お墓の意味や役割を考える!お墓は”つながりの交差点”

供花が供えられている慰霊碑

お墓の意味とは?徹底解説

  • お墓は故人との絆を感じる供養と祈りの場。
  • 石製のお墓は世代を超えた供養に適している。
  • お墓は死者と生者、家族の絆をつなぐ交差点。
  • お墓建立は墓地取得から開眼供養までの流れを把握。

葬儀を終えると、何も考えずに遺骨をお墓に埋葬しようとします。
しかし、その意味や役割について深く考えたことはありますか?

新しい供養の方法として、樹木葬や納骨堂や散骨なども登場していますが、それでも大多数の人が、いまでもお墓への埋葬をしています。

今回はお墓の成り立ちや役割、その存在の意味についてまとめています。
稚拙な文章ですが、お墓の力を信じる人間が、その必要性について綴らせていただきました。

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この記事の目次

  1. お墓は「ご先祖様に出会い、語りかける場所」
  2. お墓を建てる目的~ お墓は”つながりの交差点” ~
  3. お墓の歴史
  4. 薄れていく宗教観とお墓
  5. お墓について考えることは家族のこれからを考えること
  6. 一般的なお墓以外の選択肢
  7. 一般的なお墓を建てる流れ
  8. お墓を建てるときに考えるべきこと
  9. まとめ
  10. 監修者コメント

お墓は「ご先祖様に出会い、語りかける場所」

お墓は亡くなった人を埋葬する場所なのですが、同時に私たちの祈りの場所でもあります。

みなさんは、お墓の前に立ち、墓石に向かって何を語りかけますか?

お経を読む人もいるでしょう。「元気にしてますか?」と亡き人に語りかける人もいるでしょう。
家族みんなの近況を報告する人もいるでしょう。悩みや愚痴をこぼす人もいるでしょう。
就職や結婚や独立など、決意を表しに行く人もいるでしょう。誰かの病気を助けてほしいと、救いを求める人もいるでしょう。

もちろん、何も考えずに当たり前のようにお参りする人もいるでしょう。

私たちはお墓に行くことで、自分たちのご先祖様に会いに、そして語りかけるということをしているのです。

「お墓全般」について、「お墓参り」について詳しく知りたい人は、下記の記事も参考にしてください。

お墓を建てる2つの意味~1.死者の冥福を祈り 2.自分たちの幸せを祈る~

お墓には2つの役割があります。それぞれを解説してみます。

1つ目は死者の冥福を祈る対象としての役割

お墓は亡くなった人を土の中に埋め、その上に石碑(仏塔)を建てます。そして家族は、死者の供養のためにお墓参りをします。

2つ目は生きている人たちの祈りの場としての役割

人が亡くなってから年月が経つと、死別の悲しみも和らいできますし、世代が下ることで、死者はどんどん供養さお墓には2つの役割があります。するとお墓は、供養の場だけではなく、生きている自分たちの祈りの場にもなるのです。

近畿地方では、今は見られませんが、昔は遺体の埋葬地としての「埋め墓」と、家族がお墓参りするための「参り墓」を分けていました。
これを民俗学の世界では"両墓制”と呼びます。お墓の果たす役割を端的に表しています

どうしてお墓は石なのか

「どうしてお墓は石じゃないとダメなのですか?」と、よく聞かれます。

木やガラスではダメなのか。これは、この地球上の自然物で、石が一番固くて、風化に強いとされてるからです。

世代をまたいで、1つの供養塔を共有するためには、石しかないのです。
死の問題というのは、とても巨大で、深いものです。
人の一生の問題を、個人で解決するには、あまりにも深い問題なのです。

人がひとり亡くなると、遺された人は激しい動揺を強いられ、中には体調を崩す人もいるでしょう。
死を受け入れられる人もいれば、受け入れきれない人もいます。

人間という小さな存在では対処しきれない死の問題を、より大きな存在に預けなければやっていられない。
その「大きな存在」こそが、いわゆる「神仏」です。
人類が”宗教”を生み出した理由は、ここにあるでしょう。

そして、日本の場合、神仏は私たちの祖先です。
日本人は、死者を49日でホトケにして33年でカミにする、という死生観を持っています。
この先祖という縦関係をつないでいくために、礼拝の対象として石を用いたのです。

