お墓がない それでも丁寧に先祖供養をするための方法とは
お墓がない場合はどうしたらいい?徹底解説
- 散骨やゼロ葬など、お墓以外の供養方法もある。
- お墓不要で自由度が高く、好きな墓を建てられるメリットがある。
- お墓がないと新規費用がかかり、先祖との絆を感じづらいデメリットも。
- 手元供養や納骨堂、合同墓、樹木葬でお墓なしでも納骨可能。
お墓がない人で、これからお墓を建てるべきか悩んでいる人はたくさんいるのではないでしょうか。
また、お墓を建てるかわりにどのような方法があるのか。
この記事を読み進んでいただくことで、さまざまな供養の方法と比較をして、お墓を建てるべきか、他の方法にするべきかの判断の参考になればと思います。
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この記事の目次
お墓のないケースが存在する理由
「わが家にはお墓がない」という世帯は非常に多いのではないでしょうか。
どうしてそのような状況が起こり得るのでしょうか。
祭祀財産は1人に受け継がれる。
お墓や仏壇は祭祀財産と呼ばれます。
財産には相続財産と祭祀財産があるのですが、祭祀財産とは、お墓、仏壇、位牌、家系図など、祖先を祀るために使用されるものを指します。
祭祀財産は、財産相続と違って分割相続しません。
と言うよりも、物理的にできないのです。
お金や不動産などの資産は価値を換算して法定相続人に分割できますが、お墓や仏壇を、たとえばノコギリで切って分割すること自体、無理な話ですよね。
ですから、祭祀財産の場合は基本的には1人に受け継がれます。
旧民法であれば、長男がこれを受け継いできたのですが、戦後に入って民法が改正されると、相続人以外でも祭祀承継者になれるようになりました。
分家(新宅)にはお墓がない
お墓が誰か1人に受け継がれるのであれば、当然それ以外の相続人はお墓を持てません。
たとえば兄弟が3人いたとして、長男がお墓を受け継いだら、次男や三男はいわゆる「分家」になり、新たなお墓を用意しなければならなくなるのです。
お墓がないことのメリットとデメリット
自分の家にお墓があるかないかは、自分自身の意志で決められないものですが、お墓がないことのメリットとデメリットをそれぞれまとめました。
お墓がないことのメリット
- お墓のある土地に縛られない
お墓があるとその土地に縛られてしまいます。
現代は移動の時代です。
生まれた場所と違った土地で生活し、息を引き取るのが当たり前の世の中です。
祖先から続くお墓を守ることにこだわりすぎると、どうしてもその土地に縛られてしまいます。
お墓がないことで自分が希望する町や地域で暮らすことができ、自身が望む生活を送れるでしょう。
- 自分たちの希望のお墓を建てられる
お墓があると、改装や建て直しは可能とはいえ、原則そのお墓を使用しなければなりません。
お墓がないことで自分たちが希望するお墓を建てられます。
最近では洋風のデザイン墓を希望している人も多く、さまざまな形のお墓が建てられています。
- お墓以外の方法を選べる
お墓を不要に感じている人には、樹木葬や永代供養などの新しい納骨方法が選ばれています。
また、お墓がある上で樹木葬や永代供養をしたい人は、いまあるお墓を墓じまいをしなければなりません。
お墓がないことのデメリット
一方でお墓のないことのデメリットには次にようなことが挙げられます。
- お墓を建てる時に費用がいる
新たにお墓を建てるのであれば、まとまった費用を用意しなければなりません。
墓地を探して墓石を建立するのに200万円~300万円は必要だと言われています。
両親やご先祖様が用意してくれたお墓があれば、こうした大きな出費が不要です。
- お墓以外の方法でも一定の費用がいる
高額な費用や維持が困難などの理由でお墓を建てない人も増えています。
こうした人たちは、樹木葬や永代供養などの新しい方法で遺骨を供養します。
お墓ほどではないとはいえ、それでも何十万円単位の費用が必要となるでしょう。
- 先祖のつながりを感じられない
お墓は、世代を超えてそこにい続けられるものです。
墓石に彫られたご先祖様の名前に、自分たちのルーツに想いを馳せるものです。
しかし、お墓がないことにはなかなかこの感触を味わえないでしょう。
お墓がなくても納骨できる4つの方法
これまでの日本の供養の方法は、お墓を建ててその中に遺骨を埋葬するというものでした。
しかし最近では、お墓を持たない供養法を選ぶ人が増えています。
具体的にどのような方法があるのかをまとめました。
手元供養として自宅で保管
「手元供養」という言葉をご存知でしょうか?
