お墓に供えても大丈夫! 造花のメリット・デメリットをご紹介
お墓の造花とは?徹底解説
- お墓の花は造花でも良く、心がけが重要。枯れず手間いらずで経済的。
- 造花は手軽に購入可能。選び方には周囲の環境を考慮することが大切。
- 造花と生花を状況に応じて使い分けることが望ましい。色あせたら交換。
頻繁にお参りに行けないために、以前供えたお花が枯れてしまって、お墓を汚してしまうことに胸を痛める人は実にたくさんいます。
そこで用いられるのが造花です。造花はポリエステルなどを素材とした人工のものなので枯れる心配がありません。
ただし、生花ではなく造花を供えていいのかなど、抵抗感を持つ人がいるのも事実。
さらには、どこで買えばいいのか、どんな風に供えればいいのかなど、分からなくて困っているのではありませんか?
この記事では、お墓に供える造花について分かりやすく解説いたします。
造花にするか、生花にするか。その参考にしていただければ幸いです。
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終活といっても、生前整理、葬儀、お墓の検討などさまざまです。
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- お墓選びで注意するべきポイントを詳しく知りたい
など、数々の不安を抱えている方が多いのではないでしょうか。
お墓の購入に関しては、初めての方が多いため、不安や疑問を持つことは仕方のないことでしょう。
しかし、お墓購入後に後悔することだけは避けたいですよね。
そのためにも複数の霊園・墓地を訪問して実際に話を聞き、しっかりと情報収集することをオススメします。
情報収集するために、まずは気になる霊園・墓地の資料請求をしてみましょう。
この記事の目次
大切なのは供養の気持ち!お墓の花は造花でも問題ない
お墓に供えるお花は生花じゃなきゃダメなのかと思われて、負担に感じている人もいるのではないでしょうか。
しかし、結論から言うと、お墓のお花は造花でもなんら問題ありません。
この記事を書き進めるにあたり、まずは造花でも問題ないという根拠を示しておきます。
仏教寺院も用いる生花を模した仏具たち
仏教寺院に「常花(じょうか)」 というお供えの仏具があります。お寺の本堂にある大きな花立てに差して飾る金箔や彩色で彩られた蓮花のことです。
常花は「生花を模したもの」としては造花と同じ意味のものです。
また、「散華(さんげ) 」と呼ばれる花びらを模した楕円の紙に絵を描いたものがあります。
葬儀や法要で僧侶がそれをあたりに撒いて散らすのですが、これも本来は生の花びらを散らしたものです。
このように仏教寺院でも生花を用いず、それに替わるものを使用していることを念頭に入れておきましょう。
「枯れる生花をあえて供えるべきだ」という考えは根強くある
花は必ず枯れるものです。
しかしそのさまが、仏教が説くところの「諸行無常」を表しているのも事実です。
「枯れる生花をあえて供えるべきだ」という考え方は根強く残っていますし、多くの人は本心では生花を供えてあげたいと考えています。
造花に託すポジティブな供養の想い
大事なのは、生花でも、造花でも「お供えしてあげたい」という供養の気持ちです。
生花ではなく造花を供える人の心には「掃除が大変」「手入れが面倒くさい」という物理的な本音があります。
しかしその奥には「それでもお墓を華やかにしておきたい」という気持ちが必ずやあります。でなければそもそも造花すらお供えしないはずです。
もっと言うならば、自分たちがお参りに来る時は生花を供え、お参りに来れない間は造花を供えておくという人も多く、そこには「枯れてしまった花を放置しておくことは忍びない」というご先祖様への想いが見え隠れするものです。
もちろん、こま目にお墓参りに来てお花を交換してあげるのが一番望ましいのは百も承知。
でも、現実的にそれができない中で、いかにお墓を華やかにしていられるか、枯れて汚くなってしまうお墓の問題を解消できるかというポジティブな発想から生まれたのが、造花のお供え、ではないでしょうか。
造花を供えることにうしろめたさを感じる必要はありません。むしろ、その行為の中に「供養の気持ち」はきちんとあるか。そこを見つめてもらえれば十分なのではないでしょうか。
生花でなく造花にすることのメリット・デメリット
生花ではなく造花を供えることにはどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか?
