散骨には許可がいる?マナーや手順を紹介

青い海に浮かぶ船

散骨に許可は必要?徹底解説

  • 散骨は遺骨を自然にまく供養で、法的規制は少ないが節度が必要
  • 散骨前には遺骨を粉骨する必要があり、自分でも業者でも可能
  • 海洋や樹木葬など散骨方法多様で、業者プランは個別から合同まで選択可
  • 自主散骨は所有地や許可地、影響少ない沖合で行うのが好ましい

散骨とは、その文字の通りに骨をパウダー状にして海などの自然に撒く葬送方法です。

最近では、お墓の管理が負担と思う家族が、墓じまいをして散骨をするという一連の流れが増えてきています。

この記事では、散骨を行うために必要な手続きや実際に散骨を行うまでの流れをまとめています。

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この記事の目次

  1. 散骨とは海や山に遺骨を散布する供養法
  2. まずは遺骨をパウダー状にする(粉骨)
  3. 散骨の方法
  4. 専門業者に依頼して散骨を行う方法
  5. 自分たちで散骨を行う方法
  6. 散骨に関する規制や法律は存在しない
  7. 散骨の許可に必要な書類
  8. 個人で散骨をするときに気をつけること
  9. 監修者コメント

散骨とは海や山に遺骨を散布する供養法

散骨とは、火葬後の遺骨を粉末状にし、海や川や山に散布する供養法のことです。

これまで火葬された遺骨は、埋葬してお墓を建てて供養するのが一般的でした。しかし最近では供養の仕方も多様化しており、散骨は永代供養などと並んで注目を浴びています。

散骨といえば海への散骨(海洋散骨)を連想される人が多いと思われますが、散骨する場所は海だけでなく、山や川でもできなくはありません。しかし、さまざまな確認が必要になってくるため、海へ散骨するケースがほとんどです。

あと取りがいない、お墓の必要性を感じないという人たちが増えているなかで散骨の認知度は広がっています。

さまざまなメディアを見ても、都心部を中心に、容認している人、興味がある人は増えています。ただし、実際の実施率は1%以下だとも言われています。

まずは遺骨をパウダー状にする(粉骨)

散骨をするためにはまずは粉骨をしなければなりません。
粉骨とは遺骨をパウダー状になるまで砕くことです。

火葬された後の白骨のまま散骨をすることは、環境や周辺住民への配慮や、宗教的感情から忌避されるだけでなく、死体遺棄罪に抵触するおそれもあります。
遺骨は必ず粉骨しましょう。

粉骨をするには次のような方法があります。

粉骨に立ち会う

立ち会い粉骨は、粉骨機を所有する業者に遺骨を持参して、家族立ち会いのもと粉骨をしてもらう方法です。

遺骨を砕くという大事な瞬間に立ち会えるだけでなく、粉骨された遺骨が他の人とまぎれる恐れがありません。
費用は30,000円前後でしょう。

粉骨を業者に委託する

粉骨を自分の手ではなく業者に委託する方法です。送骨(遺骨を配送物として送ること)をして、業者が粉骨をして、それをまた送り返してもらう方法です。
費用は10,000円前後でしょう。

自分で粉骨する

自分自身で粉骨することもできます。すり鉢と棒があれば、遺骨は簡単に砕け、パウダー状になります。
これであれば費用はかかりません。ただし、自分自身で遺骨を触れることに抵抗がある人もいるでしょう。

散骨の方法

散骨は、おもに海洋散骨と樹木葬に分けることができるでしょう。
それらを細かく見ていきたいと思います。

海洋散骨

海洋散骨とは、遺骨を海に撒く葬法です。

散骨の中では最もポピュラーな方法だと言えます。散骨された遺骨はそのまま海の水に還っていくために、直接的に第三者に精神的苦痛を与えるということはないといえるでしょう。

しかし、岸の近くの漁業権が存在する海域や、観光客が集う海水浴場の近くなどで散骨をすることで、風評被害が起きてしまうなどのリスクも考えられます。明確な法律やガイドラインがないだけに、とてもデリケートな問題をはらんでいると言えます。

