カロートってなに? 意味や種類、使い方や費用を分かりやすく解説
カロートとは?徹底解説
- カロートは遺骨を入れる場所で、墓石の土台となる
- 地上と地下のカロートがあり、それぞれ特性が異なる
- 材質はコンクリートか御影石で、耐久性と価格が違う
- カロート設置・リフォームは10~40万円が相場
納骨の時にはカロ―トの中に遺骨を納めますが、どのように開け閉めするか知らない人もいるのではないでしょうか。
また、「カロートの中に水が溜まる」「リフォームしたいけど費用が分からない」という声もよく耳にします。
この記事ではカロートについて分かりやすく徹底解説します。
墓石全般の基礎知識ついて知りたいという方は、こちらの記事もご覧ください。
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この記事の目次
カロートは遺骨を安置し、墓石を下支えする場所
カロートとは、墓石の中で遺骨を安置する場所のことを指し、「納骨棺」や「石棺」などとも呼ばれています。
大切な遺骨が納められる空間なので、とても大切な場所だけでなく、カロートが石塔を支えます。
カロートや墓石の構造は地域によって異なりますが、共通して言えるのはカロートの真上に石塔を据え付けるということ。遺骨を守り、墓石を支える。カロートはお墓になくてはならないとても大切な場所なのです。
カロートの語源・由来
カロート。なかなか聞き慣れない言葉ですが、一体どんな意味があるのでしょうか。
語源や由来について調べました。
カロートの語源
カロートは「唐櫃(からうと)」が転じたもので、棺という意味で用いられていました。本来は「屍櫃」と書いたようです。
「屍」は現代では「しかばね」と呼びますが、これを昔の人は「カラ」と呼んだそうです。
「櫃」は比較的大きな墓の意味。いまでもお米を納める器を「米櫃(こめびつ)」、炊きあがったごはんを入れておく器を「飯櫃(おひつ)」と呼んだりします。また、「櫃」の一字で棺の意味もあったそうです。
この「屍櫃(からひつ)」が転じて「からうと」、そして「カロート」となったという説が有力です。
カロートは「石棺」とも呼ぶ
カロートのことを「石棺」や「納骨棺」などとも呼びます。棺の文字が用いられているのは、昔は土葬が主流だったことの名残だと思われます。
古代の人々は、遺体の埋葬地に石で棺を作っていたのは有名な話です。
「支石墓(しせきぼ)」と呼ばれる形態のお墓では、遺体の埋葬地の上に小さな石を並べ、それらを支えとして巨大な石を載せる形態のお墓です。
また、「石棺墓(せっかんぼ)」と呼ばれるお墓の形も見られます。板石を組み合わせて棺を作り、その中に遺体を納めるのです。山口県の土井ヶ浜遺跡や佐賀の吉野ケ里遺跡からの出土が有名です。
カロートの普及
カロートを有する大型の墓石は、近代以降から見られるようになったと言われています。
つまり、江戸から明治に移行したあとのことなのですが、これには3つの理由が考えられます。
火葬の普及
ひとつは火葬が一般化したこと。明治に入ると都市部を中心に近代的な火葬場が建設されだし、火葬率が上昇します。土葬にした場合はその上に墓石を据えていたため、カロートそのものが不要でした。
遺体は自然に土に還っていたのですが、火葬骨の場合は骨壺に納め、そのままカロートの中で保管する慣習が広まります。これによって、お墓が遺骨の保管装置としての役割を持つようになります。
建墓の普及
庶民もお墓を建てるようになったのは江戸時代に入ってからですが、明治に入るとさらにお墓の建立が一般化していきます。
イエ制度
明治政府の政策である家父長制を軸としたイエ制度が影響し、これによってお墓は、供養と埋葬だけでなく、家族や親族のつながりのシンボルともなります。
江戸時代までは個人墓や夫婦墓が多かったのですが、明治に入ると現代のような「◯◯家之墓」と呼ばれる家族墓が普及していきます。