墓石の付属品や墓地に込められた意味

それでは、墓石の付属品に込められて意味や役割を見ていきましょう。

石塔は仏や先祖そのもの

石塔は仏や先祖そのものです。

面白いもので、みなさん亡くなった人のお墓参りで、土の中に向かって手を合わさないですよね?
石塔の軸石(仏石)を見て、手を合わし、祈りますよね?
それは、石塔の中に仏や先祖がいると、無意識に捉えているからなのです。

墓標(霊標)は先祖の名前を刻むもの

墓標(霊標)とは、石塔の横に据えられる、先祖の名前が刻まれた板石のことです。
もともと戒名や死者の名前は仏石の正面に彫刻していました。
これが、仏石の横面に彫刻するようになりました。

時代が下ると、新たな死者の名前を刻むスペースがなくなり、霊標が普及したのです。

外柵は境界をはっきり示すもの

外柵は境界を表すものです。墓域内を聖域とし、その内外を物理的に、象徴的に表すものです。

灯篭は神聖な火を灯すもの

灯篭では火を灯し、墓域全体を神聖な場所にします。
仏教でも神道でも、火は神聖なものです。

墓前灯篭には、火の力で死者を迷わずに導くや、邪気を払うなどの意味があるとされています。

天水受

天水受(てんすいうけ)とは、寺院の雨といの下に置く雨水を受ける器のことです。
上空から降り注ぐ雨は寺院の屋根を伝って「天水」としてしたたり落ちます。

仏教寺院では、天水受を据えて、空からの雨を大切なものとして考えました。
石製の天水受を多く見かけますが、鋳物製品もあります。

お地蔵

お墓に置かれるお地蔵さんのほとんどは、水子地蔵です。
この世の光を見ずに亡くなってしまった命や幼児は、水子地蔵で供養します。

お墓を建てる目的~ お墓は”つながりの交差点” ~

お墓は、死者や先祖という縦のつながりと、家族や親戚という横のつながりが交錯する場所です。
いわば、”つながりの交差点”ではないでしょうか?

埋葬と供養をすることで死者とつながっていられる

お墓では、遺骨の埋葬し、先祖を供養します。
亡くなった人の遺骨を自然に還すにはいろいろな方法があります。
最近でこそ樹木葬や散骨などの方法が注目されていますが、これらも圧倒的に少数派です。

日本人は、遺骨を土に還すことで、まず安心感を覚えるようです。
そして、ただ土に還すのではなく、亡き人を偲ぶための礼拝の場として、お墓を建てたのです。
亡くなったあとも、その人とのつながりを大切にするのが、日本人の古くからの慣習です。

お墓参りすることで、家族や親戚とつながっていられる

お墓のおもしろい所は、野外にあるので、だれでも好きな時にお参りができることではないでしょうか。
その家の固有のものですが、お参りは自由。ある意味公共財なのです。
故人とつながりのあった親戚や、友人知人も、お墓参りの権利は誰にでもあります。

また、お墓参りのために年に一度は必ず帰郷するという人もたくさんいるでしょう。
そこでは家族や親戚が久しぶりに再会して、いろいろな話で盛り上がります。
こうした、”横のつながり”をも、お墓は支えてくれているのです。

お墓の歴史

死者供養として石塔が用いられるようになったのは鎌倉時代からと言われています。
ただし、古代の葬法である「もがり」でも、石棺や石垣を用いているので、石の使用そのものはもっと古くから行われていたでしょう。

鎌倉時代の石塔文化

鎌倉時代のお墓は五輪塔が主流です。
叡尊や忍性といった僧侶が率いた石工集団が作った石塔は、いまでも日本中のいたるところで見ることができます。

さらに、日本の諸国を遍歴した無名の僧である”聖(ひじり)”たちが、手で持てるほどの小さな五輪塔(一石五輪塔)を庶民に広めて、死者供養をしたとも言われています。

江戸時代に庶民にもお墓が普及する

お墓が庶民にも普及しだしたのは江戸時代からと言われています。
理由はいくつか考えられます。

  • 戦国時代が終わり、世の中が安泰となり、庶民全体の経済力が向上した
  • 石材の流通力や石材加工の技術が向上した
  • 檀家制度の強制化によるイエ制度の確立

