大切なペットを安心して供養したい!ペット霊園のトラブル事例と対策
ペット霊園のトラブルとは?徹底解説
- ペットの遺体は自宅埋葬、行政処分、霊園埋葬の3方法がある。
- 霊園トラブルには高額請求や遺骨問題があり、規制が少ないため起こりやすい。
- トラブル防止には業者確認、費用明細、契約慎重、実績・口コミチェックが大切。
- 自宅埋葬は配慮が必要で、引越し困難になる恐れがあるため、霊園供養が望ましい。
筆者の家でも15歳になる猫を飼っています。家族同然です。
息を引き取るのは時間の問題で、葬儀や埋葬について考えなければならないのですが、調べれば調べるほど、ペット供養の業界のトラブルの多さ、倫理観の低さには唖然としてしまいます。
この記事では、なぜペット葬儀やペット霊園の現場でトラブルが絶えないのか。
そのうえで、どうすれば大切なペットを安心して供養できるか、その方法について考えます。
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この記事の目次
ペットの火葬や埋葬 3つの方法
ペット葬儀やペット霊園のトラブルを見ていく上で、まずはいま現在(平成30年10月)、亡くなったペットの遺体の取り扱いについて、どのような方法があるのかを確認しておきましょう。
ペットの火葬や埋葬3つの方法
- 飼い主自らが処理(自己所有地への埋葬など)
ペットの埋葬に関しては法規制がありません。
ペットの遺体は法的には「廃棄物」に分類されるために、自己所有地(自宅の庭)などに埋葬しても構いません。 - 行政による殺処分
飼い主が地方公共団体(保健所など)に連絡して処分を依頼します。 - ペット霊園や寺院等への埋葬
ペットの火葬や埋葬を受け付けてくれている業者や寺院に依頼します。
霊園内だけではない!実際にあったペット葬儀のトラブル
大切にされていたペットが亡くなってしまったら、大切に供養してあげたいと思うものです。
ペットも家族の一員として考えられるようになってきたのに合わせて、きちんと葬儀をしてあげよう、供養をしてあげようと考える人が増えてきました。
平成22年に内閣府が行った「動物愛護に関する世論調査」では、飼っている犬や猫が亡くなった場合、死体の処理を葬祭業者に依頼しようと思うと答えた人は62.2%にものぼりました。
しかし、業者と利用者の間でのトラブルはあとを絶たず、さまざまなメディアでも取り上げられています。
ペット葬儀や霊園の経営には運営資格が不要のため、さまざまな業者が新規参入しています。
ペット供養業界が発展途上期にあるため、業界全体のレベルはまだまだ低いと言わざるを得ないのかもしれません。
どのようなトラブルが起きているのかをまとめました。
事前見積もりよりも高額な請求
ペット葬儀のトラブルで一番多いのが高額な請求です。
家族同様のペットの最期はきちんと見送ってあげたいものです。
自治体の火葬場などでも動物火葬は受け入れてくれるのですが、淡白な対応に満足できない多くの人が民間業者に依頼します。
良心的で誠実な業者ももちろんたくさんありますが、一部の悪徳業者は火葬炉に遺体を納めて、あともどりができなくなったところから交渉を始めて、高額な金額を請求します。
もしも支払いに応じなかったら、「火葬を中断する」「遺骨を返さない」「生焼けのまま返す」などと脅されるため、施主はやむなく法外な費用を支払わざるを得なくなってしまうのです。
異なるペットの遺骨が返される
預けたはずのペットとは別の遺骨が返されるということが実際に起こってしまいました。
2010年に埼玉県三芳町の元町議でペット葬祭業の男が逮捕されました。
飼い主から預かった遺骨を山の中に不法投棄して、別の骨を飼い主に返していたのです。
男は広告には「火葬炉完備」とうたっておきながら、実際には保有していませんでした。
火葬炉を完備するためには多額な設備投資が必要なのですが、それを節約するために行ったと供述しています。
突然の閉園・倒産
経営不振に陥り、そのまま閉園、倒産してしまったペット霊園があります。
大阪府枚方市のとあるペット霊園が2017年1月を持って閉園したのですが、その対応があまりにもずさんで、物議をかもしています。