カロートの位置は地下か地上か
カロートは大きく分けて2つあります。地下カロートか地上カロートの違いです。
カロートを地下に作るのか、地上に作るのかによって、お墓全体の構造が大きく異なります。
それぞれの特徴をご説明します。
地下カロート
まずはじめに登場したのが地下カロートです。
外から見ると普通に地面の上にお墓を載せているだけに見えるのですが、地下にはきちんとカロートが作られています。
なぜ地下カロートから作られていったかというと土葬タイプのお墓と見た目が変わらないからだと思われます。地下カロートも地域によって構造が異なります。
関東のお墓のカロートは中が棚状になっているのをよく見かけます。
一段式や二段式などさまざまですが、遺骨を土に還すというよりは骨壺のまま遺骨をお墓の中で保管するという意味合いが強いように思えます。
関西のお墓のカロートは、もっとシンプルな一段式。
骨壺のまま納骨する場合と骨壺を遺骨から出して土に還す場合があるため、底面は固めずに土のままです。また、関東のカロートより小さく作られています。
地下カロートの特徴には次に挙げるものがあります。
地下カロートの特徴
- 昔ながらの墓地の景観
- お墓全体が高くなりすぎず威圧感がない
- カロートの中に水がたまりやすい
地上カロート(丘カロート)
地上カロートは丘カロートとも呼ばれています。
地下に作っていたカロートが地面から始まるので当然お墓全体が高くなり、威圧感を覚える人もいるでしょう。
地方部の丘カロート式のお墓は大きいものが多いのですが、わずかな面積でも建立しやすいため都市部でも見られます。
大きなお墓だと高さが2メートルを超えるものもあり、竿石の上の方を掃除するのに芝台の上に乗らなければ手が届かないほどのもののあります。
丘カロートは日本全国に普及していますが、大規模なものは九州に多く見られます。
人が入れるほどの大きなもので、扉を開くと中が棚状になっており、複数の遺骨を保管しておくことができます。
ちなみに、さらに南に下ると沖縄の「亀甲墓」が有名で一軒の家ほどの大きなお墓です。
遺骨を先祖そのものと見なす沖縄や南西諸島では大陸の儒教の影響が未だ強く、かつて洗骨という習俗があったほどです。
遺骨を大事する考え方が巨大な地上カロートを普及させたのかもしれません。
地上カロートの特徴には次に挙げるものがあります。
地上カロートの特徴
- 背が高くなりすぎて威圧感があり、掃除が大変
- 省スペースで建墓できる
- 地上にカロートがあるため、水がたまらず、水はけがよい
カロートの構造
外からでは中が見えないのがカロートです。
カロートはどのような構造になっているのでしょうか。詳しくまとめました。
カロートの材質
カロートに用いられるのは、コンクリートか御影石です。
コンクリートのカロート
コンクリートを用いるのは地下カロートの時のみです。
型枠にモルタルなどを流し込んで、予め作り上げたものを現地に運んで設置します。
中には、ブロックで四方を囲んでもつくられたカロートもあります。
コンクリートやブロックを用いると安価にでき上がりますし、そもそもカロートが地下で見えない部分なので、さほど気になりません。
しかし、見えない部分だからこそきちんとと施行すべきという声もありますし、遺骨を守り墓石を下支えする大切な場所です。
そもそもカロートはコンクリート製と御影石制のものがほとんどです。
実際のところはコンクリートのカロートよりも、御影石の使用を勧めている石材店の方が多いようです。コンクリートは御影石に比べてどうしても耐性、施主の印象もコンクリートよりも御影石の方が好まれます。
御影石のカロート
御影石は、地上、地下の両方で使用します。御影石の場合は部材を現地に運び込んで、その場で据付していきます。
地上の場合は、カロートが外からも見えてしまいます。墓石との一体感が求められ、必ず御影石を使用します。
