寺院墓地の使用料相場は約77万円。檀家料などの費用も必要

和型の一般墓

寺院墓地とは?徹底解説

  • 寺院墓地の使用料は約77万円で、追加で檀家料がかかる。
  • 寺院墓地の利点は信仰に沿った供養と法要の便利さ。
  • 寺院墓地の欠点は檀家料の負担や利用制限があること。
  • 寺院墓地選びは経営状況や将来性を考慮して決めるべき。

日本で墓地といったら、多くの人が寺院墓地をイメージするのではないでしょうか?

昔ながらの葬式や法事などの経験を重ねていくと、慣行として知識は身についていくかもしれません。
しかし、寺院墓地や墓地の種類など細かい点まで理解している人はあまりいないでしょう。

今回は、寺院墓地のメリットやデメリット、墓地の種類などについて解説いたします。
また、永代供養や永代使用料の相場についてもみていきましょう。

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寺院墓地の定義

寺院墓地とは寺院が檀家のために貸し出す墓地のことを指します。一般的には寺院の敷地内にあることが多く、寺院の檀家になっている人が墓地を借りるという形式です。株式会社に例えるなら、寺院が株式会社で檀家が株主になります。檀家がお金を出し合って寺院を支えていくというシステムです。

ただし、寺院によって檀家の料金は異なります。寺院のなかには敷地内だけでなく、郊外などに墓所を保有しているところもあります。日本は無宗教が多いといわれていますが、寺院墓地の場合は宗旨や宗派が異なると利用できない先もあるのです。

日本の寺院の主な宗派

日本の寺院の宗派は160以上ともいわれています。ここでは、その中でも主な宗派についてみていきましょう。

天台宗

天台宗は『伝教大師最澄』によって806年に開かれた宗派です。一乗止観院(いちじょうしかんいん)と呼ばれた寺院は、最澄の死後に比叡山延暦寺として天台宗の総本山となります。

真言宗

真言宗だけでも宗派が18種類あるといわれています。有名なのは高野山真言宗です。「弘法も筆の誤り」ということわざでも知られる『弘法大師空海』が平安時代初期に大成したといわれています。

浄土宗

1175年に『法然上人』が開宗したのが浄土宗です。本尊を阿弥陀仏阿弥陀如来としており、南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)という言葉で知っている人も多いでしょう。総本山は京都市東山区にある知恩院です。

真宗

本尊を阿弥陀如来とする真宗大谷派は『親鸞聖人』が開宗しました。総本山は東本願寺です。

日蓮宗

法華経で知られる日蓮宗は『日蓮聖人』によって開かれた宗派です。総本山は身延山久遠寺で、何妙法蓮華経(なむみょうほうれんげきょう)でも知られています。

寺院墓地といっても宗派はたくさんあるのが理解できたのではないでしょうか。ここでは、寺院墓地についての概要をお伝えしました。

寺院墓地の2つのメリットと3つのデメリット

寺院墓地は上述したように檀家のための墓地です。つまり、利用するためには最低限檀家になる必要があるともいえます。ここでは、寺院墓地を選択した場合のメリットとデメリットについて考えてみましょう。

寺院墓地のメリット

寺院墓地は大きく分けて2つのメリットがあります。ここでは、「供養」「法要」という側面から寺院墓地を利用するメリットについてみていきましょう。

安心して供養してもらうことができる

自分の信仰にあった供養方法で丁寧に僧侶の回向が行ってもらえます。寺院墓地も寺院が管理をしているため、安心して利用することができる点はメリットです。

法要の際、寺院を活用できる

寺院で法要を行い、そのまま寺院墓地でお墓参りすることもしやすくスムーズでしょう。一連の流れは僧侶にお任せできるため、従来の葬儀や法要を仏式で行いたい場合にはメリットになります。

寺院墓地のデメリット

寺院墓地には3つのデメリットもあります。一番大きな負担を感じるのは経済的な問題かもしれません。なぜなら、寺院墓地を利用する場合は寺院を支える存在となる檀家になる必要があるからです。3つのデメリットについて詳しくみていきましょう。

檀家料など費用負担が増える

寺院墓地の檀家料や永代使用料など、定期的な費用が増えます。経済的負担がネックになる人の場合はより一層デメリットになるでしょう。そのほかにも、お布施や寄付など寺院維持のために経済的負担が増えがちです。

石材店が指定されている可能性が高い

寺院が指定している石材店以外は利用できない可能性があります。寺院墓地を借りて墓石を建立しようと思っても、墓石価格を比較して行うことは難しいでしょう。指定の石材店に自分が希望する石材がないという可能性も十分あります。

