曹洞宗の葬儀の流れや意味、恥をかかないための参列マナーを解説
ひとくちに仏式葬儀といっても、宗派によって、儀式の流れやお参りの作法が異なることをご存知ですか?
例えば、宗派によって焼香の回数や作法が違う、ということは知っている方も多いのではないでしょうか?
葬儀の儀式や作法、読誦される経典は、宗派により異なります。
これらは宗派の教義に基づいて決められており、遺族や参列者のお参りや焼香の作法も宗派によって違います。
今回は、さまざまな仏教宗派の中から、曹洞宗の葬儀に焦点をあてて見ていきたいと思います。
曹洞宗の教義や宗派の成り立ち、葬儀の流れや意義、式典の特徴をご紹介すると共に、実際に遺族として葬儀を出す際、また、参列する際に失敗しないよう、戒名やお布施の相場、焼香やお参りの作法にいたるまで解説していきたいと思います。
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この記事の目次
曹洞宗とはひたすらに座禅する、お釈迦様直伝の教えを受け継ぐ宗派
曹洞宗は、仏教の中でも、禅宗といわれる宗派の一つです。
禅宗は、座禅を修行の中心とし、悟りを開く(=仏になる)ことを目標とします。
曹洞宗でも「只管打坐(しかんたざ)」というただひたすらに座禅することを基本の修行としますが、悟りを目標に掲げることはしません。
坐禅によって得られる身心のやすらぎこそが、仏の姿と自覚し、その穏やかな心の状態のままで日常を生きることを目指します。
これを「即心是仏(そくしんぜぶつ)」といいます。
曹洞宗の教えは、お釈迦様から脈々と継承されてきた「正伝(しょうでん)の仏法」といわれます。
日本には、鎌倉時代に、道元(どうげん)禅師が伝え、瑩山(けいざん)禅師が日本全国に広めました。
そのため曹洞宗は、お釈迦様をご本尊、道元禅師と瑩山禅師を両祖として仰ぐ一仏両祖(いちぶつりょうそ)のスタイルをとっています。
曹洞宗の有名なお寺
曹洞宗のお寺といえば、福井県の永平寺(えいへいじ)と、神奈川県の総持寺(そうじじ)が有名です。
両寺は、いずれも曹洞宗の大本山で根本道場にあたります。
永平寺は、寛元2年(1244年)に道元禅師の開いたお寺です。
深山幽谷的なこの寺院は、出家参禅の道場であり、現在も修行僧が多数生活しています。
広大な境内には、大小70棟を超える建物があり、中でも回廊で結ばれた七堂伽藍(しちどうがらん)が有名です。
総持寺は、元亨元年(1321年)に瑩山禅師の開いたお寺です。
元々は、石川県にありましたが、明治時代に火災で消失したのをきっかけに神奈川県に移転。
国際的な禅の根本道場として国内外から多くの参拝客が訪れています。
曹洞宗の葬儀の特徴
現在の葬儀の原型は、鎌倉時代にできあがったとされます。
そして、その元となったのが曹洞宗の葬送儀礼だったといわれています。
そんな現代葬儀のモデルタイプともいえる曹洞宗の葬儀の意義や読経内容、作法など、その特徴についてご紹介したいと思います。
曹洞宗の葬儀に対する考え方
曹洞宗の葬儀における主な意義は、故人を仏弟子(=お釈迦様の弟子)にすることにあります。
故人に戒律を授けて仏弟子とし、引導を渡して悟りの世界(=仏の世界)に至らしめます。
その作法は、修行途中で亡くなった僧侶の葬法に則って行われます。
曹洞宗の葬儀での読経内容
曹洞宗の葬儀で読誦されることの多い4つのお経についてご紹介します。
- 『修証義(しゅしょうぎ)』…道元禅師の著した曹洞宗の根本教典である『正法眼臓(しょうぼうげんぞう)』の重要部分を分かりやすく説いたお経です。
- 『舎利礼文(しゃりらいもん)』…四言十八句のわずか72文字の短いお経です。舎利(=お釈迦様の遺骨)に礼拝するお経で、道元禅師の火葬の際に読誦されたことから、曹洞宗の葬儀に用いられます。