戦後の「墓埋法」から、今のお墓の形が整備される

江戸時代からの埋葬文化は明治時代に入っても続いていくのですが、戦後に制定された「墓地、埋葬などに関する法律」(いわゆる「墓埋法」)により、埋葬に対しての本格的な法規制が敷かれます。

それまでお墓や墓地は、それぞれの村(いまの自治会レベル)で行われてきました。
村はずれには必ずその村の墓地があったものです。

あるいは寺院の境内にお墓を建てていたので、これはお寺の管理になります。

「墓埋法」の制定からは、新たな墓地の運営は、地方自治体と、公益法人と、宗教法人に限定されるようになり、こうしていまの形の墓地やお墓の姿が見えるようになったのです。

薄れていく宗教観とお墓

「寺離れ」や「墓じまい」という言葉をよく聞きます。
宗教観が薄れ、お墓不要論が叫ばれているその現状を見つめなおしてみましょう。

戦後の経済発展が、死を遠くに追いやった

敗戦によって焼け野原となった日本にとって、経済発展は至上命題でした。
つまり社会全体として、産んで、育てて、働いて、稼いで、食べなければならなかったのです。

生み出すこと、増やすことが価値としてもてはやされたため、死ぬことや減ることは顧みられないようになりました。
都市では労働力を必要としたので、集団就職で、多くの若者が田舎から都会に出ていきました。

こうして、地方の共同体は崩壊していきます。
お寺やお墓は土地に根差すものです。
先祖のつながりは、そこに生きた土地こそが大切だったのです。

一方、都会に出て長い年月が経った人たち、その子や孫には、生活の周辺にお寺やお墓がありません。
こうして、私たちの生活の周りから死や宗教が消えていったのです。

”死後の世界”を信じられない人が多い時代

宗教というのは、”死後の世界”が信じられて初めて成立します。
というのも、死への怖れを受けとめるものとして、世界中の人々が、独自の死後の世界という物語を編んでいったのが、宗教の始まりだからです。

テクノロジーが高度に進化し、さまざまなメディア(テレビ、ネット、書籍など)でいろいろな物語(漫画、アニメ、小説、映画、演劇など)が語られる昨今、宗教者の言葉が響かなくなっているという側面もあります。

伝統的に宗教が語ってきた”死後の世界”が信じられなくなっているのです。

江戸時代の甘い汁を吸い続ける寺院の怠慢

すべてのお寺ではありませんが、江戸時代に確立された檀家制度が、いまの寺院にも根強く残っています。
住職は特権階級ですし、なんだかんだ言って、檀家はなんとかお金を工面して高額なお布施を包むものです。

世の中がどんどんアップデートされているというのに対して、寺院側のアップデートは極めて緩慢です。
こうした寺院に対して、人々が信頼できなくなっています。

それでも、これからの社会には寺院とお墓が必要

それでも、寺院とお墓の力が、これからの社会には絶対に必要だと、筆者は考えます。
人々は生産社会の限界を知っています。

働くだけが価値ではないし、いつか人は死ぬのだということも分かり始めています。
昨今の終活ブームがまさにそれを物語っています。

精神の安定や、カウンセリングの場として、あるいはコミュニティの中心として寺院が果たせる役割はとても大きいでしょう。

また、さまざまなモノ・コト・ヒトが軽々と行き交う時代だからこそ、重みのあるお墓の価値が高まって来るでしょう。
自分たちがこの世に生まれてきた意味、帰る場所として、お墓の必要性は必ず再認識されるはずです。

東日本大震災で、津波に流された墓石を必死に探している被災者の姿に、いかに日本人は先祖を、遺骨を、そしてお墓を大切にしてきたかを痛感します。
寺院やお墓には、私たちを幸せにし、社会をいい方向に導いてくれる力があります。

ただし、新しい時代にあわせたアップデートが、必要不可欠です。

お墓について考えることは家族のこれからを考えること

お墓は、家族のシンボルです。
私たちは、両親から生まれ、そのつながりは祖父母や先祖へと続いていきます。
自分たちが立ち返る場所こそがお墓ですし、家族がつながれる場所がお墓です。