寺院の継承している宗派で法要が行われる

近年は宗派を問わないという寺院も増えてきていますが、法要などを行う際はその寺院の継承している宗派で執り行われます。寺院墓地の宗派と自分が行って欲しい供養の宗派が異なる場合は、大きなデメ リットになるでしょう。

墓地の種類は大きく分けて3種類

寺院墓地のほかにも、大きく分けて「民営」「公営」の2種類の墓地があります。

墓地の種類

経営法人

管理者

寺院墓地

宗教法人

寺院

民営の墓地

宗教法人など

民間企業など

公営の墓地

自治体

自治体

民営の墓地

宗教法人などから委託を受けた民間企業が管理や運営を行っている墓地です。一般的には広い敷地内でオリジナルの特色を持ったサービスを提供しています。

宗旨・宗派を問われないことが多く、利用制限も少ない傾向です。寺院墓地のように石材店が指定されている場合と、自由に石材店を選べる場合がありますので確認が必要といえます。一般的な墓地のイメージよりも明るく、整備にお金をかけていることも特徴の一つです。

公営の墓地

自治体が主体となって管理・運営している墓地です。利用するためには公募に申し込む必要があり、申込者が多い場合は抽選に当選しないと墓地を利用することができません。

また、公募へ申し込むためには「運営する自治体に住んでいること」「遺骨が手元にあること」など、自治体によって条件が異なります。

寺院墓地や民間墓地と異なり、石材店の指定がなく自分で自由に選択できることが特徴です。また、「宗旨・宗派は問われないこと」「自治体が運営するので安心なこと」もメリットといえます。

公営の墓地について詳しく知りたい方は【公営墓地とは?寺院や民営とは違う、費用や申込方法を解説!】をご覧ください。

寺院墓地にお墓を建てる流れ

寺院墓地にお墓を建立したい場合は、どのような手順で進めていくのが良いのでしょうか。地域によっては寺院墓地に空きが少ないということも珍しくありません。情報をうまく取り入れながら、自分の希望する宗旨や宗派の寺院墓地を探してみましょう。

希望する地域の石材店で聞き込み

自分が希望する寺院墓地の近隣にある石材店で、空き情報を聞き取りすることがおすすめです。石材店は商売柄、寺院への出入りをしていることが多く豊富な情報を持っている可能性が高いからです。

なかには、自社で墓石をつくってもらうために墓地を探してくれるような石材店もあるかもしれません。寺院を1件ずつ訪ねることも悪くありませんが、効率を考えると石材店へ問い合わせてみたり、足を運んでみたりする方が良いでしょう。

檀家になる

寺院に目星がついたら、直接寺院へ交渉しに行きましょう。寺院墓地を利用するには永代使用料を支払い、その寺院の檀家になる必要があります。寺院によっては、毎月檀家料があるなど内容はさまざまです。不明瞭な点は寺院へ1年間でどの程度の費用がかかるのかについて質問してみると良いでしょう。

指定の石材店へ墓石を依頼する

寺院墓地は墓石を建立する場合、特定の石材店を利用しているケースが多いです。その場合は、指定以外の石材店に墓石を依頼することはできませんので注意しましょう。

永代使用料と永代供養料の違い

永代使用料とは、墓地の利用をしている間は期限を設けずに利用するための料金のことです。寺院や霊園に永代使用料を支払うと、利用者は永代使用権を得ることになります。

墓地を利用する際は必ず支払う費用です。似たような言葉で永代供養料がありますが、これは永代使用料とどのように違うのでしょうか。永代供養料とは納骨堂や合祀墓など永代供養をするためのお墓に納骨するときに支払う料金です。

永代供養という言葉に定義はないのですが、供養という言葉は仏教用語で供給資養の略。弔いを目的とした法要を永代にわたってしてくれるという意味になります。ただ、一般的に多いのは、33回忌までです。

名称

意味

期限・注意点

永代使用料

・墓地を使用するに当たって寺院や霊園に支払う費用

・期限は設けていない

・墓地の引っ越しをする場合は返金はされない

永代使用権

・寺院や霊園と墓地使用契約を結ぶことで、墓地を利用することができる権利

・期限は設けていない

永代供養料

・納骨堂や樹木葬、合祀墓など申込時に永代供養をお願いするための費用

・一般的に期限は33回忌までの供養としているところが多い

寺院墓地の永代使用料相場は約77万円

2015年調査)墓地を永代にわたって利用する権利を得られるわけですが、経済的負担はかなり重い金額といえます。主要な都道府県別の永代使用料についてもみてみましょう。 