- 『大悲心陀羅尼(だいひしんだらに)』…千手千眼観音菩薩の大慈悲を表したお経です。禅宗の各宗派で広く読誦されます。
- 『般若心経(はんにゃしんぎょう)』…『大般若経』という全600巻にもわたる経典をわずか262文字で完結にまとめたお経です。
この世や自分の存在は無常であり「空(くう)」であることを説きます。多くの宗派で読誦され、最もポピュラーなお経といえます。
曹洞宗の葬儀と他の宗派とのちがい
曹洞宗の葬儀は、他宗派よりも「賑やか」「派手」「時間が長い」などといわれることがあります。
「賑やか」といわれる要因は、儀式の中で、引磐(いんきん)、太鼓、鐃祓(にょうはつ)といった鳴り物が用いられるからです。
ちなみに、引磐は、持ち手のついた小さな鐘で、鐃祓(にょうはつ)はシンバルのような道具です。
儀式の節目で3つの鳴り物が掛け合うように鳴らされます。
これは、鼓鈸三通(くはつさんつう)といって、チンドンジャランと音で表現されることもあります。
一般的に、儀式の主となる導師とは別に、鳴り物を担当する僧侶を要するため、僧侶の人数が多くなりがちで「派手」ともいわれます。
さらに、鳴り物の作法に加え、式次が多く、他宗派よりも「儀式時間が長く」かかる傾向にあります。
曹洞宗の葬儀における独自の作法
曹洞宗の、焼香やお参りの作法についてご紹介します。
曹洞宗の焼香の回数とマナー
曹洞宗の焼香回数は2回です。
焼香の作法については以下のとおりです。
- 焼香台の手前で、祭壇正面中央のご本尊、遺影、位牌に向かって一礼。
- 一度目の焼香(右手で抹香をつまみ、額に押しいただいてから、香炉にくべます。)
- 二度目の焼香(右手で抹香をつまみ、額に押しいただかず、静かに香炉にくべます。)
- 数珠を両手にかけて合掌礼拝。
ただし、参列者が多い場合など、葬儀時間の都合により「1回の焼香で」と案内されることもあります。
その場合は、指示に従い速やかに焼香しましょう。
曹洞宗のご本尊と唱える言葉
仏式の葬儀では、祭壇または式場の正面中央に、宗派の本尊軸をかけます。
曹洞宗のご本尊は、釈迦牟尼仏(しゃかむにぶつ)つまりお釈迦様なので、「南無釈迦牟尼仏」と書かれた掛軸をかけます。
合掌礼拝の際などに唱える言葉は「なむしゃかむにぶつ」です。
曹洞宗の数珠
曹洞宗の正式な数珠は、108玉が連なる「看経(かんきん)」とよばれるものです。
数珠の形は、他の禅宗と同じですが、曹洞宗の数珠には金属の輪がつけられています。
購入の際には輪が入っているかどうか注意しましょう。とはいえ、正式な念珠を用いる必要はありません。
一般の方は、各宗派共通の略式念珠をもつことがほとんどです。
曹洞宗の葬儀の一般的な流れについて
曹洞宗の一般的な葬儀の流れについてご紹介します。
(寺院や地域により儀式の順番が変わることもありますのでご注意ください。)
- 導師入場・開式
- 剃髪(ていはつ)…故人の髪の毛を剃り、仏弟子の姿とします。実際に故人の髪を少し剃る場合もありますが、一般的には、剃刀(かみそり)で剃る動作をします。
- 授戒(じゅかい)…生前の罪の懺悔(さんげ)、清めの洒水(しゃすい)を経て、全十六条の戒律が与えられます。
- 血脈(けちみゃく)授与…血脈とは、お釈迦様から、教えを受け継いだ歴代の僧侶の名が記された系譜で、その最後に導師を務める僧侶と故人の名前が記されます。これで、お釈迦様の教えが故人まで伝わったという証になります。
- 読経(どきょう)…お経を唱えて故人を供養します。
- 鼓鈸三通(くはつさんつう)…引磐(いんきん)、太鼓、鐃祓(にょうはつ)を鳴らします。
- 引導法語(いんどうほうご)…故人の生前や悟りの心境を表した導師自作の漢詩を唱え、法炬(たいまつ)とよばれる松明(たいまつ)を模した仏具で空中の円を描き、故人を仏の世界に導きます。
