【今すぐ始められる】生前整理で絶対に必要な3つの準備と進め方を紹介
生前整理とは、元気なうちに老後や死後について事前に考え、準備をしておくことです。生前整理で考えるべきことは、お金や相続のこと、医療や介護のこと、葬儀やお墓などの供養のこと、さらには身の回りのモノやデジタル製品(パソコン、スマホ、クラウドサービスなどのさまざまなデータ)の取り扱いについてなど、実に多岐にわたります。
こうしたモノや情報の整理をしていくことで、これまで歩んできた過去を振り返り、いまを見つめ、自分が理想とする未来の形が浮かび上がり、明日から日常ですべきことがはっきりしていく利点もあります。
とはいえ、忙しい毎日を生きる現代人。死のことや未来のことを考えることが良い事とはわかっていながらも、なかなか取り掛かりにくいものです。
この記事では、生前整理のメリットを示しつつ、すべきことや進め方のコツについてご紹介いたします。
ライフドット編集部では、『一般社団法人 生前整理普及協会』の方々にインタビューをさせた頂きました。「生前整理は自分らしく生きるための活動!」のインタビュー記事もご覧ください。
この記事の目次
「生前整理」とは30代・40代からでも取り組みたい終活の1つ
生前整理とは、元気なうちに死後のことを想定して、身辺や財産について整理しておくことです。ちなみに最近では「終活」ということばをよく耳にしますが、同じような意味合いのことばだと思えばよいでしょう。
死後のさまざまな処理をスムーズにしてくれるだけではなく、私たちの人生を振り返り、未来を組み立てるいい機会にもなるのが生前整理。どの年代の方にとっても、自分のためだけでなく、まわりの大切な人たちのために生前整理がおすすめです。
始める時期は早ければ30代・40代から
生前整理は、早ければ30代や40代の人でも始める人がいます。
生前整理と聞くと、私たちはついつい高齢者の方の取り組みのように考えてしまいがちです。しかし、30代や40代という年齢は、家庭を持ち、出産や子育てを通じて、自分だけではない家族や周りの人たちの命について考える機会が多くなってくる年代です。また、自分たちの親の世代は60代や70代を迎え、介護や医療、さらには葬儀や供養についてリアルに考えなければならない時期に差し掛かります。
このような「まわりの人たちの命」をリアルに考える過程こそが、自分自身について振り返り、そしてこれからの未来を改めて考えなおす絶好の時期なのかもしれません。
生前整理をする必要性・メリット
生前整理がなぜ必要なのか。まずはメリットについて考えていきましょう。
自分にとってのメリット
生前整理は、自分自身にとってもさまざまなメリットを与えてくれます。
死後も自分の希望を叶えることができる
自分が亡くなったあとのことは自分自身ではできず、遺された誰かに託さなくてはなりません。生前整理をすることで、まずは自分の希望を整理でき、それを相手に伝え、叶えることができます。「こんな葬儀にしたい」「どこのお墓に入りたい」など、生前整理が自分の想いをことばにして誰かに伝えるきっかけになるでしょう。
残りの人生を前向きに捉えられる
生前整理をすることで残りの人生が前向きになると言われています。ラテン語に「メメント・モリ」という言葉があり、「死を想え」と訳せます。人生の最後をどのように迎えたいかという自分の中での理想を想うことで、そこにたどりつくための残りの人生が前向きになると言われています。
このようなことは古今東西さまざまな人がことばにしています。アップルの創業者・スティーブ・ジョブズも「もし今日が自分の人生最後の日だとしたら、今日やる予定のことを私は本当にやりたいだろうか?」という有名なスピーチを残しています。自己啓発の古典であるスティーブン・R・コヴィーの『7つの習慣』の中でも、人生の最後の姿を描き、それを念頭において今日という1日を始めることの大切さを説いています。
このように、生前整理を行って自身の最後を想定することが、残りの人生をよりよいものにするきっかけとなるのです。
後悔が少なくなる
生前整理をしておくことでさまざまな後悔が少なくなります。生前整理には、医療、介護、葬儀、相続についてだけではなく、日常の生活の身の回りのこと、自分自身の交友関係、さらにはしたいことやしておかなければならないことなど、多方面にわたって考え直すきっかけになります。それらひとつひとつを考え、実行していくことで、後悔が少なくなるでしょう。
残された人にとってのメリット