それぞれをまとめました。
造花を供えるメリット
- お花が枯れないためにお墓が汚れない
- お花の費用負担がなくなる
お花が枯れないためにお墓が汚れない
造花の最大のメリットはお墓が汚れなくなるという点です。
みなさん、自分自身のお墓参りの頻度を考えてみてください。
週に1回、月に1回、年に数回、年に1回、数年に1回など人によってさまざまでしょう。
お墓参りの時に供えられたお花をそのまま放置するということは、次のお参りの時までお花がずっと花立ての中に置かれ続けることを意味します。
墓地によっては管理者が枯れたお花を抜いてくれるところもあるでしょうが、そうでないところもたくさんあります。また、お盆など、夏場のお花のお供えのあとは、茎が腐って水が臭く淀んでしまいます。
造花にすることで、このような問題が解消されるのです。
お花の費用負担がなくなる
お墓参りのたびにお花を購入する人はよくわかると思うのですが、お花の費用はなかなかの負担です。
安い所でも仏花が1束300円〜500円近くします。
これを、一対買わなければなりませんし、人によっては複数のお墓へのお供えをしなければならない人もいるでしょう。
さらにお盆やお彼岸などの繁忙期は全体的に相場が高騰します。
造花は一度購入すると数年はお供えできるため、費用の負担は大きく軽減できます。
造花を供えるデメリット
- 見た目に違和感があり、生花のような香りがない
- 周囲の目線
見た目に違和感があり、生花のような香りがない
生花は自然だからこそのよさがあるのも事実ですから「自然っぽさ」がないのが造花のデメリットです。
見た目の色目や質感にも違和感がありますし、生花独特の甘い香りが漂うこともありません。
周囲の目線
造花を供える人の割合は、全体から見比べると圧倒的に少数なのが現実です。
造花はただでさえ質感が異なり目立つため、周囲の人たちがどのように見ているかを気にする人もいます。
公営霊園や民営霊園などであればいいのですが、寺院墓地や自治会の共同墓地など、隣や周囲のお墓の持ち主が分かるような墓地だと周囲の人たちの目が気になるかもしれません。
造花の購入はネットや100円均一ショップでも可能
造花は大型スーパーやホームセンター、または仏具店などで販売しています。
最近はインターネットで購入するのが便利でしょう。
費用は、1本が1000円から3,000円が相場です。
高価なものほど、より自然に、よりボリュームのある形でお花が組まれています。
さらに安価なものでは100円均一ショップでも販売されています。
100円均一ショップで売られているような安い造花にはそれなりの理由があり、いざお墓に供えてみると寂しい感じを覚えるかもしれません。
造花を選ぶ時に気を付けたい3つのポイント
造花を選ぶ時はどのような点に気をつければいいのでしょうか。
造花同士の色のまとまり感を確認しておく
造花を買う時には、複数組買うことになるので色のまとまり感に気をつけましょう。
なぜ複数組必要かというと、お墓のお花は一対で供えるからです。
さらに花立てに造花を入れるとき、ボリュームのある造花の場合は1組で済みますが、ボリュームのない造花では中がスカスカになってしまうので複数を組み合わせて供えます。
造花でも生花でも同じですが、花同士の色のまとまりや大きさのバランスなど納まりよく供えられるよう意識しましょう。
造花が倒れたり飛ばされないようにする
生花と違って造花を供える時には花立てに水を入れる必要がありません。
ただでさえポリエステルなどを素材にしている造花は大変軽く、風で飛ばされることもしばしばです。
茎の長さは調整できるようになっているので、長めの茎のものを購入し、花立ての深くまで入れるようにしましょう。
また、茎の先におもりのようなものをつけるなどの工夫をしてもよいでしょう。
