「お墓はいつからあった?」お墓の意義・建てる目的を知り納得のお墓選びを!
お墓はいつからあるの?徹底解説
- お墓は仏舎利塔が起源で、江戸時代に庶民も建て始めた。
- 石材のお墓は耐久性が高く、神聖さと大地の温もりを象徴する。
- お墓建立は四十九日や一周忌に合わせることが多いが、生前建立も増加。
- 建墓前には費用、墓守、建立時期を家族と相談することが重要。
私たちの生活の中にあたりまえのように浸透しているお墓。
お盆やお彼岸になれば、数多くの人が自分の先祖のお墓参りに足を運びます。
しかし、その先祖のお墓はいったいいつからあったのかまで把握している人はどれくらいいるでしょうか。
先祖のお墓の成り立ちもさることながら、そもそも日本のお墓のはじまりから分かっていない人のほうが多いのかもしれません。
そこで、今回は「お墓はいったいいつから存在したのか」「お墓の原点はなんなのか」などについてご紹介いたします。
この記事を読むことで、きっとお墓の原点を再認識できるため、お墓参りするときにいままで以上の手厚い供養ができるようになるでしょう。
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この記事の目次
いつからあった?仏教におけるお墓の原点はお釈迦様
仏教において、お墓の原点はお釈迦様の存在にあるといわれています。お釈迦様は、紀元前566年ごろにインドに近いネパールで生まれてから紀元前486年ごろまで生き、80年の生涯を送ったそうです。
本名はガウタマ・シッダールタといい、ブッダ(仏陀)などともよばれています。お釈迦様は、29歳で出家してから紆余曲折を経て悟りを開き、仏教を人々に伝えていったのです。
お釈迦様の遺骨は「仏舎利」(ぶっしゃり)とよばれ塔に収められました。
お釈迦様の遺骨を収める仏舎利塔(ぶっしゃりとう)が原点
お釈迦様の遺骨、いわゆる仏舎利(ぶっしゃり)を収めた塔のことを仏舎利塔(ぶっしゃりとう)といい、仏教におけるお墓の原点といわれています。お釈迦様の遺骨の所有を巡って争いが起こりましたが、約200年後に仏教徒だった古代インドのアショーカ王によって仏舎利は細かく分けられました。
周辺国を含めて約8万あまりの寺院に仏舎利が分けられ、それぞれのストゥーパ(仏塔)に収められることになったのです。このような仏舎利塔がいまでいうところのお墓になるのかもしれません。
庶民がお墓を建て始めたのは江戸時代から
日本において庶民が亡くなった人を供養するためのお墓を建て始めたのは江戸時代ごろからといわれています。その理由は檀家制度です。
寺院をサポートしていく檀家(檀家制度)との深い関係
江戸時代には幕府が檀家制度をつくりました。檀家制度とは、各地域にある寺院と近隣住民が葬祭供養などを独占的に執り行うという関係のことです。
特定の寺院を経済的な面でサポートしていく役割が檀家とよばれます。檀家という言葉は鎌倉時代からあったともいわれており、全国の各寺院に住民台帳の管理など、現代でいう役所のような権限を与えて管理をしていました。
現在は檀家になるか否かを自分で選択することができますが、当時はどこかの寺院に所属し檀家となる必要があったのです。
これは、当時の隠れキリシタン排除なども目的だったともいわれています。こういったことから庶民にもお墓が浸透していくことになったのです。ただ、それ以前にはどのようにしていたのでしょうか。
縄文時代ごろは死者をそのまま埋葬
当時は、現代のような火葬は行わず、死体をそのまま土中に埋葬するスタイルでした。手足を折り曲げる、屈葬が多かったようですが、死者はおそろしいという概念からよみがえらないよう大きな石を抱えさせて埋葬するケースもあったようです。
古墳時代などは、天皇や豪族がお墓をつくる
歴史などでも知られている仁徳天皇陵の前方後円墳など、地位の高い人たちのお墓が権力誇示などのためにつくられました。
1983年には、北海道知内町(しりうちちょう)で日本最古となる旧石器時代のお墓がみつかっています。
このことから、現代のスタイルのお墓に近いのは江戸時代ごろからですが、昔からさまざまな方法で死者を弔うことは行っていたことが分かるでしょう。
お墓を石材で建立する3つの目的
お墓を石材で建てる目的は大きく分けると3つあるといわれています。
- 耐久性の高い石材で末永く時代をつなぐ
- 古代から石は神聖で信仰する対象だった
- 大地から生まれた自然のぬくもりを感じるもの
1.耐久性の高い石材で末永く時代をつなぐ
お墓は命の軌跡をつなぐ役目を持っているため、耐久性の高い石材が使われたともいわれています。先祖代々および未来へと、場合によっては何百年と残っていくものです。
そのため、腐食しやすい素材は適していなかったという一面もあるのでしょう。
また、昔は現代のように火葬が主流ではなく土葬であったため、死体を埋葬した土を動物に掘り返されるというようなこともあったようです。
こういったことから簡単には動かせない頑丈な石材が選ばれました。
2.古代から石は神秘的かつ神聖な意味合いがあった
古代より石は神秘的で神聖な意味合いを持っていたからこそ、石が選ばれたともいわれています。