一方で、生前整理を事前にしておくことで、遺された人たちにもたくさんのメリットがもたらされます。もしも病気になった時、あるいは亡くなった時に、自分のことを世話してくれる人のためにも生前整理は有用なのです。
もしもの時の判断・行動で困ることがなくなる
もしものことがあった時、生前整理で自分自身の希望を残しておくことで、周りの人たちは余計な判断で迷うことがなくなります。たとえば病気になった時にはどの病院にかかればいいのか、万が一亡くなった時にはどの葬儀社に依頼すればよいのか、どこの銀行に口座を持っているのかなど、医療や葬儀や相続の実務での負担が大きく軽減できます。
健康管理や、薬、病院についての情報をすぐに伝えられる
万が一病気にかかってしまった時に、持病、アレルギーや健康上の注意点、普段服用している薬、かかりつけの病院などの情報がすぐに把握できた方が、適切な医療をより早く受けることができるでしょう。また、病名や余命の告知、延命措置など、第三者がなんらかの判断を下さなければならない時に、何かしらの希望を残しておくことで判断に迷いがなくなります。
葬儀や供養を安心して行える
遺された人たちにとっては、亡くなった人の葬儀や供養は慎重にならざるをえません。どのような形をとるべきか、迷ってしまう人もたくさんいます。だからこそ、どのような葬儀を希望しているのか、どのお寺と付き合いがあるのか、どこのお墓への埋葬を希望しているのかなど、事前に希望や情報を残しておけば、葬儀や供養もスムーズに執り行えるだけでなく、心理的な負担も軽減されるでしょう。
財産について調べる手間を省くことができる
自分がどのような財産を持っているのか、財産目録を残しておくことで、遺産分割協議がスムーズに進みますし、無用な相続争いを避けることができます。「隠し財産があるのではないか」「自分の取り分がすくなくなってしまうのではないか」といったような疑心暗鬼から相続争いは生まれます。だからこそ、財産の情報をあらかじめオープンにしておいた方がよいのです。
遺品整理に時間をかけることがなくなる
遺品に対しての希望を残しておくことで、遺された人たちの遺品整理にかける時間も軽減されます。
相続争いになってしまう可能性が低くなる
それでは、いざ生前整理を行おうと思い立った時に、私たちは何から手をつけていけばよいのでしょうか。次章では、生前整理の実践編、まずはじめに必ず行うべき3つのことを解説します。
【これは必ず!】生前整理で行うべき3つのこと
生前整理の内容は多岐にわたりますが、その中でも、「財産目録の作成」「エンディングノートの作成」「デジタル製品の整理」は欠かせません。それぞれ具体的に解説します。
近年では、エンディングノートなどをインターネットで残せるサービスも普及しています。気になる方は「ITを使った新しい終活のカタチ」をご覧ください。
①財産目録を作る
財産目録とは、財産の一覧表のことです。財産には、現金、預貯金、不動産、株券などの積極財産(プラスの財産)だけでなく、借金などの消極財産(マイナスの財産)も含まれます。
財産目録に関する法的な義務はありませんので、書式も自由です。パソコンを用いて自分自身でまとめても構いませんし、インターネット上にあるエクセルやPDFファイルを無料でダウンロードして作成しても構いません。
財産目録では何が整理されるか
財産目録では、主に次に挙げるものを取り上げ、詳細の情報を記載しておきます。
- 不動産(土地)
所在、地番、地目、地積(㎡)、現況・使用状況など - 不動産(建物・マンション)
所在、家屋番号、種類、構造、床面積(㎡)、現況・使用状況など - 現金・預貯金
金融機関名・口座の種別・口座番号・残高など - 投資信託・株式
証券会社の名称、株式の銘柄、種別、数量(口数など)、評価額など - 保険(生命保険、損害保険など)
保険会社の名称、種類、保険証券番号、支払予定額、証書の保管者など - 負債
債権者(返済先)、種別、残額、借入金額、返済予定など
財産目録を作る必要性
どうして財産目録はを作った方がいいのでしょうか。次の3つの点からその必要性に迫ります。これまで積みあげてきた大切な財産だからこそ、無駄なく分割相続したいものです。
- 遺言の内容をじっくり考えることができる
遺言書の作成を考えている人にとっては、生前整理で財産目録を作成しておくことで、自身の財産の全体像を正確に把握できます。遺言の内容についても、時間をかけてじっくりと考えることができます。 - 的確な相続税対策のため
全体像を把握することで、相続税対策を的確に行うことができ、相続人に課せられる税金を抑えることができます。たとえば、元気なうちに生前贈与しておくことで無駄に課税されずに済む、などの対策を講じることができます。(年間110万円までは基礎控除で課税されません) - 家族の手続きの負担の軽減