腰板と呼ばれる外側の石、内部の棚板から扉に至るまで、すべてを御影石で組んでいきます。
地下カロートの場合でも、遺骨を守り、墓石を支えるカロートには御影石の使用が好まれています。
地下カロートは一段式の場合は四方を御影石で囲み、底面は土のままです。
二段式、三段式の場合は、さらに土を深く掘り、段数分だけの棚板を取り付けます。
カロートの段数
カロートには一段式、二段式、三段式とあります。
地上であれ、地下であれ、カロートの中に棚板を作って合理的にたくさんの遺骨を納骨できるようにします。
近畿や東海地方など遺骨を土に還す文化の地域では一段式のシンプルなカロートが目立ちます。底面を土にしていて骨壺を並べる必要がないためカロートの大きさも小さめです。
納骨方法によってカロートの仕様が異なる
納骨方法によってカロートの仕様が異なります。日本全国で火葬後の遺骨の取り扱われ方はさまざまです。
火葬場での拾骨も関東や沖縄では全部拾骨が主流ですし、部分拾骨は全国的に見られ、この違いによって骨壺の大きさが異なります。
また、納骨の方法も骨壺のまま納める地域と土に還す地域があり、これらによってカロートの作り方が変わってくるのです。
骨壺のまま納骨する場合、カロートは全面コンクリート
骨壺のまま納骨する場合は、基本的にはカロートは全面コンクリートです。 もしもカロートの中が骨壺でいっぱいになった場合は、
- 古い先祖の遺骨を小さく砕いて1つの骨壺にまとめる
- カロートの底面の一部を土に還せるように作って中に埋葬する
…などの方法が採られているようです。
遺骨を土に還す場合、カロートの底面は土にしておく
遺骨を土に還す場合は、底面を土にしておきます。
骨壺から遺骨を出して埋葬します。埋葬の際は晒の袋に入れるところも多いようです。
また、底面を土にした状態で骨壺を土の上に置いたままにしておくこともあります。
カロートを開ける時は石材店に相談する
納骨式の時にはカロートを開け閉めしなければなりません。
簡単に開け閉めできるカロートもあれば、重い石を動かさなければならないこともあります。
石の扱いは大変危険で怪我や石材を傷つけるおそれがあります。
無理をせずに石材店に相談しましょう。
カロートの開け方・閉め方
カロートの開閉の仕方は、カロートの作り方によって異なります。
地上カロートで扉がついているものはシンプルです。扉をゆっくりと手前に引っ張って開けます。
地面に蓋をしてあるものを拝石と呼びますが、これを持ちあげるには相当な力が必要です。
拝石は大人の男性が二人でもってもやっと持ち上がるぐらいの重さで、けがのおそれがあります。
カロートの開け閉めが必要な時には石材店に出張を依頼しましょう。
また、西日本に多く見られるお墓の形として墓石の台石をくりぬいてカロートへの入り口としているところもあります。
この場合、カロートの穴を塞ぐのに家紋などが彫刻された水鉢や供物台と呼ばれる石が用いられます。これらの石も相当重いので開け閉めの時は石材店に依頼するのをお勧めします。
納骨時には開眼供養も必要
納骨をする時にはお寺様の読経が必要です(無宗教のお墓の場合は不要です)。
自分たちだけで納骨するのではなく、必ずお寺様を招いて納骨しましょう。
納骨式にはお花やお供え物を用意して線香やろうそくを灯します。納骨のタイミングはお寺や宗派によって異なります。初めに納骨を済ませて法要を始めることもあれば、僧侶の読経の中で納骨をすることもあります。
すぐに納骨ができるように骨壷を、あるいは土に返す場合はさらしの袋を用意しておくなどしましょう。
また、カロートの開け閉めに手間取ってしまうと納骨式そのものが滞ってしまうので石材店に手伝いに来てもらうのが賢明です。
納骨出張料は1万円~2万円が相場でしょう。
カロートの設置にかかる費用相場は10万円~40万円程度
カロートの設置にはどれくらいの費用がかかるのでしょうか。