通知は園内入り口の貼り紙だけで利用者への通知はなかったようです。
また墓標は打ち壊されて、埋葬地の土も掘り返されて遺骨がむき出しの状態だったそうです。
異臭騒ぎ
異臭騒ぎが近隣住民との間にトラブルを引き起こしかねません。
ペット葬儀やペット霊園には明確な法規制がないために、住宅地にペット葬儀場を建設するケースが見られます。
また、移動火葬車を用いた訪問火葬の場合、飼い主の家の前やその近くに車を停めて火葬することで、近隣住民に迷惑がかかることもあります。
ペット霊園のトラブルは運営資格不要に原因がある
すべてのペット葬儀社やペット霊園がトラブルを起こしているわけではありません。
まじめに、誠実に経営されているところがほとんどです。
そして、トラブルそのものはどの業界にもつきものです。
しかし、ペット供養業界のトラブルは、その倫理観の低さに唖然としてしまいます。
なぜこのようなトラブルが多発しているのでしょうか。原因を見ていきましょう。
新規参入がしやすい
ペット葬儀や霊園に関しては法規制がない状態です。
ですから、誰でも気軽に新規参入できるという側面があります。
動物の遺体は法律上は「廃棄物」に分類されるため、家の庭などに埋めても構わないことになっています。
土地を持っているのであれば、誰もがペット霊園を開業できるのです。
ペットを預かって火葬をするだけだからと、簡単な気持ちで開業してみたら、思いのほか費用がかかってしまう。
そのため粗雑な火葬炉やずさんな対応をして経費を落として利益を上げようとする。
ここにトラブル発生の共通点があるように思えます。
火葬炉施設などを持っていれば誰でもできて儲かる、という錯覚
「誰でもできる」「儲かる」というイメージがペット葬儀への新規参入を後押ししています。
ペット用の火葬炉の価格は数百万円です。
車載用であれば100万円〜500万円。設置式であれば500万円~1000万円くらいだと言われています。
移動火葬の相場は5万円前後と言われていますから、仮に500万円の設備投資であれば、100件の火葬を請け負えば減価償却できる計算になります。
最低100件の集客は決して楽なものではありませんが、ここの見通しの甘い業者は、高額請求をして帳尻を合わせていくのでしょう。
また、メンテナンスなどに費用をかけられないため、火葬炉の管理もずさんになっていくものと思われます。
ペットの葬儀や埋葬に関する法律はない
人の葬儀や埋葬に関しては「墓地、埋葬等に関する法律」で規定されていますが、動物に関しては対象外です。
動物に関する法律にはどのようなものがあるのでしょうか。
「動物愛護管理法」
動物に関する法律には「動物愛護管理法」がありますが、ここでも動物の葬儀や埋葬についての条文は抽象的です。
基本原則として、「動物がいのちあることにかんがみ」るとしているのですが(第2条)、動物の死体を見つけた時のすべき行動として、次のように示しています。
第36条 道路、公園、広場その他の公共の場所において、疾病にかかり、若しくは負傷した犬、猫等の動物又は犬、猫等の動物の死体を発見した者は、速やかに、その所有者が判明しているときは所有者に、その所有者が判明しないときは都道府県知事等に通報するように努めなければならない。
2 都道府県等は、前項の規定による通報があつたときは、その動物又はその動物の死体を収容しなければならない。
ちなみに、第10条では動物取扱業で規制を受ける業態が示されているのですが、葬儀や霊園に関しては明文化されていません。
「動物愛護法」で定められた規制を受ける業態
- 販売(ペットショップのような小売業者、卸業者、繁殖業者、輸入業者など)
- 保管(ペットホテル、美容業者、ペットシッター)
- 貸出(ペットレンタル、撮影などの動物派遣業)
- 訓練(訓練・調教業者)
- 展示(動物園・水族館・サーカス・乗馬施設など)
「廃棄物処理法」
かわいそうに聞こえるのですが、動物やペットの死体は、法律上は「廃棄物」として扱われます(第2条第1項)。
つまり、一般ゴミと同じ扱いなのです。「廃棄物処理法」の中では、次のように明記されています。
第2条第1項 この法律において「廃棄物」とは、ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であつて、固形状又は液状のもの(放射性物質及びこれによつて汚染された物を除く。)をいう。