事前に財産目録を作っておくことで、遺された家族の負担は大きく軽減されます。亡くなった本人であれば、どこにどんな財産があるかあらかじめ把握しています。しかし、遺された家族が1つも残らずすべての財産を把握しようとする大変な労力を要します。また、相続放棄の期限は被相続人が亡くなってから3か月期限ですから、短い時間で財産目録を作成した上で、相続をするかしないかを決めなければなりません。
②エンディングノートを書く(医療・葬儀・お墓の項目は特に)
エンデイングノートとは、人生の最期を迎えるのに備えて、自分自身の希望や想いを残しておくためのノートです。最近では書店でもさまざまなエンディングノートが並んでいますし、インターネット上で無料ダウンロードできるものもあります。
エンディングノートで大切なのは、「書くこと」ことでなく「伝えること」です。どんなにエンディングノートを完璧に完成させても、それを誰かに伝えておくことができなければ意味がないのです。むしろ、きたないメモ書きでも、それを確実に遺された家族に渡せることができるのであれば、十分に役目を果たすことができます。
財産や相続に関することがらももちろんですが、医療や葬儀やお墓についての情報や自身の希望を残しておくと、遺された家族は安心です。
医療について
医療についての情報や想いを書き記しましょう。
- いま現在の医療に関する情報
いま通っているかかりつけの病院、持病、過去の病気、服用している薬があれば書いておきましょう。もしもそれらを書くのが大変であれば、病院の診察券やお薬手帳を同じ場所に保管しておくのでもよいでしょう。 - 告知や延命について
あなたが重篤な病気にかかった時に、家族は病名や余命の告知をするべきかを悩みます。また、もしも意識がない状態になってしまった時に、延命措置を行うかどうかも家族が決めなければならず、非常に難しい判断を求められます。エンディングノートに自分の考えを残しておくことで、家族の負担は軽くなります。 - 臓器提供や献体について
臓器提供のためのドナーカードを持っている場合は、カードの保管場所を書いておきます。また、献体登録しているのであれば、登録している団体や連絡先などを書いておきます。
葬儀について
葬儀については、どんな葬儀にしてほしいのかを書くだけでなく、どこのお寺と付き合いがあるのか、誰に声をかけてほしいのかなど、遺された家族では分からない交友関係についての情報を残しておくことで、葬儀を格段と進めやすくなります。また、故人が希望した葬儀をやりとげることが、遺された家族の満足となり、死別の悲しみを乗り越える1つのステップとなります。
- 葬儀の希望について
葬儀をしてほしいか、してほしくないか、するならどのような葬儀がいいかなどをより具体的に書いておくと安心です。希望の葬儀社や葬儀会場、葬儀の流れや費用について。喪主になってほしい人、遺影にしたい写真、式場内に飾ってほしいもの、流してほしい音楽など、葬儀に希望するものを思いのまま書いておきましょう。 - 宗教や菩提寺について
希望する宗教があればより具体的に情報や想いを書いておきます。もしも菩提寺があれば、名前と宗派と連絡先を書きます。親はお寺と親密に付き合っていても、子は全く知らないというケースは実に多く見られます。 - 参列を希望する人
葬儀に呼んでほしい人、呼んでほしくない人がいればそうした内容も書きます。連絡先のリストがあることで、いざ葬儀が発生した時の家族の負担は格段に軽減されます。
お墓について
すでにお墓がある場合はその情報について、これからお墓を構えなければならない人は想いや希望について書いておきます。
- すでにお墓がある場合
すでに先祖代々のお墓がある場合はその情報を書いておきましょう。また、生前にお寺や霊園の永代供養墓の契約などを済ませている場合は、そうした内容も書いておくことで。遺された人たちが円滑に納骨をできます。 - これからお墓を探さなければならない場合
埋葬すべきお墓がなく、これから探さなければならない人は、お墓の希望について書いておきます。最近では墓石だけでなく、納骨堂、樹木葬、散骨、永代供養などさまざまな埋葬方法があります。また付き合いのあるお寺はいるのか、お墓や供養にかかる費用をあらかじめどこかに準備しているかなども書いておきます。
③デジタル製品を整理する