故人様の遺骨の一部を身近な場所に置いておき、礼拝の対象とするものです。
手元供養では、遺骨を全てを手元に置いておくわけではありません。
遺骨の大部分はお墓への埋葬や永代供養などにし、残りのわずかな遺骨を手元供養として自宅に安置します。
さまざまな手元供養商品が販売されており、それらは納骨型と加工型に分類できます。
- 納骨型
骨壺に入れて手元供養をします。
従来の骨壺は、瀬戸物のシンプルなものですが、ミニ骨壺は自宅の中に安置されることを前提に作られているために、デザイン性や機能性に富んでいます。
丸形のものや楕円形のものなどがあり、材質も陶製や金属製やガラス製などさまざまです。
また、ペンダントやネックレスなど、遺骨を納められるジュエリーも人気です。
ミニ骨壺では、遺骨は手を合わす対象として置かれるのですが、アクセサリーやジュエリーのものは、肌身につけておくものです。
いつでもどんな場所で故人様の存在を身近に感じられるアイテムです。
- 加工型
遺骨の一部を素材に利用して、手元供養のアイテムを制作します。
納骨型のペンダントやネックレスはその中に遺骨を納めるのですが、加工型ではアクセサリーの素材そのものに遺骨を混ぜて制作します。
加工型の素材にも、セラミックや、ガラスや、人工宝石など、さまざまな種類のものがあります。
さらには、遺骨の中の炭素を抽出して作り上げたダイヤモンド製のものや、遺骨を混ぜて作られて数珠やオブジェも人気を集めています。
納骨堂に遺骨を預ける
寺院などが経営する納骨堂に遺骨を預ける人も増えています。
納骨堂とは、屋内に設けられた納骨施設のことです。
利用者のニーズに合わせて、納骨堂にもさまざまなタイプがあります。
従来は、お墓を建てるまでの一時的な預かりのための施設でしたが、いまでは納骨堂そのものが礼拝の場となっています。
そのため、ただ遺骨を保管しておくためのロッカー型や、その本尊や位牌を祀って手を合わせられる仏壇型とがあります。
さらに最近では、都市部に作られたマンション型の納骨堂も注目を集めています。
タイプ別にご紹介いたします。
- 棚型
棚型は、雛壇に骨壺を並べるだけのシンプルな構造です。
個別のスペースを割り当てられるわけではないために費用も最も安価に抑えられるでしょう。
- ロッカー型
ロッカー型は、いわゆるコインロッカーのような形の納骨壇です。
同じ大きさのロッカーが並んでいるため、遺骨の収蔵だけができます。
1列が縦に3段~5段くらいが一般的です。
するとどうしても上の方から売れてしまい、下の方が売れ残ってしまうために、値段の差をつけているところが多いようです。
通常、手を合わす場所は堂内の別の場所に設けられ、利用者が共用します。
- 仏壇型
仏壇型とは、遺骨が安置でき、本尊や位牌も祀ることのできる納骨壇です。
通常は、上段に本尊や位牌を祀、下段に遺骨を収蔵する二段構造です。
1人用、2人用、家族用とさまざまなタイプがあります。
納骨と礼拝の両方を個別にできるため、納骨壇の中では高価な部類に入るでしょう。
- マンション型(自動搬送型)
マンション型の納骨堂は自動搬送型とも呼ばれています。
主に東京や大阪や名古屋などの都市部で多く見られます。
これは土地不足を解消するための新しい形の納骨堂で、マンションのように高層階の建物全体が納骨堂となっています。
遺骨はバックヤードで保管され、お参りの人が礼拝ブースにでICチップをかざすことで遺骨が自動搬送されてくる仕組みです。
合同墓や共同墓に納骨する
個別のお参りが不要と考える人、あるいは跡取りや身寄りがいない人は合同墓や共同墓に納骨します。
遺骨は、一定期間は骨壺のまま安置するケースと、預けてすぐに合祀(他の人と同じ土中に埋葬する)するケースとがあります。
合祀してしまうと遺骨を還してもらえなくなるので注意しましょう。
自然に還る樹木葬
樹木葬とは、石ではなく、木を墓標としたお墓のことです。
遺骨を自然に還すという点、石材加工が伴わないためにエコである点、石のお墓よりも安く済む点から人気を集めています。
樹木葬は、主に里山型と霊園型に分けられます。
- 里山型
里山型とは、自然の山全体を墓地とする樹木葬です。