しかし旧厚生省は、宝塚市長からの「廃棄物の定義等について(照会)」 の照会文書に対する回答通知として、動物霊園事業にかかわる動物の遺体は「廃棄物」には該当しないとしています。
旧厚生省通知(「昭和 52 年8月3日付け厚生省環計第 78 号」)抜粋
照会に係る動物霊園事業において取り扱われる動物の死体は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律第二条第一項の廃棄物には該当しない。
その他の関係法令
その他の法律として、「悪臭防止法」「大気汚染防止法」「ダイオキシン類対策特別措置法」などが、ペット火葬やペット霊園と関連があるでしょう。
自治体によっては、ペット火葬やペット霊園の設置や営業を規制する条例を制定しているところもあります。
トラブル回避のためにペット葬儀会社・霊園を選ぶコツ
大切なペットが不当に扱われたり、こちらの想いを利用して高額なお金を巻きとられたり、これほど悔しく、辛いことはありません。
トラブルを回避するために、こちらもきちんとした知識を身につけ、業者のことを調べ、見極めなければならないでしょう。
ペット葬儀会社やペット霊園を選ぶコツをまとめました。
ホームページにきちんと会社情報が記されているか
ペット葬儀社やペット霊園のホームページにきちんと会社情報が記されているか確認しましょう。
屋号や霊園の場所だけを記載して、運営会社についての情報がどこにも書かれていないホームページも散見します。
会社名、代表者名、住所、連絡先など、情報開示をしている業者は信用性が高い傾向にあります。
また、代表社やスタッフの顔が掲載されていたり、ブログなどによる情報発信が頻繁になされていると、なおのこと信頼性が増すでしょう。
費用の総額をあらかじめ聞き、書面に残す
費用の総額を必ず聞きましょう。
追加の可能性があるのであれば、それも見越した費用を提示してもらいましょう。
その上で見積書や契約書などの書面に必ず残しておきます。
口頭見積もりや口頭契約は、あとで「言った」「言わない」の問題を引き起こします。
必ず、書面に残し、同じ内容のものを双方が保管しましょう。
もしも対応が悪い場合はその業者に依頼するべきではないでしょう。
契約書へのサインは急がない
火葬や埋葬の執行の時には契約書を交わします。
書面の内容をきちんと確認し、時間の余裕があるならばサインは急がないことです。
悪徳業者であるほどサインを急かそうとします。
大事なペットのためにも、慎重に、毅然とした態度で臨みましょう。
過去の運営実績や口コミをチェック
なによりも信頼できるのは過去の運営実績や口コミです。
自社が発信する情報よりも利用者からの声の方がより説得力があります。
ネット上の評価だけでなく、もしも周りにすでにペット火葬やペット葬儀をしている人がいるなら、どんな様子だったかを訊ねてみましょう。
業界団体への加盟の有無
ペット供養の業界団体への加盟も重要なことがらです。
次のような業界や団体があります。
「全国ペット霊園協会」
日本全国92のペット霊園やペット葬儀社が加盟する業界団体です。
加盟するためにはペット用の葬祭施設、火葬炉、埋葬施設、管理事務所を保有していることが条件です。
定期的な理事会も開催し、環境省によるヒアリングにも参加し、積極的にペット葬祭業の社会的地位向上に努めています。
「日本動物葬儀霊園協会」
ペット供養業界では、日本で初めて法人化された協会です。
正会員数は52社。「会員」や「賛助会員」を含めると90社で構成されています。
『動物葬祭ディレクター』の実施と認定も行っており、葬祭フェアや展示会などへも積極的にブース出店をしています。
「日本動物霊園連合」
移動火葬車の廃絶を訴える動物霊園の連合組織です。
会員数は19社。
組織の成り立ちが「住民の配慮なしにどこでも火葬できる移動火葬車の不使用を宣言」から始まっているために、動物霊園の意義と移動火葬車の廃絶を訴えています。
要望書や署名を環境省に提出するなど積極的に法改正を訴えています。
「日本ペット訪問火葬協会」