- 弔辞・弔電…地域や寺院により前後します。
- 読経(どきょう)…お経を唱えて故人を供養します。
- 焼香…読経の間に、親族、参列者が焼香に進みます。
- 鼓鈸三通(くはつさんつう)…引磐(いんきん)、太鼓、鐃祓(にょうはつ)を鳴らします。
- 導師退場
- 導師退場後は、最後のお別れや喪主挨拶を経て、火葬場へ出棺になります。
曹洞宗の葬儀に参列する際の香典の準備について
曹洞宗の葬儀における香典袋の選び方や表書きについてご紹介します。
曹洞宗の香典袋の選び方
曹洞宗を含む仏式葬儀の場合は、白無地か蓮の絵柄の袋に、黒白または双銀の結びきりの水引のついた不祝儀袋を選びます。
ただし、京都など一部の地域では、「黄白」の水引を用いることもありますので注意しましょう。
曹洞宗の香典袋の表書き
曹洞宗の葬儀の場合、香典の表書きは「御香典」または「御仏前」が一般的です。
多くの宗派では、葬儀の際には「御霊前」と書き、「御仏前」は四十九日以降の法事に用いますが、曹洞宗では、浄土についての教義がなく、成仏以前という考えがないため「御霊前」は用いません。
また、表書きを書く際は、黒の筆文字でもかまいませんが、薄墨の筆文字が丁寧です。
薄墨は、悲しみの涙で文字がにじんだ様子を表します。
また、外袋の表書きの文字と、中袋の文字は、濃さを統一させるよう気をつけましょう。
曹洞宗の香典袋の包み方
香典袋を包む際は、現金を中袋にいれてから、外袋で包むのが丁寧です。
外袋の折り目は上部が下部にかぶさるようにして水引をつけます。
中袋の表面中央には旧字体の漢数字で金額を書き、裏面に住所や氏名を明記します。
お札は向きをそろえて、人物が裏に向くように入れます。新札は、前もって準備していた印象を与えるため避けるのが一般的です。
ただし、一度折り目をつけてしまえば問題ありません。
逆に、汚れたお札は失礼ですので注意しましょう。
また、持参の際は、弔事用のふくさに包むとよいでしょう。
曹洞宗の葬儀に参列する際に持っていくもの
- 数珠…曹洞宗専用の数珠でも、宗旨宗派不問の略式数珠でも、かまいません。
- 香典…住所氏名を明記した不祝儀袋にいれ、ふくさに包んで持参します。
葬儀の場では持ち物は必要最小限とします。
特に男性の場合、カバンは不要とされていますので、数珠、香典、財布、ハンカチなどは上着の内ポケットなどに納めます。
また、持ち物について、華美なものや光沢のあるものは避けましょう。
曹洞宗の戒名
戒名は、仏弟子としての漢字二文字の名前です。
曹洞宗の場合、曹洞宗の代表経典の中から、故人にふさわしい二文字が授与されます。
戒名の前には「道号」という故人の人柄や願いを表す二文字、戒名の後には「位号」という性別や年齢、地位を表す二文字が付いて、通常は六文字となります。
曹洞宗の一般的な位号は、「信士/信女(しんじ/しんにょ)」ですが、「居士/大姉(こじ/だいし)」などの特別な位号の場合もあります。
また、生前に社会や寺院に対し多大な貢献をした人物には「院号」がつくこともあります。
これらの特別な戒名は、本来、生前の行いによって授与されるものですが、お布施を包んで特別な戒名をいただけることが多いのが実情です。
戒名について
- 〈一般的な戒名〉△△〇〇信士/信女
- 〈特別な戒名〉 △△〇〇居士/大姉
- 〈院号のつく特別な戒名〉 □□院△△〇〇居士/大姉
曹洞宗の葬儀で僧侶に渡すお布施について
「お布施の意味や相場がわかる!基本知識やマナーを紹介」でも解説していますが、本来、お布施は、仏徳を積むための施しであり、僧侶の儀式や読経に対する対価ではありません。
しかし実際には、儀式の執行に対する御礼として捉えられ、お布施の相場も度々話題にあがります。
こちらでは、曹洞宗の葬儀におけるお布施の相場や渡し方についてご紹介したいと思います。