デジタル製品の生前整理には、主にパソコンやスマートフォンが挙げられます。これらは特に機器の中だけでなく、インターネット上にもさまざまなデータが残されています。デジタル製品の遺品整理はこれからますます数が増え、本人以外がそれを的確に行うとなると困難を極めます。自分が元気なうちにこれらのデータを整理しておくこと、さらにはいざという時に遺された家族の負担が軽減できるよう、事前の準備が望まれます。
生前整理しておくべきデジタル製品
デジタル製品の中で生前整理しておくべきものには次のようなものが挙げられます。
- 電話やメールアドレス、LINEなどの連絡先
- 写真や動画など、趣味に関するもの
- SNSやブログのアカウント
- さまざまなアプリや月額課金サービス
- クレジットカードや電子マネー情報
- お金(ネット銀行、ネット証券、仮想通貨、FXなど)
整理とは具体的に何をすれば良いのか
デジタル製品の整理といっても、具体的にどのようなことをすればよいのか、次の3点にまとめられます。
- アカウントやパスワードの一覧表を作っておく
まずは膨大なデジタル情報を一旦整理しましょう。パソコンやスマホの機器そのもののパスワード、ネット上で利用しているサービスそれぞれのIDやパスワードを記録します。これらのセキュリティ上の危険を伴うため、パスワードを直接書くのではなく、ヒントにとどめておくなどの対策を取るのも有効です。 - 家族に伝えておく
一覧表を作成したならば、その保管場所を家族に伝えておきましょう。これはデジタル製品にかかわらず、あらゆる生前整理は、自分に万が一のことがあった時に家族や遺された人の手を借りなければならないからです。 - 見られたくないデータは削除またはパスワードにてロックする
デジタル情報を整理したとはいえ、中には誰にも見られたくないデータがあるものです。そうしたものはあらかじめ削除しておく、ひとつのフォルダにまとめてパスワードでロックしておくなどの対策を講じます。 - ツールや各社のデジタル生前整理の設定をする
利用しているさまざなツールや、各社のデジタル生前整理の設定をしておきましょう。
たとえばGoogleのサービスを利用している場合、「アカウント無効化管理ツール」というものがあります。一定期間が経過してもログインの形跡がない場合は、アカウントを自動的に削除するように設定できます。また、残っているデータを指定した10人までに送ることもできます。
また、各社SNSも、利用者に万が一のことがあった時の対応を設けています。Twitterでは、権限のある遺産管理人か故人の家族であれば、アカウントを削除できます。Facebookでは「追悼アカウント」という機能があります。利用者の家族や友人によって追悼アカウントの申請ができ、プロフィールの名前の横に「追悼」の文字が入ります。
デジタル製品を整理する必要性
デジタル製品の生前整理は大変困難を極めます。インターネットという無限に広がる空間も、IDやパスワードの1字が違うだけで、その中に入ることもできません。さらにその中にある膨大なデータの中から、自分に必要な情報、相続しなければならない資産、月々の支払いの発生するサービスを探し当てなければなりません。遺された人のために、こまめな整理が求められます。
次の章では、そこまで緊急性はないものの、出来る限りしておきたい2つのこととして、身の回りのモノの整理と、自分史の作成をお勧めします。
生前整理をしたいけどモノが多すぎて手がつかない方は、「気持ちに寄り添い遺品整理・生前整理をお手伝い!」の記事をご覧ください。
【できる限り】生前整理で行いたい2つのこと
生前整理でしなければならないことは膨大にありますが、「しなければならない」という義務感にかられるのではなく、したことによって得られるものもたくさんあります。生前整理がそのまま断捨離につながり、いまの生活をすっきりさせられます。
また、普段振り返ることのなかった過去の思い出に向き合うことも、これから自分はどのように生きていこうかと、一度立ち止まって考えるきっかけにもなるでしょう。必ずしなければならないわけではありませんが、できればしておきたいこととして、【モノの整理】と【自分史】をおすすめします。
モノの整理をする
モノの整理とは、生活空間の中にある身の回りのものを一旦整理することです。生前整理をきっかけに、いるものといらないものを区別し、不要と判断したものは処分してきましょう。
日用品の整理
日常生活の中で、頻繁に使うものと使わないものとがあれば、まずはそれらを仕分けして、いらないものは処分しておきましょう。生前に持ちものを軽くしておくことで、いざというときの遺族の負担を減らすことができます。処分に困るものがあれば、とりあえずリストにまとめておき、遺族に判断してもらいましょう。