樹木葬

樹木葬とは、樹木を墓碑とする葬法です。樹木葬を「散骨」とするか「埋葬」とするかの線引きは実に曖昧です。

パウダー状の遺骨をそのあたりに撒くのは「散骨」ですが、土の中に埋めると「埋葬」になります。

一見同じような行為なのですが、散骨であれば、散骨を取り締まる法律がないために違法ではありませんが、埋葬であれば、遺体遺棄罪に抵触します。なぜならその山は「墓地」ではないからです。

埋葬が認められているのは「墓地」だけであり、樹木葬がお墓として認められているのは、あくまでもその土地が登記上「墓地」として認められているからです。

樹木葬をお考えの方は、その墓地の管理人に、その土地が「墓地」として認められているのかをきちんと確認しておきましょう。

自分の手(個人)で行う

散骨の専門業者はたくさんありますが、自分の手で散骨することもできます。
ただし、くれぐれも節度を持って執り行うようにしましょう。
個人で散骨を行うのに問題なくできそうなのは、以下の3パターンでしょう。

  • 自身が所有の山(水源も近くになく誰にも迷惑をかけない場所)
  • 業者が散骨場として許可を得ている場所
  • 海の沖合(漁業や観光に支障をきたさない場所)

これら以外の場所だと、何らかの形で第三者に迷惑を与えるリスクがあります。このようなリスクを不安に思われる人は専門業者に依頼するのがよいでしょう。

次に、専門業者に依頼して行われる散骨についてご説明します。

専門業者に依頼して散骨を行う方法

時代のニーズからか、散骨を取り扱う専門業者はどんどん増えています。
専門業者に依頼する場合、どのように散骨が執り行われるかをまとめました。

海洋散骨

海洋散骨では、海の沖合で遺骨を撒きます。
船に乗って沖合に出て、散骨をし、献花や献酒をし、黙祷をするという流れが一般的です。
専門業者に依頼する場合は、主に以下の3つのプランから選ぶことになります。

  • 個別散骨

    1家族が船をチャーターして、沖合に出て、遺骨を撒きます。他の人の船への同乗がないために、気兼ねなく散骨することができるでしょう。
  • 合同散骨

    複数の家蔵が同じ船に乗り合わせて、合同で散骨をします。船をチャーターする頭数が増えるために、個別散骨よりは安く抑えることができます。
  • 委託散骨

    家族が立ち会うことなく、業者に遺骨を預けて、散骨を委託します。日時の指定をすることができず、立ち合いのために乗船する必要もないので、最も安価に散骨を済ますことができます。

樹木葬

樹木葬とは、石碑ではなく樹木を墓碑としたお墓の形ですが、細かく見てみるとさまざまな形態の樹木葬があります。

  • 個別の埋葬で個別の樹木

    遺骨を埋葬した土地に樹木を植樹します。個別に埋葬して植樹するので、他の人との合葬にはなりません。
  • 共同の樹木のまわりに個別に埋葬する

    礼拝の対象となる大樹のまわりに個別のカロートを設けて埋葬する方法です。都営小平霊園ではこれを「樹木墓地」と呼んでいます。
  • 共同の樹木の下に共同で埋葬(合葬)する

    礼拝の対象となる大樹の下に共同で埋葬します。都営小平霊園ではこれを「樹林墓地」と呼んでいます。
  • 里山型

    上の3つと一線を画すのが「里山型」と呼ばれるものです。
    自然の里山全体を墓地としたのがこの里山型です。

    造成工事をして墓地を作り、墓碑を樹木にした一般的な霊園型の樹木葬とは異なります。
    1999年に岩手県一関市の祥雲寺が始めた「樹木葬公園墓地」がその始まりですが、いま現在、この里山型が実現できた唯一の例だと言われています。

平均費用について

散骨の平均費用は、その方法によって異なりますが、参考にして頂ければ幸いです。

▼ 海洋散骨

個別散骨(チャーター船による散骨)20〜40万円
合同散骨(他の家族との乗り合わせ)10〜20万円
委託散骨(業者に散骨を委託する)5〜10万円

▼樹木葬

個別埋葬個別樹木50万円〜80万円
個別埋葬共同樹木20万円〜50万円
共同埋葬共同樹木5〜20万円
里山型50万円(知勝院樹木葬公園墓地)