先祖という縦の関係が感じられないというのは、自身の幸福度にもつながるでしょう。
なぜならば、先祖関係の最前線にこそ、今の自分がいるからです。

亡き人や先祖を手厚く供養するということは、自分自身の、そして家族の存在をも手厚くすることにつながるのではないでしょうか。

一般的なお墓以外の選択肢

時代が平成に入ると、お墓以外のさまざまな選択肢も注目を浴びています。

合祀墓・合葬墓

跡取りがいない、墓守ができない人たちが、遺骨を合祀墓や合葬墓に納めます。
他の人と同じ場所に埋葬します。

納骨堂

建物の中に設けられた納骨施設です。
土地不足という問題を解消してくれますし、天候に左右されずにお参りできます。

樹木葬

礼拝の対象を樹木としたお墓です。
墓石の建立が不要です。
都営霊園でも実施しており、注目を集めています。

散骨

海や山や川に遺骨を撒く方法です。
法的にもグレーで、日本人の宗教感情から、地域住民などから苦情が出ているケースもあります。
主に、海洋散骨が主流のようです。

一般的なお墓を建てる流れ

お墓を建てる流れは次のようになります。

  1. 墓地を取得する
    墓地には、公営墓地・民営墓地・寺院墓地・共同墓地があります。
    墓地は、その家族に世代を超えてお参りする場所となるので、慎重に、納得いく場所を選びましょう。
  2. 石材店との契約
    墓地が決まれば石材店と契約します。
    指定業者がある場合は、その業者と打合せします。
    なければ、いくつかの石材店を見てまわるのがいいでしょう。
  3. 石材店による工事
    現地にて石材店が工事をします。
    契約から完成まで、2~3か月くらいでしょう。
  4. 寺院による開眼供養
    墓石が完成したら、寺院に開眼供養をしてもらいましょう。
    これによって、墓石はその家のお墓となります。

お墓を建てるときに考えるべきこと

筆者がみなさまにお伝えしたいのは、「お墓参りしたくなるお墓」を建てましょうということです。

そのためには、納得する墓地で、気に入った形のお墓が理想です。
もちろん、立地や、宗教や、予算などのさまざまな条件があるので、すべてを叶えることは難しいでしょう。

しかし、どこか「気になる」点があると、心を込めてお参りができません。

「あの時、ああしとけばよかった」といった、後悔がないお墓づくりが望ましいですね。背伸びをしない、自分たちらしいお墓。

お墓の価値は、大きさや金額だけでは決まりません。
「先祖のためにこれだけしてあげた」という納得があれば充分です。100万円しか工面できない人もいれば、1000万円用意できる人もいるでしょう。

大事なのはそうした比較ではなく、”自分の中での精一杯”です。
きっとその精一杯の想いは、故人様に、ご先祖様に伝わるでしょう。そして、お墓参りに行くことです。

いいお墓とは、お墓参りされるお墓だと、筆者は断言します。

まとめ

いかがでしたか?お墓を建てることについての意味、目的などをご理解いただけたでしょうか。

お墓が大好きな人間が書いた記事なので、少し偏りがあったかもしれません。

でも、お墓参りの楽しさ、ありがたさを知っています。みなさまも、早速ご先祖様のお墓参りをしてみてはいかがですか?


監修者コメント

監修者
終活・葬送ソーシャルワーカー
吉川美津子

死者が納められてい場所をお墓といいますが、地域いによっては「サンマイ」「ラントウバ」と言われることもあります。

庶民の間で石塔が死者供養のシンボルとなったのは、江戸時代中期以降のことで、幕末には一般化します。それまでは目印に石を置いたり木を墓標として挿した程度だったとも言われています。

江戸時代に中期には、石問屋をはじめとする流通機構が整備されたのに伴い、広域に流通する石材が出現しました。
お墓の場所は集落内の田畑の中や、少し離れた山の奥、海沿いなどさまざま。
屋敷墓といわれ、広大な屋敷の敷地内に墓地があるケースもありました。お墓の形式は変わっても、死者を葬り弔うという作業はいつの時代にも行われています。

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