日本最古の歴史書『古事記』内の日本神話に登場する「イザナギノミコト」と「イザナミノミコト」という夫婦の神様が、離婚する際に黄泉の国と現世を仕切るものとして大きな石(千引の岩:ちびきのいわ)を使いました。
このことが、お墓に石を使った起源ではないかという説もあるようです。
3.大地から生まれた自然のぬくもりを感じるもの
大地から生まれた自然のぬくもりを感じる墓標として、石が選択されたともいわれています。
人間は地球上で生まれ、地球上で命を果てていく…このような自然の摂理のなかで弔うのには、地球そのものの自然なぬくもりを感じられる石が適していると考えられたのかもしれません。
お墓に石を利用する理由は諸説ありますが、一番大切なことは故人を弔う目に見えない心の温かさです。
墓石を建てる意味をしっかりと押さえたうえで、次はお墓を建てる人の役割についても確認していきましょう。
お墓を建てる人は考えておこう!墓守と建てる立場の人
お墓を建てる際は、お墓を見守っていく墓守のことについてもしっかりと考えておきましょう。
先祖代々のお墓を守って継承していくのが墓守の役目
墓守の役目は、先祖代々のお墓を守って未来へ継承していくことです。1989年に制定された明治時代の旧民法における家督相続の名残もあってか、日本の場合、墓守を長男に継承するというケースが少なくありません。
なぜなら、家督相続では長男が全財産を相続することができたからです。現代のように法定相続分ずつ分けるという発想がありませんでした。
しかし、墓守は誰が行わなくてはいけないという決まりはありません。場合によっては、墓守をしたいかどうかにかかわらず、自分しか親や先祖のお墓を見守る人がいないというケースもあるでしょう。
お墓の建立を検討している人は墓守まで決めておく
お墓を建てる場合、自分の価値観だけで話を進めるのではなく家族や親族も含めて「墓守をどうするか」までしっかり決めておきたいものです。
なぜなら、一般的なお墓を建てた場合は誰かしらお墓を管理していかなければいけないからです。こういったお墓のことを継承墓(けいしょうぼ)といいます。
しかし最近では、墓守が不要の「永代供養墓」というタイプのお墓も増加傾向にあります。これは、子どもを墓守負担から回避してあげたり、墓守を継承する親族がいなかったりするというのが理由の一つです。
先祖のお墓を代々見守っていく墓守がいる一方で、生前に自分たちのお墓を購入するという人もいます。生前にお墓を購入する人たちはどのようなことを考えて購入しているのでしょうか。また、お墓を生前に建てることは問題ないことなのでしょうか。
次の段落では、生前のお墓について確認していきましょう。
生前にお墓を買う人も増加中!お墓はいつから建てるのがよい?
お墓は一体いつから建てるのがよいのでしょうか。終活の影響で、お墓を生前に購入している人も増えているといいます。そこで、ここではお墓を建てることの多い時期や生前に建てるお墓について見ていきましょう。
一般的には四十九日や一周忌などの節目に建立を合わせる人が多い
お墓を建てる時期として多いのが、故人の四十九日や一周忌などの法事の節目です。昔に比べると、親族の葬儀や法事のスタイルなどはだいぶ様変わりしました。
しかし、四十九日や一周忌までは法事を行うという人気式を持っている人はいまだに多い傾向です。そのため、お墓を建てる場合は、「これらの法事があるときまでには建てておこう」と考える人が多いのでしょう。
生前に建立するお墓はめでたい!寿陵(じゅりょう)とよばれる生前墓
近年の終活ブームに伴い、生前にお墓を建てる人が増加傾向です。「生きているのにお墓を建てるなんて縁起が悪い」という感覚の人もいるかもしれませんが、お墓を生前に建てることは、「寿陵(じゅりょう)」といってめでたいことといわれています。
寿陵は、中国から伝わってきたといわれており、あの有名な聖徳太子も生前にお墓をつくったことが『日本書紀』に記載されているのです。
また、相続税対策を検討している人にとって生前にお墓を建てることは、節税対策にもなります。なぜなら、お墓は非課税財産になるからです。財産が多い人にとっては相続税対策で相続財産を減らすことに苦労するため、節税の意味で生前にお墓を購入している人もいるのです。
お墓を建てるのに避けるべき時期はない
基本的にお墓を建ててはいけない時期という決まりはありません。昭和時代のように、しっかりとお通夜と告別式を行い、四十九日や初盆、一周忌、三周忌など決まった形式で故人を弔う人ばかりではなくなっている時代です。
「継承墓にするのか」「永代供養墓にするのか」など、お墓を建てる人の需要はさまざまなため、自分たち家族や親族同士で話し合ったうえで時期を決めていくのが賢明でしょう。
お墓を建てる時期は人それぞれで問題ないことが分かりましたね。またお墓を建てる時期についてより詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
では実際にお墓を建てるときには、ほかにどんなポイントを押さえておけば良いのでしょうか。
お墓を建てる前のポイントについて確認してみましょう。