思い出の品の整理
思い出の写真や雑貨、誰かからもらったプレゼントなど、捨てるに捨てれないものは案外たくさんあります。しかし、よく考えてみると家にあっても仕方なかったりするものが多いです。思い出の詰まったものたちも、いったん自分の中で必要か不要かを考えて、不要と判断したものは少しずつ減らしていきましょう。
コレクションの整理
絵画、骨董、時計、宝石、書籍、漫画、人形、フィギュアなど人の趣味は実に多岐にわたり、たくさんの物がコレクションされています。こうした大切なものも最終的に処分されるのであれば、まずはその行き先を考えてあげましょう。大切な人にプレゼントするのもよし、どこかの施設に寄贈するのもよし。中には価値あるものも存在するかもしれませんので、買取査定してくれる専門業者に相談するのも選択肢の1つです。
自分史を書く
生前整理をしていくとさまざまなモノに触れますが、そのつど自分自身の過去と向き合うことになります。それを言葉や文章にして残しておくのもよいでしょう。生前整理は、未来の自分のこうなっていたいという理想の形を想定するところから始まることが多いため、過去を振り返り、今を見つめ、そして未来を考えるためにも、これまでの自分の生涯を自分史にまとめるのは、とても有益です。
なにも伝記のような文章に仕上げる必要はありません。何歳の時にどんなことがあったなどの略歴や年表のようなものでも構いません。
上記以外にこんなものも「生前整理」と言える
その他にも次にあげるものも生前整理に含まれます。
- 家系図作り
自分の家系図を作ることで、親戚とのつながりや先祖やルーツをたどることができます。ルーツの確認は、自分自身がいまここに生きていることのアイデンティティを確認することにもつながります。 - 疎遠になっていた人に連絡を取る、会う
かつては親しくしていたのに長らく交流のなかった人に連絡を取ることや会うことも生前整理の一環です。まずは手紙を送り、電話や実際に会いに行くのもよいでしょう。
生前整理ですべきことやした方が良いことについてお分かりいただけたかと思います。しかし、いざ生前整理を始めようとしてもなかなかきっかけがなかったり、ついつい億劫になり思うように進まないものです。次の章では生前整理を上手く進めるコツについて考えてみましょう。
生前整理をうまく進めるコツ
生前整理は、その内容を細かく見てみるとすべきことが実にたくさんあるため、進めていく中で頓挫してしまうという事例もよく耳にします。無理なく、そして効果的に、生前整理うまく進めるためのコツをご紹介します。
①前向きに・ポジティブな気持ちで取り組む
まずは、前向きにポジティブに取り組む方が、整理がうまく進むということを覚えておきましょう。それはつまり、気持ちが乗らないときは無理にしなくても良いということです。「物や心や情報を整理することで、気持ちがすっきりして楽になる」「生前整理をしておくことで家族たちの負担が減る」というような前向きな想いや目的を意識しながら行ってみましょう。
②全部を一気にやろうとしない
すべきことがたくさんあるからといってそれら全てを一気にやろうとしないことです。生前整理には、財産や相続、医療や介護、葬儀やお墓、さらには身の回りの物やデジタル製品の整理などが挙げられます。その中でも、いま特に自分が気になっていること、解決しなければならない課題を優先的に整理していきましょう。
また生前整理を行う時というのはまだまだ本人も元気ですが、5年後、10年後と時間が流れることで状況や想いが変わることもしばしばです。まずは気楽に生前整理に取り組むことで、定期的な生前整理を継続していけるでしょう。
③できないことはまわりの人や専門家に相談をする
自分一人でできないことは周りの人に相談しましょう。家族や親戚、友人でも構いません。場合によっては弁護士や司法書士などの専門家、医療や介護に関わることであれば病院や地域包括支援センター、供養に関わることであればお寺や葬儀社や石材店など、相談先はたくさんあります。自分一人で抱え込むことなく多くの人たちの力を借りながら生前整理を進めていくのがよいでしょう。
④家族を巻き込む
生前整理は家族を巻き込むのが理想です。なぜなら自分が元気なうちはいいのですが、亡くなってしまったあとのことは家族たちに託さなければならないからです。例えば樹木葬を希望していても、実際に樹木葬にするかどうかを決めるのは遺された家族です。どんなに自分ひとりで生前整理をして、エンディングノートに死後の希望をまとめたところで、それを実行する家族がいなければ、せっかくの努力が無駄になってしまいます。