日本全国14の訪問火葬(移動火葬車)の業者が加盟する組織です。
協会の取り組みの注目すべき点として、ペット火葬の悪徳業者の横行を自覚していることです。
そのような状況を改善するために業界内でのガイドラインの設置の必要性から協会を設立したようです。
※会員数は平成30年10月現在のものです。
ペット霊園を利用しない時に考えられるトラブル
法律上、動物の遺体は必ずしも霊園などに埋葬しなくても構いません。
自己所有地、たとえば自分自身の家の庭などへの埋葬もできるのです。
しかし、ペット霊園を利用しないために起こりうるトラブルもあるので気をつけましょう。
埋葬箇所によって近隣苦情もあり得る
自宅の庭に穴を掘り、土中の浅い箇所に埋葬してしまったために他の動物が荒らしにくる、あるいは異臭がして近所に迷惑をかけてしまうということがあります。
土は深く掘る、あるいは土葬にせずにまずは火葬して、遺骨を埋葬するなど、近隣の人たちへの配慮は十二分にしておきましょう。
私有地の埋葬は引越しがしにくい
私有地に埋葬してしまうと、その土地からの引っ越しがしづらくなります。
埋葬されたペットをそのままにしておくことも、その土地に誰かを迎え入れることも、土の中に亡くなったペットがいるとなると少し複雑な想いがするのではないでしょうか?
良質なペット霊園なら安心して供養ができる
もしもそのペット霊園が良質で、きちんとした運営をしているのであればペット霊園で供養することをおすすめします。
いまでも「廃棄物」として扱われるペットの遺体。
ひと昔前までは、そんな亡くなったペットの受け皿がなかったため、土の中に埋めたり、川に流したり、保健所に連絡をしたものです。
ペットが家族の大切な一員と考えられるようになり、ペット葬儀社やペット霊園がたくさん増え、その分トラブルも発生してきました。
法制化への動きやガイドラインの取り決めなど、業界側からの健全化への取り組みが活発になってきたことは、それだけ大事なペットをきちんとした霊園に埋葬したいと思う利用者が増えたことを意味します。
だからこそ業者側もきちんとした対応をしなければなりません。
ペット霊園をトラブルなく利用し、安心して供養できる環境がもっと整えばいいですね。
さらなる業界の健全化に期待します。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
では最後に、この記事のポイントを箇条書きでまとめます。
この記事のまとめ
- ペットの遺体の処理の仕方は3つある。飼い主自らが処分。行政の殺処分。ペット霊園や寺院等への埋葬
- ペット葬儀やペット霊園のトラブルには次のようなものがある
- 高額な請求
- 異なるペットの遺骨が返される
- 突然の閉園・倒産
- 異臭騒ぎ
- トラブルの原因には、法規制がないために新規参入がしやすいという側面がある
- トラブル回避のための業者選びのコツ
- ホームページにきちんと会社情報が記されているか
- 費用の総額をあらかじめ聞き、書面に残す
- サインなど契約を急がない
- 過去の運営実績や口コミをチェック
業界団体への加盟の有無を確認する
- 自宅に埋葬する場合も、異臭などで近隣住民に迷惑をかけることがあるから充分注意する
- 良質できちんとしたペット霊園であれば、自身で埋葬するよりも業者を利用したほうがよい
また、ペットのご遺骨は、家族と同じ墓地に埋葬することもできます。
こちらの地図から、お住まいに近いエリアでペット埋葬できるお墓を探してみましょう。
ペット供養できるを探す
監修者コメント
監修者
終活・葬送ソーシャルワーカー
吉川美津子
かつては飼っていたペットが死んでしまったら、庭などに埋めたりしていたものでしたが、住宅事情で埋める場所がなかったり、そもそも火葬率約100%の現代社会においては「土葬はかわいそう」という風潮になり、火葬をして遺骨の状態にしたいと考える人が増えています。
ペットが死んでしまっても、忌引き等の休みが取れるわけではありませんので、火葬するタイミングも家族が揃う日時を狙うとなると土日か夜間に集中します。
休みの日を狙ってペット専用の火葬場へ行くのか、夜間自宅まで移動火葬車に来てもらるのか、家族が揃うタイミングを見計らって考えると良いでしょう。