松林山 大圓寺（大円寺｜通称：大黒寺）

松林山大圓寺、通称「大黒寺」は、東京都目黒区下目黒一丁目にあり、JR山手線の目黒駅西口から徒歩わずか3分の距離に位置しています。訪れる人を迎えるのは、江戸時代から目黒不動尊への参詣路として知られる急な坂道「行人坂」。この歴史ある坂道を下ることで、訪問者は都市の喧騒を離れ、静寂に包まれた寺院の世界へと誘われます。特に、寺伝によれば、この寺の創建は寛永元年（1624年）、出羽湯殿山の修験僧大海法印によって大日如来を本尊として開かれたことに始まり、その深い歴史を感じさせる立地は、都心にいながらも時間旅行をしているような感覚を与えます。

国重要文化財としての価値

境内には国重要文化財に指定されている釈迦如来立像が安置されており、この像は鎌倉時代初期に造立された清凉寺式生身の釈迦像で、胎内には五臓六腑が納められているという特異な特徴を持っています。その他にも、寺域内には、明和九年（1772年）の大火の犠牲者を追悼して建立された五百羅漢の石像群があり、これらは東京都指定有形文化財に認定されています。この石像群は、「新東京百景」にも選定され、訪れる人々に圧倒的な存在感を示しています。このように、大圓寺は単なる宗教施設を超え、日本の文化財としての重要な価値を有しています。

「新東京百景」に選定された石仏群の存在

大圓寺は、「新東京百景」に選定された石仏群を有しています。この中でも特に有名なのが、明和の大火の犠牲者を供養するために作られた五百羅漢の石像です。520躯にも及ぶこの石仏群は、細やかな表情やポーズによって、それぞれが独自の物語を語りかけてきます。また、寺の歴史を物語る江戸時代の庚申塔や会津八一の歌碑も残されており、訪れる人々にとっては歴史的な発見の場ともなっています。これらの文化財は、都市の中で静かに時を刻み、見る人々に深い感動を与えます。

目黒川へと続く歴史的な景観

大圓寺から行人坂を下ると、目黒川にかかる橋があります。この橋は、雁歯橋や太鼓橋とも呼ばれ、現在は太鼓橋の名で親しまれています。橋の名前になった「太鼓橋」は、かつて使用された石材が寺の境内に保管されており、太鼓橋の往時の景観は、広重の錦絵「名所江戸百景・目黒太鼓橋より夕日の岡」にも描かれています。この橋とその周辺は、「夕日の岡」として知られ、紅葉や桜の名所としても古くから親しまれています。訪れる人々は、寺院の静寂と自然美の中で、日本の四季を感じ取ることができます。こうした歴史的景観は、大圓寺の周辺環境が持つ独特の魅力をより一層際立たせ、訪問者にとって忘れられない記憶となります。

大黒天の祀りと山手七福神

大圓寺は、徳川家康をモデルにした大黒天を正面本堂に祀っています。この大黒天は、江戸城裏鬼門の守護として、また山手七福神の一つとして、今日でも多くの参詣者を集めています。大黒天は「開運出世大黒天」として崇敬され、多くの人々が訪れることで、その功徳を願います。このように、大圓寺は宗教的な場としての役割だけでなく、地域の文化や歴史に深く根ざした存在として、訪れる人々に愛され続けています。

薬師如来と庚申塔のご利益

本堂前に鎮座する薬師如来は、身体の気になる部位に金箔を貼ることで治癒を促すとされています。この信仰は、参拝者に健康と長寿をもたらすとされ、多くの人々が実践しています。また、境内には3基の庚申塔があり、これらは江戸時代に人々の厄除けや健康を願って建立されました。特に有名なのが、「三猿」をモチーフにした庚申塔で、悪を見ず、聞かず、言わずの教えを伝えています。これらの信仰は、大圓寺が単なる観光地ではなく、人々の生活に密接に関わる精神的な支えであることを物語っています。