山の中で区域を区切って、その区画内に遺骨を埋葬します。
原則として、カロートや石碑などの人工物は用いません。
自然に還るという意味では、真にエコ志向の供養の方法だと言えます。
ただし難点としては、里山でなければならないために都心部からは距離がある、石碑がないために墓標の樹木と雑草の区別がつきにくく荒れやすい、などの特徴があります。
- 霊園型
霊園型とは、霊園や寺院の境内などに作られた樹木葬の施設のことです。
現在運営されているほとんどの樹木葬墓地は、この霊園型です。
石のお墓と同様に、個別の区画に納骨して植樹をする「個別型」、シンボルツリーの周りに作られた個別のカロートに納骨する「集合型」、シンボルツリーのふもとに合祀する「合祀型」などに分けられます。
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納骨すら不要なスタイル 散骨・ゼロ葬
「墓」とは、埋葬地であり、その上に作られる墓標のことを指します。
ですから、そのお墓が石であれ木であれ、埋葬と礼拝が共に行われるのであれば、それは「お墓」です。
また、納骨堂も埋葬こそないものの、遺骨を安置して、手を合わす場所がある以上は「お墓」に含んでもいいのかもしれません。
こうした埋葬や礼拝する場所(=墓)を持たないスタイルが出てきています。
それが、「散骨」であり、ゼロ葬です。
散骨
散骨とは、粉状にした遺骨を山や川や海に撒く葬法です。
散骨を執り行う業者のほとんどは海洋散骨、つまり海の散骨を事業としています。
山や川は人々の生活圏内であり、遺骨を撒くことでトラブルの要因になりかねないからです。
また、海洋散骨でも、海水浴客のいるところや漁場からは離れたところで行われています。
法的にはグレーの状態で、自治体によっては住民の反感に沿う形で、条例やガイドラインなどを敷いて規制をかけているところもあります。
散骨にするためには遺骨を粉状にしなければなりません。専門業者や散骨業者に相談しましょう。
また、代理散骨(散骨を業者に任す)、合同散骨(他の家族と同じ船に乗り込んで散骨する)、個別散骨(船をチャーターする)などがあり、それぞれ費用が異なります。
ゼロ葬
ゼロ葬とは、火葬した遺骨を持ち帰らずに、その処理を自治体に任せることです。
宗教学者の島田裕巳氏の著書『0葬 あっさり死ぬ』の中で提唱された葬法です。
ただしこの方法は日本全国全ての地域でできるわけではありません。
関西などでは、いまでも家族が持ち帰る遺骨は全体の3分の1程度なので、自治体が遺骨を処分する慣例がありますが、関東や東北地方などでは、家族がすべての遺骨を持ち帰るために、ゼロ葬ができないこともあります。
また、宗教感情的にゼロ葬に踏み切る人はきわめて少数だと言われています。
詳しくは、それぞれの自治体や地域の葬儀社に相談してみましょう。
葬儀を終えたら納骨先を検討する
家にお墓がない人は、お墓について考えなければなりません。
ここでいうお墓とは、決して従来の石のお墓だけでなく、樹木葬や納骨堂なども含まれます。
遺骨はずっと家に置いておくわけにはいかず、最終的にはしかるべき場所に納骨しなければなりません。
納骨堂や樹木葬など新たな形の供養法も登場していますが、その中にも新しいお墓の建立ももちろん含まれます。
ひとつのお墓に複数家族をまとめるのは要注意
「僕たち兄弟は仲がいいから、それぞれの家族でお墓を共有しようと思うのですがどう思いますか?」
たまにこうした質問を受けます。
祭祀承継者は長男だけど、長男家族と次男家族それぞれでひとつのお墓を共有するということです。
一見、兄弟間で仲がよければ問題ないですし、費用も安く済むために経済的のようにも思えますが、これはあまりおすすめできません。
いま現在は、兄弟夫婦が仲が良いから問題ないでしょう。
しかし、お墓は世代を超えて受け継がれていくものです。
子どもの代になると、子ども同士が(つまりはいとこ同士)が仲良くひとつのお墓を共有できるかどうかは分かりませんし。
誰がお墓を管理するのか、管理料を霊園に支払うのかなども含め、承継の時にトラブルになる危険性が大いにあるのです。