また、家族と一緒に生前整理に取り組むことで、自分の想いを家族に伝えることができ、家族がどのように考えているのかを知ることもできます。自分の思いを伝えるためにも、家族のつながりをより強くするためにも、家族を巻き込んで生前整理に取りかかりましょう。
しかし、生前整理をしていると、自分たちだけでは手に負えないことも現れます。そんな時にはそれぞれの分野の専門家の力を借りながら進めていきます。生前整理をサポートしてくれるサービスにはどのようなものがあるのでしょう。次章で解説いたします。
生前整理の業者・役立つサービスを紹介
生前整理の中でも、「財産の整理」「デジタル遺品の整理」「モノの整理」に役立つサービスや業者をご紹介します。
「財産の整理」をサポートしてほしい場合
財産の整理については、それぞれの専門家に相談してサポートしてもらいましょう。税理士、弁護士、司法書士、不動産鑑定士、ファイナンシャルプランナー(FP)、信託銀行などが挙げられます。
- 税理士
税理士は税金に関する専門家です。相続税の試算や財産目録の作成などの手助けをしてくれます。 - 弁護士
弁護士は法律の専門家です。遺言書や遺産分割協議の作成、家庭裁判所への申し立てなどをしてくれます。相続をめぐって親族とトラブルになった時などに頼りになります。 - 司法書士
司法書士は、専門的な法律の知識に基づき、書類の提出や作成を行う専門家です。相続人や相続財産の調査、遺言書や遺産分割協議書の作成などをしてくれます。 - ファイナンシャルプランナー(FP)
ファイナンシャルプランナーは、お金に関する専門家。資産の有効な使い方やため方について、相続という観点を交えてアドバイスしてもらえるでしょう。気軽な生前整理ではもっとも適した相談相手かもしれません。 - 信託銀行
信託銀行は、家族信託や遺言信託などを通じて、被相続人が亡くなったあとの相続のサポートをしてくれます。
「デジタル製品」をサポートしてほしい場合
パソコンやスマートフォンのようなデジタル製品は、個人のパーソナルな部分が強く、持ち主が亡くなった後にIDやパスワードを探し出すのはきわめて困難です。加えて持ち主が使いやすいようにカスタマイズしていることもあり、他人が全容を掴むのはとても大変です。
デジタル製品をめぐる生前整理はまだまだ始まったばかりで、デジタル情報やデジタル資産を遺品や遺産として扱う社会的な仕組みがまだまだ整備されていないのが現状です。その中でも率先してデジタル製品の生前整理に取り組むサービスや情報発信についてご紹介します。
- デジタルキーパー
デジタルキーパー株式会社はデジタル製品の安全と継承をサポートする会社です。年会費2千円で登録しておくだけで、いざという時に開かなくなったスマホやパソコンのログイン情報を継承者に連絡してくれます。また、有料のメールマガジンを用いて「デジタルの安全な活用」の情報を届けながら、生存確認までしてくれます。
デジタルキーパーのWebサイト - 古田雄介『スマホの中身も「遺品」です』
デジタルと死生のライター古田雄介さんは、デジタル遺品の情報発信の第一人者です。2020年1月に出版された著書『スマホの中身も「遺品」ですーデジタル相続入門』(中公新書クレラ)は、2020年時点におけるデジタル遺品の最も新しい情報が網羅されています。デジタル遺品の厄介な点、現状について、そして今できる遺品整理術、さらには近い将来の展望にまで言及されています。本書のタイトルにあるように、デジタル製品の生前整理の「入門書」として読んでみてはいかがでしょうか。また古田さんはデジタル遺品やデジタル終活について個人的な相談も受け付けています。公式ページの申し込みフォームより相談してみましょう。
古田雄介さんの公式Webサイト
「モノの整理」をサポートしてほしい場合
身の回りのものを整理したい時には、専門業者に相談しましょう。財産の整理は専門家にしか相談できませんし、デジタル製品の相談窓口はまだまだ圧倒的に数が少ないのに対して、モノの整理を請け負ってくれる業者はたくさんあります。古物商として事業を展開している買取業者や、廃品回収業者などのサービスが多く見られます。また、メルカリやヤフオクなどにいらないものを出品するのもよいでしょう。
Life.編集部が実際の業者の方にインタビューを行った記事も存在します。どのような気持ちでお仕事をされているか記載されているので、業者選びの参考に「生前整理サービス」の記事もご覧ください!