実は、カロートの費用はそれ単体では出しにくいという性格があります。
地下カロートの場合、基礎工事や石材の据付工事とまとめて行われるので段数によって費用も大きく変わってきます。一方、地上カロートの場合はカロートと墓石は一体となっているため、カロート込みの石塔あるいは外柵として見積もりされてしまいます。
その上で、おおまかな相場をについてまとめたので参考にしてみて下さい。
地下カロート
地下カロートの場合は墓石の基礎工事と合わせて行われるのでカロート単体の費用は割り出しにくいものです。また、一段式や二段、三段と棚板を取り付けるものでも大きく費用が変わってきます。
関西で見られる一段式だとカロートの作りも簡単なため、石材費と工賃込みで10万円前後でしょう。しかし、二段式、三段式となると20万円~40万円と言われています。
地上カロート
地上カロートは地下カロートよりも安価に済む傾向にあるようです。カロートのための基礎工事も不要ですし、墓石と一体となっているからです。10万円~20万円が相場だそうです。
カロートのリフォーム
もしもカロートをリフォームしようとすると、いまある墓石を一旦解体し、カロートがきれいにリフォームできた後に据付をしなければなりません。
お墓やカロートの形にもよりますが、上記の費用に10~20万円近くかかるでしょう。
カロートに溜まる湿気の改善方法と予防策
カロートにたまる水や湿気は、主に地下カロートに見られます。
地下にカロートがあることで土の中から水がしみ出たり、あるいは拝石や水鉢の隙間から雨水が侵入してきます。
ただし、カロートの底面が土の場合はゆっくりと水が土の中に落ちていきます。
また、全面コンクリートの場合も水抜き穴の施工をするため、時間はかかりますが、ゆっくりと水は抜かれていくでしょう。
その点、地上カロートでは内部に水が溜まる心配はありません。ただし外気との気温差で中が湿気ることはよくあります。
カロートの壁面に穴を開けて通風孔取り付けることで空気か内部で循環し、ある程度の予防ができるでしょう。
まとめ
いかがでしたか?
では最後にこの記事のポイントをまとめます。
- カロートは、遺骨を納め、墓石を下支えするとても大切な場所
- カロートは「唐櫃(からうと)」が転じたもの
- カロートは「石棺」や「納骨棺」とも呼ばれる
- カロート付きのお墓は明治以降に見られるようになった
- カロートには、地上と地下の2パターンがある
- 地下カロートには一段式と、棚板を設けた二段式、三段式があり、土に還すこともできる。お墓全体が高くなりすぎないが、その分カロートの中に水がたまりやすい
- 地上カロートは丘カロートも呼ばれ、中で骨壺を収蔵する。背が高くなって掃除が大変だが、水がたまらない
- カロートはコンクリート製と御影石製がある。御影石の方が高いが頑丈。
- カロートの開け閉めは、地上型の場合は扉の開け閉めだけでよい。地下型の場合は石を動かさなければならず、石材店に依頼するのが安全
- 納骨時には開眼供養が必要
- 水のたまりや湿気を予防するには、地上カロートがおすすめ。通風孔などの対策法もある。
監修者コメント
監修者
終活・葬送ソーシャルワーカー
吉川美津子
カロートは納骨室とも呼ばれ、遺骨を納める場所ですから、シンボルとなる石塔よりも大切だという人も多いようです。
建物の場合は、建築基準法に基づいた構造が求められますが、お墓の場合は、形や構造に決まりがなく、建て方についての根拠法もありません。そのため、見た目は立派でも、基礎工事やカロート部分の工事が雑で、カロートを構成しているコンクリートが壊れてしまっているケースも多々みられます。
カロート構造は、地域による違いや霊園による違いがかなり大きく、地下、半地下、地上とあっても内部はかなり異なります。素人ではなかなか違いがわかりませんので、サンプル等があれば見せてもらうとイメージが湧きます。