地域性や宗派でトラブルにならないか確認
宗派別に「造花はダメ」としているところはありませんが、お寺の住職によっては生花を供えないことに苦言を呈するケースもあるでしょう。
また、寺院墓地や自治会の共同墓地など、地域に根ざした墓地では周囲の目が気になることも起こりえます。
どうしても気になる人は、お寺の住職に事情を伝えて相談してみましょう。
「普段は造花、お参りの時は生花」の使い分けがおすすめ
造花は、生花との使い分けで供えるのがよいと思います。
つまり、普段は造花を供えておく。お墓参りの時は生花を供える。という使い方です。
なぜなら、造花を供える一番の理由が「枯れたお花でお墓を汚したくない」というものだからです。
お参りの時だけ生花を持参して、お参りが終わると一緒に生花も持ち帰れば、お墓が汚れることはありません。
しかし、お墓をあとにする時に花立に何も供えられていない状態も家族にとっては後ろめたいのです。
そこで供えられるのが造花です。
お参りに来れない間は造花が枯れることなくお墓を彩ってくれます。
普段は造花、お参りの時は生花。この使い分けがおすすめです。
造花を変えるタイミングと管理面でのポイント
造花はずっとお墓に供えられています。
毎日毎日、雨や風や日の光にさらされるので劣化してしまうのは仕方がないことです。
造花の管理はどのようにすればよいのでしょうか。
交換の変更タイミングは色褪せ具合で判断
交換のタイミングに決まりはありません。造花を見て「そろそろ変え時だな」と思った時でよいでしょう。
毎日日光を浴びているので、どうしても色があせてしまいます。
また、表面が劣化して割れややぶれが出てくることもあるでしょう。
毎年の命日に、お盆に、お正月にと、交換のタイミングを決めていてもいいかもしれません。
造花を少しでも長持ちさせる方法
造花を少しでも長持ちさせるこれといった方法はありません。
供えたら供えっぱなし。雨風や日光にさらされるままで、いつかは経年劣化を起こす消耗品と思ってよいでしょう。
ただ、お参りのたびに湿ったタオルで表面に付着したほこりなどを拭き取るだけでも印象は変わります。少しでも長持ちをさせたいのであれば、造花にも多少の手入れをしてあげましょう。
お墓や仏壇でお花を供えることの意味
私たちは、お墓や仏壇でお花を供えます。
人工の造花でもいいから供えてあげたいという想いはどこから来るのでしょうか。
古今東西 死者供養に用いられてきたお花
古今東西、死者供養にはお花が用いられてきました。
ネアンデルタール人によるお供えの花
有名なのはネアンデルタール人による死者供養です。
イラク北部のシャニダール洞窟から6万年前のネアンデルタール人の骨が見つかっているのですが、そのあたりに咲くはずのない花粉が見つかりました。
これは死者を弔うためのものと考えられています。
インドや東南アジアの花供養
インドでは古くから花を用いて当たりを清める習俗がありました。
お釈迦様生誕を祝う法要を「花祭り」と呼ぶほどです。
いまでもインドや東南アジアなどの南方仏教では法要の際に生花を壇上からまき散らす散華供養や生け花で糸をつなげて花環として献花をすることもあるようです。
日本における仏教と生け花
日本では古来より「山川草木悉有仏性」ということばがあり、自然の草木の中に神霊や仏性が宿っていると信じられています。
これは花も同じことで神仏の依代(よりしろ:神仏のよろつく場所)と信じられていました。
また、仏教では蓮の花が仏さまの花とされていて古くから仏前には蓮花を供えました。
室町時代には日本の生け花が確立されますが、その基本も仏教の供華にあったのです。
枯れないお花にも供養の想いが込められる
造花は枯れないお花です。