お墓を私たちが住む家だと考えるとより分かりやすいでしょう。
ひとつの家に兄弟家族が住んで、代が下って子孫が増えると大変なことになりますよね。
家は手狭になりますし、管理や財産で必ずトラブルになるでしょう。
お墓でも同じことが言えるのでないでしょうか。
たまにあるのは、ご夫婦どちらかの家系が途絶えてしまうことで、その両親の遺骨を受け入れるというものです。
後継ぎがいないため、両親だけの遺骨は一緒に入れてあげようというケースは、筆者の経験の中でも何組かいました。
ただし、必ず事前に両家で話し合いをしておかないとトラブルの原因になりかねないでしょう。
お墓・後継者なしのケースの対処法
「おひとりさま」という言葉が世の中に広く普及したように、単身者世帯が増加しています。
親、子、孫という風に家族や先祖は続いていくものと考えられていましたが、子や孫がいない世帯では自身の死後を見てくれる人がいません。
このような人たちはどうすればいいのでしょうか。
生前にできること。また、死後に誰にどのようにお願いしておけばいいのかをまとめました。
1.葬儀やお墓の生前契約をしておく
元気なうちに葬儀社や石材店に出向いて、生前契約を結んでおきましょう。
自分がどのように見送られ、埋葬されたいのかを明確にしておけますし、死後の手続きをしてくれる人の負担軽減にもなります。
特にお墓に関しては、先祖のお墓がある場合には墓じまいをし、中の遺骨は寺院や永代供養にしておくとよいでしょう。
そして、自身の死後もその寺院に埋葬してもらえるよう、生前に話を整えておきましょう。
2.遺言書を作成しておく
相続に対しての希望を残しておくのであれば、遺言書が有効です。
できれば、最も法的効力を持つ公正証書遺言が望ましいでしょう。
相続は遺産だけではなく、仏壇やお墓といった祭祀の対象となるものも含まれます。
お墓をどのようにしてほしいか、その費用をどこから充当するか、それを誰にしてもらうかを示しておきましょう。
3.死後事務委任契約を利用する
死後の事務手続きを信頼できる誰かに任せられるのが死後事務委任契約です。
死後事務には、葬儀や埋葬の手配も含まれています。
本来家族が行うものですが、家族がいない、いるけれど疎遠であるなどの時にはこの制度を利用します。
あなたが信頼できる人、たとえば友人を指名することもできますし、行政書士や司法書士といった法律の専門家や、見守りサービスを行っている会社に依頼することもできます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
では最後にこの記事のポイントを箇条書きでまとめます。
この記事のまとめ
- お墓などの祭祀財産は分割されずに1人に受け継がれる。
- 分家(新宅)にはお墓がない。
- ひとつのお墓に複数の家族をまとめない方がいい
- お墓がないことのメリット
- お墓のある土地に縛られない
- 自分たちの希望のお墓を建てられる
- 永代供養など、お墓以外の方法を選べる
- お墓がないことのデメリット
- お墓を建てる時に費用がいる
- お墓以外の方法でも、一定の費用がいる
- 先祖のつながりを感じられない
- お墓がなくても納骨できる4つの方法として、手元供養、納骨堂、合同墓(共同墓)、樹木葬などがある
- 納骨すらしない方法に散骨やゼロ葬がある
- 「おひとりさま」は、遺言書や死後事務委任契約を利用すれば希望する埋葬をしてもらえる
監修者コメント
監修者
終活・葬送ソーシャルワーカー
吉川美津子
お墓がない、という場合の選択肢は、「お墓をつくる」「散骨する」の2者択一しかありません。
お墓をつくる場合、一般の墓地だけでなく納骨堂、樹木葬墓地、合葬墓など選択肢が多く、立地や費用、納骨タイプ等、見学をしながら探していくことになります。実際に見学に行くと、「納骨堂を考えていたけれどイメージが違った」またはその逆など、思い描いていたお墓とは違っていたという意見も珍しくありません。一般の墓地でも周囲の環境等に大きく左右されます。
先祖供養を丁寧にしたいという方は、今後子々孫々、どのような形で先祖との縁をつないでいくかという視点で考えてみてはいかがでしょうか。