お墓を建てる前に考えよう!押さえておきたい3つポイント
お墓を建てる前には、さまざまなことを確認しておく必要がありますが、そのなかでも押さえておきたいポイントが3つあります。ここでは、お墓を建てる前にチェックしておく3つのポイントについて見ていきましょう。
- お墓にかける費用の上限
- 墓守は誰にするのか
- お墓を建てる時期
1.お墓にかける費用の上限
「お墓にどれぐらいの費用がかけることができるか」といったお墓の費用の上限は必ず決めておきましょう。お墓を初めて購入する人は、どういった仕組みでどのような費用がかかるのかがあまり把握できていない傾向です。
費用の上限をあらかじめ決めていないと、あとになって「あれもつけたほうがいいのでは?」「これもつけたほうがいいのでは?」と予算が膨らみがちになります。これは、マイホーム購入と似ているかもしれません。
ハウスメーカーから提案される、さまざまなオプションをいわれるまま付けていたら結果的に予算を大きくオーバーしていた……なんてことも珍しくありません。
また、世間体や見栄など、必要以上に費用のかかるお墓も考えものです。故人が手厚く供養できるということを大前提に自分たちの身の丈に合ったお墓を選定しましょう。
お墓の値段について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
2.墓守は誰にするのか
基本的にお墓を建てる人は、墓守をすることになるでしょうが、自分が亡くなったときの墓守を誰にするのかまで考えておくと良いでしょう。もちろん、先のことは誰にも分かりません。
しかし、お墓を建てるタイミングで家族や親族とお墓の価値観についてすりあわせておかないと、なかには「墓守なんかしたくない」という家族や親族もいるかもしれないからです。
自分の子どもだから、「自分のお墓の墓守をやってくれるだろう」という自分の希望のみでお墓を建ててしまうと、あとでトラブルのもとになりかねません。
3.お墓を建てる時期
お墓を建てる時期についても明確に決めておいたほうが賢明です。
墓守を決めることと同様、家族や親族内でも価値観は大きく異なります。自分は「お墓はいつでもいいや」と思っていても、親族は「一周忌までにはお墓を建ててあげたい」と思っているかもしれません。
この辺りの価値観を話し合ったうえですりあわせておかないと、トラブルになります。
お墓を建てる前に押さえておきたい3つのポイントは、あたりまえのことのようですが、非常に大切なことになります。本来は、「故人を丁重に供養したい」という気持ちでお墓を建てるにもかかわらず、それがきっかけで親族や家族内でトラブルになっては本末転倒です。
できるだけ家族や親族と情報を共有して、意見の食い違いが起こらないようにしておきたいですね。
まとめ
「お墓をいつから建てようか」と悩んでいる人にとってお墓の建立時期は深刻な問題です。
しかし、そんなときはお墓の歴史や本来のお墓の意味をじっくりとかみしめながら理解していくことが解決策につながるかもしれません。
この記事の内容をいまいちど確認していきましょう。
- 仏教におけるお墓の原点はお釈迦様の仏舎利塔(ぶっしゃりとう)
- 日本で庶民がお墓を建てるようになったのは江戸時代ごろ
お墓を石でつくる主な理由
- 耐久性の高い石材で末永く時代をつなぐ
- 古代から石は神聖で信仰する対象だった
- 大地から生まれた自然のぬくもりを感じるもの
お墓を建てる時期の目安
- お墓は四十九日や一周忌など法要の節目までに建てる人が多い傾向
- 最近は「寿陵」といって縁起の良い生前にお墓を建てる人も増えている
- お墓は購入してはいけない時期はない
お墓を建てる前に考えたい3つのポイント
- お墓にかける費用の上限
- 墓守は誰にするのか
- お墓を建てる時期
お葬式や供養方法が多様化した時代においては、「これが正しい」という昔ながらの固定観念のスタイルは減少傾向です。
世間体や虚栄心ばかりを気にしてお墓を建てるのでは、故人も気持ちよく成仏できないかもしれません。
自分の意見だけを押し進めるのではなく、家族や親族の意見を共有しながら故人が安心して眠りにつけるお墓を検討してみましょう。
墓石全般の基礎知識ついて詳しく知りたい方は、こちらの記事も併せてご覧ください。
監修者コメント
監修者
終活・葬送ソーシャルワーカー
吉川美津子
墓は、死者の遺体が納められている場所や装置のことをあらわしますが、石塔が死者供養の装置として広く導入されるようになったのは江戸時代中期以降だと言われています。それまでは、塚状だったり、石を積み上げたままだったり、木の墓標を建てたりするものが多かったようです。
また、遺体は別の場所に埋葬し、参り墓として石塔のみを屋敷内や村の一角に設けるような墓もありました。○○家の墓としてひとつの石塔をシンボルにするようになったのは、明治以降と急速に普及したと言われています。旧民法下の家督制度で家単位で墓を持つようになったことも理由のひとつですが、火葬率の上昇で、それに伴い焼骨を納めるカロートがつくられるようになり、シンボルとして立派な石塔がつくらえるようになったことによる影響も大きいとされています。