お彼岸の時期にしてはいけないことはない!よく言われるタブーを紹介
「暑さ寒さも彼岸まで」と言いますが、関東ですでに春一番が吹いたとされ、春の訪れを少しずつ感じるようになりました。来月は早いもので、春のお彼岸です。
彼岸期間中は全国のお寺で彼岸法要が営まれ、多くの人がお仏壇やお墓にお参りをしますが、期間中にしてはいけないことはあるのでしょう。彼岸にまつわるタブーや迷信の真相に迫り、あるべきお彼岸の過ごし方を提案します。
2024年(令和6年) お彼岸の日程
- 春のお彼岸…2024年3月17日(日)~2024年3月23日(土)※中日(春分の日・祝日)2024年3月20日(水)
- 秋のお彼岸…2024年9月19日(木)~2024年9月25日(水)※中日(秋分の日・祝日)2024年9月22日(日)
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この記事の目次
お彼岸の時期にしてはいけないことはない
結論から言うと、「彼岸だからしてはいけない」というものはありません。
そもそも彼岸とは年に2回ある、季節の変わり目に行われる仏教行事のことです。春分の日と秋分の日を中心とした前後7日間、「六波羅蜜(ろくはらみつ)」と呼ばれる6つの修行を通して、煩悩や苦しみに満ちたこちらの世界(此岸)から、悟りの境地(彼岸)を目指します。日本では祖先を仏として祭祀する文化があるため、お寺で行われる彼岸法要と合わせてお仏壇やお墓にお参りしてご先祖様を供養します。
彼岸は修行を通じて私たちの命の大切さを見つめ直す期間のことです。
人のものを盗んだり、誰かを騙したりといったような悪事を働くのはもちろんいけませんが、「お彼岸だからこそしてはいけないこと」というのはないのです。
お彼岸は身を慎む期間ではない
お彼岸にはお寺に行きお墓参りをします。いわば、死者と向き合う期間です。
だからこそ葬儀後の四十九日間のように身を慎まなければならないと考えてしまう人が多いようですが、お彼岸はあくまで自分自身の命と向き合うための修行期間であり、祝い事の全てがダメなのかというとそんなことはありません。
「お彼岸は仏事=祝い事はダメ」と決め付けるのではなく、どういう理由だから避けるべきなのか、どういう理由だからしていいのか、このあたりをきちんと考えて、よりよくお彼岸を過ごしましょう。「してはいけないこと」こそありませんが、「すべきでない」と考えられることはありますので、ひとつずつ検証していきましょう。
よく質問にあがるお彼岸のタブー ホントにしてはいけないの?
巷で言われるお彼岸のタブー。本当にしてはいけないのでしょうか。結婚式、引っ越し、神事、お見舞い、納車の順に見ていきます。
結婚式は挙げてはいけないの?
結婚式は人生でいちばんの祝事だと言えるでしょう。9月のお彼岸は今では「シルバーウィーク」という大型連休で、気候のいいこの時期を挙式日に設定したい人も多いはず。エイチームが運営する結婚式場検索サイト「ハナユメ」の調査によると、挙式を実施した月は11月に次いで9月が2位という結果が出ているほどです。
仏教は彼岸時期の結婚を戒めてはいません。ただし、ゲスト(招待客)のことを考えて、彼岸の結婚式を避けるべきという意見は一定数あります。地域や家庭によっては仏事である彼岸と祝事である結婚式を重ねるべきでないとするところもありますし、お墓参りを年中行事にしているためこの時期に結婚式に招待されることを負担に思う人もいるかもしれません。そうした人たちへの配慮から結婚式を避けるのであれば、その気遣いは尊重されるべきものです。
くりかえしになりますが、仏教はお彼岸の結婚式を否定していません。お彼岸に結婚式をするのであれば、むしろ前日や当日の朝に両家のお仏壇やお墓にお参りして、報告と感謝を伝えてみてはいかがでしょうか。ご先祖さまにとっても、かわいい子孫の結婚は喜ばしいことだと思われます。
引っ越しはしてはいけないの?
引っ越しは大変慌ただしく、心身のバランスが崩れてしまいがちです。彼岸の本来の意味(心を落ち着けて仏さまやご先祖さまに向き合う)から考えると、お彼岸の引っ越しは控えた方がいいのかもしれません。しかし、仏教はお彼岸の引っ越しを咎めていません。実際に引っ越し業者によると彼岸時期は春も秋も大変混雑するらしく、特に春は年度末ですから、現実的には彼岸だからなどと言ってられない状況でしょう。
神事を行ってはいけないの?