自分たちで散骨を行う方法

専門業者に依頼せずに自分たちで散骨をすることもできます。

粉骨する

まずは必ず遺骨を細かく砕きましょう。パウダー状になるまで砕くのが望ましいです。

遺骨の形で散骨したものが第三者の目に触れることで、事件性を帯びてしまったり、風評被害を引き起こしかねないからです。
遺骨そのものは力を加えるとすぐに粉々になります。すり鉢と棒があれば自分でもできます。

散骨する

海や川や山などに遺骨を撒きます。「節度を持った」散骨が望まれます。
人がすぐ近くにいる場所、住宅街、または漁業や海水浴などで人が集まる海などは極力避けましょう。

平均費用について

自分たちで散骨をする場合、特別な費用は発生しません。
粉骨にするための道具の費用、散骨場所に出向くための移動費くらいでしょう。

散骨に関する規制や法律は存在しない

散骨に関する規制や法律は、いまのところ存在しないために、散骨そのものは違法には当たりません。

遺骨の取り扱いに関する法律は『墓地埋葬等に関する法律』(以下:墓埋法)が基準となりますが、散骨は墓埋法の想定外の事柄なのです。

しかし、土地への散骨は基本的には行わないというのが、基本的なルールとなっています。

法務省による非公式の見解

散骨の違法性の有無を語る上で必ず目にするのが、法務省による「節度を持って行われる限り違法性はない」という非公式の見解です。

この見解以降、散骨に関する法律やガイドラインは未だに敷かれておらず、白でもなく黒でもない、グレーの状態が続いています。

自治体では条例で決まっている場所もある

国は方針を決めず、むしろ地方自治体にその判断を任せているというのが現状です。
全国的に見ればごく一部ですが、条例やガイドラインを制定しているところもあります。

静岡県の熱海市や伊東市では観光地としてのブランド低下を懸念してガイドラインを制定しました。

また、北海道の長沼市では、実際に住民から苦情が起きたことで、散骨禁止条例が制定されています。

散骨の許可に必要な書類

散骨は法律上禁止された葬送方法ではありませんが、個人で行うのはトラブルの元になりますので避けた方が良いでしょう。
専門業者に散骨を依頼することをオススメします。その場合は、埋火葬許可証のコピーや、同意書の記入などが求められます。

個人で散骨をするときに気をつけること

散骨は、法に抵触するというルール面と、第三者の精神的苦痛を与えないというマナー面の両面での節度や配慮が求められます。

ルール面で気をつけること

「散骨」には法的規制がありませんが、「埋葬」にはあります。

  • 埋葬は遺骨を土中に埋めること。
  • 散骨はパウダー状の遺骨を撒くこと。

遺骨を墓地(登記上「墓地」として認められた土地)以外の場所で埋葬した場合には、死体遺棄罪に抵触しますので、充分に気をつけましょう。また、散骨に関しても近い未来に規定する法律ができることでしょう。

マナー面で気をつけること

マナー面では、埋葬する場所の近隣の人たちへの配慮です。海や川に撒くと、人骨の含まれた水になってしまうということ。

山などであれば、人骨が埋葬されずにそのあたりに撒かれるということです。日本人は大昔から遺骨を強く畏敬する民族です。宗教的心情や衛生観念から他の人の迷惑にならないようにしましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
供養の多様化や、自然回帰を望む想いから、散骨は徐々に増えており、認知度も上がっています。

しかし、法的規制がないなど、実際の現場では未だに混乱が起きている面もあります。
節度ある散骨、信頼のおける業者選びが求められます。

監修者コメント

監修者
終活・葬送ソーシャルワーカー
吉川美津子

日本では亡骸を土中に納めることが長年行われてきた弔い方法ですが、世界中を見渡せば散骨を慣習として行っている地域も多くあります。

例えばインドでは、死者を火葬してガンジス河に流すという弔い方法が古くから行われています。
川に接して作られた火葬場で遺体を火葬した後、そのままガンジス河に流していきます。
川を挟んだ向こう側では、洗濯されていたり、子供達が泳いでいたりと、川を挟んでみられる生と死の光景がみられます。

日本でも近年、海への散骨が話題となり、年間1万人以上の人が海を葬送の場所として選んでいます。

ただし、最近は「海が好きだったから」「海に思い入れがある」等の理由ではなく、「安価だから」「遺骨が邪魔」という理由で選択する人が増えてきているのは残念でなりません。

終活・ライフエンディングの基礎知識を解説