・遺族、参列する人たちによって正しいとされるものは変わってきます。逆に言うと、全国共通で決まっているルールなどは少ないのです。
だからこそ、情報をリサーチするときは、整理をしながら自分がどういう想いで向き合っていくのかということを考えていただきたいです。
記事をそのまま正しい、と思うのではなく、参考にして対象の地域に合わせた葬送方法に合わせるという想いを忘れないでください。
編集後記
吉川さん、インタビュー有難うございました。モノからコトへ、という価値観の移り変わりによって、記事1つをとっても受け取り方が変わってきています。このインタビューを通じて、私たちメディアが情報を発信することの重みについて、改めて考える機会となりました。ライフドットはより一層「正しく、わかりやすく」を大切に、コンテンツ作成を行ってまいります。
吉川さんのTwitterはこちら →https://twitter.com/mk7jp
ライフエンディングジャーナルは、「Life.(ライフドット)」が企画・発信する特別インタビュー企画です。ライフエンディング業界のイマを取り上げ直接取材し、業界全体をライフドットからも盛り上げて行きます。業界に関わるサービスや商品、そして第一線で活躍する人々にフォーカスし、ライフエンディング業界に対する想いやこれからの展望をお届けいたします。