「神様は祝事、仏教は弔事」という先入観から、お彼岸に神事をしてはいけないと考える人がいるようです。しかし、伊勢神宮では毎年春分の日に「春季皇霊祭遙拝」と「御園祭」が、秋分の日に「秋季皇霊祭遙拝」が行われますし、もともとは神道と仏教は習合していたこともあり、いまでも神道家もお彼岸にご先祖様にお参りをします。また、福井県の無形民俗文化財のように「八幡神社の彼岸祭」というようなものもあります。
病院へのお見舞いに行ってはいけないの?
彼岸は死を連想させるから病院へのお見舞いをさけるべき、という考えた方があります。これも大切なのは相手との関係性や配慮でしょう。あなたがお見舞いに行くことで、相手がそれを気にして病むかどうかです。かしこまった相手であれば避けておくのが無難かもしれません。しかし、家族や友人など気心知れた相手なら、相手の考えや性格を思いやって判断すれば良いでしょう。「お墓参りして、あなたの回復を祈ってたよ」なんていう言葉は場合によっては最高の手土産ではないでしょうか。
新車や中古車の納車はだめなの?
彼岸が「仏事=死」を連想させるために、車の納車を控えるべきと考える人がいるようですが、これも仏教的な根拠はありません。彼岸に納車された車で事故を起こすのであれば、彼岸に買った食材を口にすると食中毒を起こすようなものです。むしろ、お寺にお参りして交通安全の祈願をする、お墓にお参りして新車の購入をご先祖さまに報告して感謝を伝えてみてはいかがでしょうか。
彼岸花を持ち帰ってはいけないとされる理由
最後に根拠のある有名なタブーについて触れておきます。彼岸花です。
毎年秋のお彼岸のころになると田んぼのあぜ道や墓地の土手などから咲く真紅の花。別名「曼珠沙華 (まんじゅしゃげ)」とも呼ばれ、この呼ばれ方は『法華経』にも出てきます。秋彼岸に必ず咲き、お経の中にも出て、その上毒性の強い真っ赤な彼岸花は不吉な花とされています。家に持ち帰ると火事になるという迷信を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。しかし、このタブーには根拠があります。
彼岸花はその強力な毒性ゆえ、逆に生活のさまざまな場面で人々に活用されてきたという側面があります。球根の毒を利用して、農地の畦道や土葬を行っていた墓地に植えたのです。土を掘り返す動物への対策となるためです。田畑や墓地に彼岸花が多いのはそのためです。
しかし、何も知らない子供が無邪気に彼岸花を手に取り、その手を間違えて口にでも入れようなら、たちまち死に至ります。そこで彼岸花の真っ赤な姿を火事になぞらえて、「持ち帰ると火事になる」と戒めたものだと思われます。
まとめ
いかがでしたか? お彼岸は仏さまやご先祖さまと向き合う日。むしろおめでたいことや喜ばしいことを仏さまやご先祖さまとともに分かち合う期間にしてみてはいかがでしょうか。お仏壇に手を合わせてからお出かけする。お墓参りしてから美味しいものを食べに行く。その上で、相手がいることであれば、その人たちへの配慮は忘れないようにしましょう。
亡くなった人を避けるのではなく、亡くなった人とともに過ごすお彼岸をご提案します。
監修者コメント
監修者
終活・葬送ソーシャルワーカー
吉川美津子
秋のお彼岸の時期に咲く曼殊沙華は彼岸花として知られていますが、春のお彼岸時期に咲く花についてはあまり話題になりません。春の彼岸花にあたる花といえば、「彼岸桜」「キンセンカ」という説もありますが、どれほど知られているかは疑問です。
曼殊沙華は、昔からお墓の周囲に植えられることが多かったようです。曼殊沙華には毒がありますが、特に球根には毒が多く、土葬が一般的だったころ、モグラやネズミ除けには最適だったのでしょう。こういった忌み花であることから、仏前に曼殊沙華をお供えするのを避ける傾向もあります。真っ赤な細い花びらが炎を思わせることから、家に持ち込むと火事になるという言い伝えもあります。