主要都道府県別の永代使用料の平均相場

都道府県名

永代使用料平均相場

東京都

119万円

神奈川県

79万円

千葉県

62万円

埼玉県

70万円

愛知県

58万円

大阪府

78万円

京都府

107万円

兵庫県

79万円

広島県

95万円

福岡県

65万円

都道府県別でみると圧倒的に永代使用料が高いのは東京都の約119万円です。関西地区では、京都府が約107万円と100万円を超えています。東日本全体の平均相場は約77万3,900円、西日本全体では約77万4,000円となっており、あまり差がない傾向です。

檀家をやめても永代使用料は基本的に返還されない

永代使用料は墓地を利用するために支払ったものですが、檀家をやめたとしても返還はされません。法律上、墓地は寺院や霊園などから土地を借りて利用しています。

そのため、例えば墓石の引っ越し(改葬)をする場合などは、墓石が建っていた墓地を更地にして返還する必要があるのです。使っていた土地を返還するのだから、なんとなく永代使用料は戻ってきそうな気がしてしまうのですが、基本的には戻ってきませんので注意しましょう。

寺院墓地にお墓を建てる前に押さえておきたい2つのポイント

安心してお墓の管理や法要などを任せられる寺院墓地ですが、明確に定義されていない内容も多いためお墓を建てる前には必ず2つのポイントも押さえておきましょう。

さまざまな問題を内包している檀家制度

墓離れが増えてきている現代において、檀家制度は成り立たなくなっている寺院も非常に多いです。過疎化が進んでいるような地域の寺院などは人口の減少に伴い、檀家が寺院を支えきれないということも珍しくありません。

寺院を維持するために、寄付やお布施、檀家料などの負担が重くなるだけでなく、檀家が減少している寺院などは離断料を請求するケースもあります。

長い付き合いになるはずと思って寺院墓地にしても、承継する子どもの世代では管理や費用の問題で離壇をするというケースもあるのです。

僧侶の高齢化と後継者不足も問題

宗旨・宗派などがぴったりの寺院が見つかっても、僧侶の高齢化や後継者問題で先行きが不透明な場合もあります。寺院の後継者がおらず、僧侶が高齢化していけば寺院の運営にも支障が出てくるでしょう。

寺院墓地は大きなメリットがある反面、時代の流れを考えると先行きがわからないというデメリットも理解したうえで、検討した方が賢明です。

寺院墓地は長い付き合いになるからこそ慎重に選ぼう

寺院墓地を選択することで手厚い供養を受けられることや、管理を任せられることは大きなメリットです。しかし、寺院墓地のシステムを良く理解していないとデメリットにも気がつくにいといえます。

墓地の種類には「寺院」「民営」「公営」の3種類があります。運営や管理が各々異なることが特徴です。 

墓地の種類

運営

管理者

寺院墓地

宗教法人

寺院

民営の墓地

宗教法人など

民間企業など

公営の墓地

自治体

自治体

  • 永代使用料は墓地の使用権利を購入するための費用
  • 永代供養料は合祀墓や納骨堂など、33回忌程度までの供養を依頼するための費用
  • 寺院墓地を利用するには檀家になる必要がある
  • 寺院墓地は法要や葬儀などを任せられることがメリット
  • 寺院墓地は檀家料など経済的負担が重くなりがち
  • 寺院墓地を選ぶと墓石の制限や指定の石材店しか利用できない可能性がある
  • 寺院墓地の永代使用料の全国平均相場は約77万円
  • 永代使用料は離檀しても返還されない
  • 寺院墓地を選ぶ際は経営状態までチェックした方が無難
  • 「後継者がいるか」「離壇する人が多くないか」などまで聞き取りしてみる

寺院墓地を選定するときは、自分だけの考えだけでなくお墓を承継する子どもの世代のことまで考えることは重要です。そのためには、しっかりと親子間でお墓についての価値観や知識を深めることが大切になってきます。

監修者コメント

監修者
終活・葬送ソーシャルワーカー
吉川美津子

寺院墓地となると、「檀家にならなければならいない」「寄付金をとられる」「住職と合わないと大変」など、マイナスイメージを持つ人も少なからずいます。
たしかにお付き合いが大変な寺院もありますが、全国に寺院は7万ケ寺以上ありますから、さまざまなタイプの寺院があるのも当然でしょう。

寺院墓地の最大のメリットは、「日常的にそこが供養の空間として完成されている」ことでしょうか。日々勤行があり、多くの人がお墓参りにやってきます。
少なくともその宗旨・宗派の考え方と明らかに異なるという人はいませんので、信仰の違いから発生するトラブルになることもないでしょう。

「足腰が悪くなってお墓参りに行くことが難しくなった。しかしお寺がお墓を守ってくれているので安心」という声もあります。