曹洞宗の葬儀のお布施の相場
曹洞宗の葬儀におけるお布施の相場は、30~50万円程度といわれていますが、特別な戒名をいただいたり、導師の他に脇導師(導師に次ぐ位で導師を補佐する僧侶)や役僧(儀式進行の補助をする僧侶)をつけたりした場合には70~100万円程度必要になることもあります。
曹洞宗の葬儀には鳴物を必要とするため、導師一人ではなく、僧侶2~3名で依頼することが多いです。
お布施の内訳
葬儀のお布施の内訳としては、基本「御布施(僧侶の人数分)」と「御膳料・御車料(僧侶の人数分)」です。
なお特別な戒名の場合には「戒名御布施(戒名料)」が必要です。
複数の僧侶に来ていただく場合の各僧侶の相場は、脇導師が導師の1/2程度、役僧が1/3程度といわれています。
また、最近は、葬儀当日に初七日法要まで行うので「初七日御布施」もあわせて渡します。
曹洞宗のお布施の内訳例
- 導師 御布施…30~50万円
- 御膳料・御車料…1~2万円
- 脇導師(役僧)御布施…10~20万円×人数
- 膳料・御車料…1~2万円×人数
- 戒名 御布施…20万円~(位により異なる)
- 初七日 御布施…3~5万円
曹洞宗のお布施の包み方
お布施は、現金を半紙で包むか中袋に入れてから、奉書紙で包むのが丁寧ですが、郵便番号欄なしの無地の白封筒でもかまいません。
お布施の奉書紙には、水引は不要とされていますが、地域により、双銀、白黒などの水引をつけることもあります。
関西では、黄白の水引を用いるのが一般的です。
お金は、香典と違い新札でかまいません。お札の肖像画が表側上部になるよう納めます。
また、奉書紙の折り返し部分は、上側を下側にかぶせるようにします。
お布施の表書きは「御布施」や「戒名料」などの名目を中央上部に書き、その下に「○○家」または「施主氏名」と書きます。
中袋や外包みの裏に、額面と住所・氏名を記載しておくと丁寧です。
額面は「金、〇拾萬圓」というように旧字体の漢数字で書きます。
曹洞宗のお布施の渡し方とタイミング
お布施は、後日、寺院に伺って渡すのが正式ですが、最近は、葬儀開式前に渡すケースがほとんどです。
お布施は手渡しではなく、袱紗に包むか、切手盆に置くなどします。
僧侶に渡す際は「よろしくお願いします。」などと挨拶を一言添えると丁寧です。
まとめ
日頃から僧侶とお付き合いがある方でも、宗派の葬儀の意義や作法について知っている方は少ないのではないでしょうか。
遺族として葬儀をあげることになった場合も、参列者としてお参りに伺う場合も、恥ずかしくない振る舞いができるよう、宗派の作法を知っておくとよいでしょう。
また、儀式の流れや意味を知ることで、なんだかよく分からない葬儀から、意味のある儀式へと感じ方が違ってきます。
曹洞宗の信徒の方はもちろん、急に葬儀に参列することになった方も、ぜひ参考にしてください。
監修者コメント
監修者
終活・葬送ソーシャルワーカー
吉川美津子
曹洞宗は、檀信徒数が多く日本中に散らばっていますが、特に関東から東北にかけて多いことで知られています。鶴見にある大本山総持寺には、石原裕次郎さんのお墓があることでも知られています。仏教体験というと、座禅修行を思い浮かべる人が多いと思いますが、座禅体験をしている寺院の多くは、禅宗系の曹洞宗か臨済宗になります。
曹洞宗の葬儀は、鳴り物が多く、「喝」を入れたりしますので、賑やかなイメージを持つ人もいますが、寺院や仏壇は木目を生かしたシンプルな造りが多いようです。
なお、曹洞宗の戒名の頭には、葬儀の際、「新帰元」「新円寂」「帰真」といった文字が付くことがあります。これは亡くなったばかりの死者を意味し白木の位牌に記されますが、本位牌にするときにはこれらはつけません。
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