しかし、枯れないお花は古くからさまざまな面で用いられてきて、中には様式化したものまであります。
常花(じょうか)
常花は、お寺の本堂用に供える木製あるいは金属製の蓮花のことです。表面は金箔押しか彩色仕上げのものがあります。
自宅の仏壇に納まるような小さな常花もあり、これもれっきとして「造花」と言えるでしょう。
散華(さんげ)
散華とは、お寺の法要などで投げ散らすことで供養とするものです。
本来は生の花や蓮弁を散らしていましたが、いまでは花びらの形をして表面に絵の書かれた紙を散らします。
花環
開店お祝いや葬儀式場などでよく目にする花環も、もともとは生花で作られていたものを僧へのお布施と用いられ、それがやがて本堂にお供えされるようになったそうです。
寺院仏具の「華鬘(けまん)」がこれにあたります。またヨーロッパ社会でも花環(お花のリース)は装身具として用いられ、魔除けやまじないとして祭事などで用いられたそうです。
プリザーブドフラワー
いま流行のプリザーブドフラワー。本物の生のお花を特殊加工して着色した「枯れないお花」です。
質感や色あいが本物のお花そっくりなことから大変人気ですが、雨や湿気に大変弱いため、お墓では使えません。仏壇など、屋内でのお供えに好まれています。
まとめ
造花を供えることにうしろめたさを感じる必要はありません。繰り返しますが、その行為の中に「供養の気持ち」はきちんとあるか。
その気持ちが一番大事なのではないでしょうか。
また、トラブルを避けるためにも生花が良いのか造花が良いのかはお墓を管理してくれているところと確認をするのがよいです。また、使い分けもできますので状況に合わせてご自分で使い分けてみるのも一つの手かもしれませんね。
では最後にこの記事のポイントを箇条書きでまとめます。
- お墓のお花は造花でもなんら問題ない
- 仏教寺院も、生花を模した仏具(常花や散華など)を用いている
- 「枯れる生花をあえて供えるべきだ」という考え方は根強く残っているのも事実
- 大事なのは、生花でも、造花でも、「お供えしてあげたい」という供養の気持ち
- 造花のメリットは「枯れない」「汚れない」「費用がかからない」
- 造花のデメリットは見た目の違和感や周囲の目線
- 造花はスーパー、ホームセンター、仏具店等で購入可能。100円均一ショップにもある
- 費用は1本が1000円〜3000円
- 造花を選ぶ時の3つのポイント
- まとまり感
- 飛ばされないようにする工夫
- 造花を供えることでトラブルにならないかの確認
- 「普段は造花、お参りの時は生花」の使い分けがおすすめ
- 交換のタイミングは色褪せ具合で判断
- 長持ちさせるためには、造花も小まめに手入れする
- 古今東西で、死者には花が手向けられていた
- 「枯れない花」によるお供えは、造花以外にもたくさんあり、仏教の中で様式化しているものもある
監修者コメント
監修者
終活・葬送ソーシャルワーカー
吉川美津子
「仏壇やお墓にお供えする花は造花でも良いのか?」という質問をいただくことが多くなりました。足腰が弱くなってお墓参りに行けなくなったり、仏壇にお供えする花を購入することができなくなった高齢者が増えたことによるものでしょうか。「今できる範囲のことで仏様や先祖と向き合いたい」という気持ちを表現するツールとして、造花はアリだと思います。
仏花セットとして販売しているところもありますが、造花を単品で自分でアレンジしても良いでしょう。仏壇なら、季節によって変えても良いと思います。
ただ、仏壇でもお墓でも、色あせは必ず起こります。特にお墓の場合、数か月でボロボロになってしまうということも考えられるでしょう。そうなると単なるゴミになってしまいますから、生花が枯れる以上に、色あせた状態の造花を放置し続けるほうが見栄えも悪くなりますから注意が必要です。