実際に生前整理をした人の声
実際に生前整理をした人の声をご紹介します。
後悔を残さないためのエンディングノート(70代夫婦)
親の葬儀の時はとにかく何が何だか分からないままあらゆることが進んでいき、お金の面や葬儀社選びの面で後悔が残りました。そのため私たち夫婦は早い段階で葬儀社のエンディングノートセミナーに参加しました。エンディングノートを活用して生前整理をすることで、後悔を予防するだけでなく、夫婦にとって本当に必要なもの、そして不要なものを再確認することができました。
残された時間はそう長くはないので、自分たちのしたいことのためにも生前整理をしておいて良かったと思ってます。ただ、ノートにすべてを埋めようとしても、あとから考えが変わることもあるので、鉛筆で書き込んですぐに消せるよう工夫しています。遠くに住む子供達にもエンディングノートのことは伝えてあるので、何かあった時にも対応してくれるでしょう。
若いからと言って死はいつやってくるのか分からない(30代男性)
30代の私がなぜ生前整理を始めたのかというと、親の終活がきっかけでした。「これかどの介護施設に入ろうか」「 亡くなったあとはお墓をどのようにしようか」と話し合う中で、自分自身のこれからについても考えるようになったのです。
また、同じ時期に私の友人が不慮の交通事故に遭って亡くなってしまい、遺された家族たちが大変な思いをしているのを横で見ていたというのもあります。若いからと言って死はいつやってくるのか分からない。そのように思い私も少しずつですが生前整理を妻とするようになりました。そんなにこむずかしいものではなく、これからの自分たちをどう生きようか、死を起点に考えるようになったのです。また、銀行口座や電子マネー、診察券や保険証、スマホやパソコンのアカウントなどの情報をひとつのファイルにまとめて保管しています。
まとめ
いかがでしたでしょうか。では、この記事のまとめとして、生前整理で行うことと、上手く進めるコツを箇条書きでまとめます。この記事がきっかけで生前整理をはじめて、少しでも身の回りや残りの人生がよりよいものになれば、嬉しい限りです。
生前整理で行うことリスト
- 財産目録を作る
- エンディングノートを書く
- デジタル製品を整理する
- 身の周りのものを整理しておく
- 自分史を書いて、過去を振り返り、今を見つめ、未来を考える
生前整理を上手く進めるコツ
- 前向きに・ポジティブな気持ちで取り組む
- 全部を一気にやろうとしない
- できないことはまわりの人や専門家に相談する
- 家族を巻き込む
監修者コメント
監修者
終活・葬送ソーシャルワーカー
吉川美津子
「死」に対して「生前」という言い方をしますので、「生前整理」というワードからなんとなくハードルが高く感じられる人もいると思いますが、まずは安全・安心を考えて暮らす、という視点で整理をはじめてみてはいかがでしょうか。例えば物の整理ということなら、高齢者の事故は家の中が圧倒的に多いので、高い位置にあるものを下におろしておく、ということからでも良いと思います。片付けをするこことで重要な書類が見つかることもあるでしょう。まだ先の話になるかもしれませんが、自宅で介護を受ける可能性があるなら、将来ヘルパーが時間内で効率的に動けるような導線を確保することもできます。まずは気軽に身辺整理からはじめてみてはいかがでしょうか。